いきものがかり、3人での最後のステージを完全収録した映像作品をリリース!水野良樹と吉岡聖恵に本作品の思いを訊いた

インタビュー | 2021.10.22 15:00

いきものがかりの3人での最後のコンサートとなった2021年6月11日の横浜アリーナのステージを完全収録したライブ映像作品が11月3日にリリースされる。メンバーが一人去ることになったのに、温かさと爽やかさの残るステージとなったのは、3人が自分のできることをやりきって素晴らしいステージを展開したから、そして3人の間で変わらない絆が存在するからだろう。3人それぞれの今後の展開がさらに楽しみになる映像作品でもあるのだ。このライブ映像作品について、水野良樹と吉岡聖恵にメール・インタビューを行った。二人の言葉からも横浜アリーナのライブの充実ぶりが伝わってくる。(※本記事はメールインタビューの発言を元にして、構成したものです)
──「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!」、通常のツアーとしては約6年ぶりでした。6本のステージ、どんなツアーになったのか、手応えや感想を教えて下さい。
水野良樹お客さんの前で演奏ができることの、かけがえのなさを感じるツアーになりました。今回のツアーを実現するまでに、自分たちも他のアーティスト同様に何十本ものライブを中止にしてきて、一時は「あのステージからの光景は二度と見られないのかもしれない」と思ったときもあったので。マスク越しとはいえ、お客さんの視線から熱量を感じて、届いているという実感のライブができたのは本当に嬉しかったです。
吉岡聖恵久し振りの有観客ツアーで、目の前にいるお客さんに歌を届けられたことで、歌う、演奏する喜びを感じられて、「歌ってきて良かった!」とあらためて感じる事が出来ました。コロナ禍においてお客さん達は声を出すことは出来ない状況ではあったのですが、みなさんのリアクションや身振りから熱を感じられて、コール&レスポンスなどがいつものように出来なくても、気持ちが感じ取れる、通じあえているという感覚で一本一本ライブができました。ラスト2本の横浜アリーナは、山下穂尊がグループを離れる事が決まってからのライブでしたが、山下が一本一本楽しんでいて、清々しさもありましたね。

「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!」 ダイジェスト・ティザー

──横浜アリーナのステージ、セットリストは「きらきらにひかる」「ええじゃないか」「BAKU」「TSUZUKU」など、新しい曲が入ってくるのと同時に、「夏・コイ」「太陽」「心の花を咲かせよう」「地球」など、3人のいきものがかりのラストにふさわしい曲も入ってきていました。セットリストでこだわったポイントを教えて下さい。
水野もちろん、これからも山下の作った曲は二人で引き継いでいくつもりなのですが、路上ライブ時代からのストーリーもあって「3人でやるからこそ意味をもつ曲」というのも少なからずあって。それが「夏・コイ」であったり、「地球」であったりするのだと思います。3人のいきものがかりを完結させるためにも、最後の3人のライブで、お客様の前でそれらの楽曲を届けておきたいという気持ちは強くありました。気持ちに区切りをつけるようなところもありました。
吉岡久々に「茜色の約束」を演奏出来たのは新鮮でした! 山下穂尊が作詞・作曲の「心の花を咲かせよう」をやれたのも嬉しかった。「TSUZUKU」「SAKURA」「地球」などではまるで自分達のことを歌っているようで、歌いながらグッときてしまっていました。

「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!」ドキュメンタリー・ティザー (-夏・コイ-)

──横浜アリーナ最終日のステージ、3人での最後のステージでもありました。“いつもと変わらない特別なステージ”を3人も観客も思いっきり楽しんでいるという印象を受けました。どんな意識でステージにのぞんだのでしょうか?
水野ステージを成立させなきゃいけないという意識は強かったですね。悪い意味で感情に振り回されて、ぐだぐだになるのは嫌だったので。でも、冷静過ぎてもおかしいですし。そのバランスが難しいなと思いながら、ステージに上がりました。真剣にステージをやっていれば、自然と感情が高ぶる瞬間はくるだろうと。そう信じてやったら、ちゃんとそうなりましたね。嘘のないライブができたと思います。
吉岡山下が去ってしまうという事はとても寂しい事でしたが、彼がライブ中始終楽しそうで! 「もう思い残す事はない!」というぐらいやり切っていたので、私は笑ったり泣いたり、なんだか気持ちが忙しかったです(笑)。ただ、「いきものがかり」の音楽はお客さんに楽しんでもらえてこその歌達だと思うので。いつものように歌を届けたいという意識がありました。
──確かに、コロナ禍であり、制限のあるコンサートでありながら、会場全体に一体感があふれていました。ステージから観た客席で印象に残った景色と、お客さんの反応についての感想を教えて下さい。
吉岡みなさん声が出せない状況の中でも、身振り手振りやリアクションで感情が伝わってくる感じがしました。これはこの特殊な状況だからこそ感じられた事で。目線などで気持ちが通じ合えている感覚があり、嬉しかったですね。
水野コロナ禍のライブと言えば、やはりお客様が声を出せない。そしてマスク越しで視線と拍手のやりとり。普段のライブとは全く違うコミュニケーションですよね。でも、吉岡とも話したんですが、あの無言の視線が、実に豊かにこちらにメッセージを伝えてくれるんですよね。目が合うだけで、こんなに空気感を共有できるもんなんだなと。「聴いてるよ!」というのが伝わってきて、本当に心強かったです。
──オープニング曲の「からくり」が3人の演奏で始まったり、初日のステージで「SAKURA」を3人で演奏したりという場面もありました。3人で演奏する醍醐味、バンドと一体となって演奏する醍醐味、それぞれ違いも含めて教えて下さい。
吉岡3人のスタイルは路上ライブからやってきたもので。アコースティックでの「SAKURA」は3人でしか出せない空気だったり味だったりがありますね。サポートメンバーの皆さんはほんとに頼もしいメンバーなので、オンステージ全員でしか出せない、ダイナミクスであったり華やかさであったり。何年も一緒に演奏してくれているバンドメンバーだからこそのグッとくる瞬間が沢山ありますね。
水野デビューして15年経って、自分たちのステージ上での立ち振る舞いみたいなものも、成長したんだと思います。バンドスタイルでも3人スタイルでも、あるいは小編成のアコースティックスタイルでも。どのスタイルでもスムーズに移行できるようになっているというか。それぞれで心理的な差がなく、やれるようにはなっているんじゃないかなと。CDのいきものがかりを目の前に再現することも、3人の呼吸感をその場に差し出すようなことも、あまり違いなくできているんじゃないでしょうか。
──広がりのある歌と演奏が深く入ってきた「きらきらにひかる」、楽しい楽しい「夏・コイ」、3人の人間性がそのまま温かな音楽のエネルギーに変換されているような「太陽」、集中力あふれる歌と演奏が見事だった「コイスルオトメ」を始めとして、見どころだらけのステージでしたが、個人的にここに注目!というような見どころポイントがあったら教えて下さい。
水野「コイスルオトメ」は、ベストを更新できたんじゃないかな(笑)。言い過ぎかもしれませんが、演っているほうもそんな気持ちがありました。高揚しているんだけれど冷静。そういう矛盾したマインドを、絶妙なバランスで実現できた感じがしました。
吉岡「コイスルオトメ」は、アコースティックバージョンだったりバンドバージョンであったり、今回はバンドで演奏しましたが、どんどん変化・成長していっている感覚がある曲。その中でも今回の「コイスルオトメ」はすごくいいなって、歌っている自分も感じましたし、メンバーやらライブを見てくださったアーティストの方からなんかも「すごく良かった!」と。是非聴いて頂きたいです。
水野吉岡のボーカルのスタンスがかなり変わったんですよね。バンド全体のダイナミズムを声で引っ張るような歌唱で。そこにサポートメンバーの皆さんも反応してくれて、いい緊張感がありましたね。
──3人での最後のステージ。3人の笑顔、楽しそうに歌い演奏する姿がとても印象的でした。しかし正直言って、泣きそうだった瞬間はありますか? あったら、どのタイミング、どういうところにグッと来てしまったのか、教えていただけますか?
水野最後、実際に泣いてましたしね(笑)。わりと楽しい曲をやっているときのほうが、ぐっときたりしましたね。ああ、この時間も終わるんだなぁと。それと最後かな。結成の、それこそ吉岡が加わってくれるさらに前から、このグループの歴史のすべてを一緒に見てきたひとが、いなくなるという瞬間は、なかなか言葉では表現できない気持ちになりましたね。
吉岡「地球」は、リハーサルに入る前から絶対、絶対泣くよなぁ~!って。高校から3人で演奏していますし、今の3人にも当てはまる歌詞だと感じて。もれなく泣いてしまいました(笑)。「TSUZUKU」も別れの曲。だけど希望もあって、自分たちの今に重なったり。「心の花を咲かせよう」で山下がハモってくれた時も、泣き笑いの心境でしたね。どれもいい曲だなって感じながら、ウルウル来るけどもやっぱり外向きに、いい歌を届けたいっていう気持ちで歌っていました。
──アンコールの「TSUZUKU」では歌の世界と実際のいきものがかりの状況が重なって聞こえてくる瞬間もありました。どんな気持ちで歌い、演奏していましたか?
水野アンコール、どんなテンションでやろうかなと(笑)。意外とまだ「TSUZUKU」あたりでは冷静だったかな。
吉岡自分達の姿にも重なって。「うれしい 涙が こぼれおちるまで 歩いてみるから どこかで 笑っていて」という歌詞が好きで、自分の気持ちを重ね合わせている感覚がありましたね。

「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!」ドキュメンタリー・ティザー (-TSUZUKU-)

RELEASE

「いきものがかりのみなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!」

映像作品

「いきものがかりのみなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!」

2021年11月3日(水)SALE
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  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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