ウカスカジーのツアー、最後の2本を飛ばしてしまって、みなさんに極めてご迷惑をかけてしまいました。本当に気を付けていたつもりでしたけど、申し訳ないです、本当に。お客さんからはほぼほぼ、“気にしないでください”“お大事に”というメールばかりいただいて、それが救いでしたけど、でもみんなが楽しみにしていた、何年振りのツアーでしたから。はあー(ため息)。いろいろ失ったものはありますけど、いろんな人の心遣いとか、家族のありがたみとか、ステージを渇望する心とか、得たものもあるんじゃないかと思っています。
野外ライブのシーズンが来ると、毎年こういうことをやっていた、その日々が戻って来たなと思いましたね。久しぶりに会うスタッフや出演者とは、「この2年、どうだった?」という話になりつつ、言葉の端々に喜びがあふれ出ている、いい時間でしたね。しかもステージを作っていたのが、2011年の震災の時にボランティアをやって、その後の現地でのフェスも手掛けてきたスタッフたちだったんですね。僕は現地で、何度もそのチームにお世話になっているので、「これからも生き残って、頑張って続けて行こうな」とか、熱い話にもなりつつ、すごく良かったですね。久しぶりだったから、ライブのほうは100点だったかどうかはわからないですけど。力も入っていたし、サッカーでいう試合感がどうだったのかな?とは思うんですけど、お客さんも含めて「戻って来たな」という印象はあったなと思います。
やっぱり、打ち込みのトラックにラップだけでやっていた頃と比べたら、ギターを持ってからの僕はずいぶん変わりました。自分で作曲もするようになって、最初の頃は、言葉数も音数も詰め込み気味だったなと思うんですけど、『立ち上がるために人は転ぶ』に関しては、引き算する作業のほうが多かったなと思いますね。まだまだ、もっとギターをうまくなりたいとか、ラップがうまくなりたいという思いは、今でももちろんあるんですけど、引いていく美学みたいなものに、今は興味があります。
子供といえば、また一人増えて、3人になりました。上が中学生、下が2歳なんですけど、何を言っても聞かない奴と、深読みばっかりする奴が家にいて(笑)。難しいですよね。
そして、可愛い彼女が、妻になり、3人の母親になると、やっぱり強いなと思ったり。コロナの前までは、毎日遅くまで、外の人と交流する時間が長かったですけど、特にこの2年間は、そのメンバーで多くの時間を家の中で過ごしていたので、影響はあると思います。直接アルバムを作っていた時期ではないですけど、ちょっと目線は変わってきている気はしますね。たぶんこの次に作るアルバムは、もっとそういう感じになるかもしれないです。
この間、配信で、昔の曲から今の曲まで、好きな曲をリクエストしてくれたら譜面を見ながら全部やります、という企画をやったんですよ(2月26日/生配信ライブ「セットリストを一緒に考えよう」)。初期の頃の曲にもけっこうリクエストが来て、一生懸命歌ったんですけど、30代初期とかに作った曲は、肩に力が入っているし、かっこつけてるし、言ってること薄いし、みたいな(笑)。そういうふうに思えるようになったのは、今もちゃんと続けていて、大人になっているからだと思うんですね。続けることで、気が付けた部分がたくさんあると思います。
すごく面白かったです。自分の中では、よくできた曲と、そうでない曲があって、よくできた曲というのは、いいメロディにいい言葉がつけられたとか、自分の好きなコードを使っているとか、いいメッセージがピタッとハマったとか、そういうものが自分の中ではよくできた曲になるんですけど。そういう曲のほうが、好きになってくれるだろうと思うから、呼ばれたイベントとか、曲数が限られている場合は、そういう曲を多くやる傾向にあるんですね。でも、だからって、リスナーの人はそういうことだけじゃないんだなということが、あらためてわかりました。自分の中では、合格点ではあるけれど、アルバムのヘッドラインを飾るような曲ではないものに、思いを入れている人がけっこういて、面白いねーって思いました。「じゃあそういうものもやりますか」って、歌ったりしたんですけど。
でも忘れていたりするから、間違ったりもしましたけど(笑)。初期の頃はギターも弾いていなかったので。そういうことも含めて、面白かったですね。実はその前に、ツアーのセットリストを仮組していたんですけど、それで、だいぶ変えました。これから、要練習という感じです。ギターもそうだし、ラップももう一度、体の中に入れ直さなきゃいけないので、意外と大変なんですよ。
何やったかな? たとえば、「リラックスリラックス」という曲があって、2006年ぐらいに作った曲なんですけど、自分がギターで作曲した初めての曲なんですね。思い入れはあるんですけど、ライブでそんなにやっていなかったから、新鮮でしたね。あとは、「僕らが眠らない理由」という、ほぼ20年ぐらい前の曲なんですけど、それが聴きたいというので、やってみたりしました。あとは何だっけ? 面白くなっちゃって、いっぱいやったんですよね。譜面のプリントアウトも、100曲ぶんぐらいしたんですよ。そうそう、「ナンダカンダ」もやったな。この間、藤井(隆)くんが、「22年前の今日のリリースでした。GAKU-MCさん、浅倉大介さん、ありがとうございます」って、ツイートされていましたね。「もうそんなに経つのか」と思いましたけど。
とにかく、来てくださる方にありがとうの気持ちを込めて、PLEASURE(喜び)をまさにお届けしたいなと思います。
バンドは、ドラム、鍵盤、ベース、僕の4人です。豪華とまでは行きませんけど、シンプルかつ、彩れる最小メンバーで回ります。コロナ前の2019年の〈ハタチ旅〉と同じメンバーなんですけど、あの時はキャンピングカーで日本一周して、とにかく、いい大人がキャンピングカーで、一つのチームになれたと思ったので。でも今回は、あえて…あえてですよ? 「公共交通機関で行きましょう」と言ったら、イエーイ!って盛り上がった(笑)。
電車のありがたみを感じますね(笑)。僕はキャンピングカーで全然いいんですけどね、なかなかガッツが要りますから。でも、あの旅をやったおかげで、昨日がリハーサル初日だったんですけど、久しぶりに4人であって、旅の話もすごくしましたし、あれだけ密な時間を過ごしたメンバーは、ただの仕事のパートナーという感じではないんですよね。それは僕にとっても、財産だなと思います。同じ部活で、同じサッカーチームに所属していた仲間、という感じになりますね。
あれは、コロナの間にすることがなくて、「何かしないとな、そうだ、キャンピングカーの本を書こう」ということで書きましたけど、実際、キャンピングカーって本当にいいんですよ。もっともっと知ってもらいたいです。ただ、アメリカと比べると、日本の状況的には難しいところもあって、その業界の人ともよく話すんですけど、とにかく敷居を下げて、特に若い人が使うようになったら世の中が変わっていくだろうということで、じゃあ僕がその気持ちを書きます!と言って、書かせてもらいました。あんな自由な乗り物、ないですからね。音楽ともマッチするし。
そうかもしれない。そうやって、やりたいことが頭の中から出てくるうちは、また次のアルバムも作れるだろうし。
この2年でいろんな苦労をした人に、ぜひ見に来てほしいですね。予定が飛びまくって、いろんな楽しみがなくなって、余暇がなくて悶々としていた人、それは僕もそうですけど、そういう人がスケジュールに一個予定を入れるだけで、その後の一週間、一か月が本当に変わると思うんですよ。「予定を入れよう」という、そんな曲も今作りたいなと思っているんですけど、たとえば土曜日に友達と遊びに行くなら、金曜日に髪を切って、木曜日までに仕事を片付けて、前の週には子供たちと遊びに行ってご機嫌を取っておくとか(笑)。とてもシンプルで当たり前のことなんですけど、手帳に一個予定を入れるだけで全然変わるので。ぜひあなたの予定にGAKU-MCのライブを入れてほしいです。