インタビュー/兵庫慎司
新しいシングル『So…Start』を10月5日(水)にリリースする前にツアーを回り、リリース後に10月27日(木)東京・新木場Studio Coastでファイナルを迎えるツアーを再度回るROTTENGRAFFITY。今のこのバンドの最強ポイントをすべて詰め込んだかのような超強力なシングルを前に、この曲ができあがる過程や、そのような変則的なツアーを組んだ理由等について、音楽的中枢であるギターのKAZUOMIに訊いた。
曲を作る時に、いかに自分で自分を裏切れるか
──この曲を今回のシングルに選んだのは?
KAZUOMI この曲のデモを上げたのは去年の年末ぐらいなんですけど、今のROTTENGRAFFTYっていうのをいちばん表してる楽曲なんじゃないかな、って楽曲を作ってる段階からずっと思ってて。そのあと歌詞を書いていくうちに、それがどんどんどんどん強くなっていった、っていう感じです。
いろいろ曲を作ってたんですけど、この曲が今の形だな、今の自分たちをいちばん表現し得る楽曲かな、と思って、これを選びました。
──曲を作る精度のようなものが上がっているというか、曲を作っていく時に「あ、そうか、こういうふうにやればいいんだ」というのがここ1~2年でわかってきた、みたいなところはありません?
KAZUOMI ああ、ありますよ。たぶんものづくりをしてる人っていうのは、みんなそれぞれ自分の得意なことというか、十八番というか、そういうのがあると思うんですけど。僕も少なからずそれはありますけど、そこでどうやったら自分で自分を裏切れるか、というのがテーマというか。それがないと自分自身が感動できないから。なんか、そんな感じですね。
あのー……出したい形とか、次はこういう形を出したいっていう理想は、おぼろげながらあったりするけども、全然その理想に近づけないことのほうが多いんですね。そういう中で、今回も何曲も作った中で、『やっぱこの曲やな』ってなったのは、その理想にいちばん近かったからかなあ、という感じですね。
感情がむき出しになる場所、空間──そういうライブをしたい
──ライブにおいても──長年すごい本数のライブを続けておられますけれども、「こういうのが理想」というのはあります?
KAZUOMI あります。ありますねえ。なんか……前もそうやし、今でもずっと思ってるのが、なるべくお客さんの感情が、お客さんの心が、むき出しになるようなライブをしたいというか。そういう場所、空間にしたい。ROTTENGRAFFTYのライブっていうのは、感情をむき出しにできる場所なんだ、っていうような、そういうライブ・スタイルを、ずっと目指してやってるような気がします。
別にそれは、メンバーと「そういうライブを作っていこう」みたいに話し合ったわけではないんですけど。なんか自然とそういうスタイルを目指して行ってるんやろうなあ、というのは感じますね……喜怒哀楽を1回のライブで全部表現できるような。それは僕達が表現するだけじゃなくて、お客さんが表現できる、そういうライブをしたい。それは、昔も今も。
──何人かのバンドマンが同じ話をしていて、なるほどなあと思ったことがあるんですけど……当然、1本1本いいライブをやろうと思って日々やってますよね。で、たまに、「今日はいいライブができた!」っていう時があるんだけど、あとで考えてみても、なんでその日はいいライブができたのかがわからないと。だから、明日以降の経験に活かせないと。
KAZUOMI わかります、すっごいわかります。それは、その時の本人の感情の行き方が入っているので……例えばその日のライブの映像をあとで見たとて、その時の感情の昇りつめ方は映像ではわからへんし、思い出そうとしても自分も忘れてるんですよね。どこで自分がスイッチ入ったのかはわからないから、「あれ?どうやったんやろ?」ってなる時は、よくあります。
あと、よくなかったと思ったのは自分たちだけやった、みたいなのもよくありますね。僕たちは「最悪だ、今日、やってしまった……」って思ってるんだけど、イベントの主催者とかお客さんの反応はものすごくよかったりする時もありますし。その逆で、僕たちは「今日はよかったな!」と手応えあったけど、観る方からしたらそこまででもなかったらしいい、とか。
──そのへんは、これだけ長いことライブ活動を続けてきても、わからない?
KAZUOMI わからないですねえ。本当にわからないです。それは、技術でできる部分も、もちろんあると思いますよ。そこの技術を磨いて、ものすごいライブをするバンドっていうのは、先輩にも同世代にも下の子たちにもいるし。で、俺らROTTENは、毎回毎回そういうライブをしたいと思ってるんですけど、そうならないというか……一回「今日はよかった!」っていう感動を味わってしまうと、次にまた同じ感動を味わっただけでは「今日はよかった!」とは言えなくなるっていうか。それが普通になってしまうんですね、もう。「よかった!」と言うには、その感動を1ミリでも超えるしかないから。それができた時が、バンドが成長できた時なのかな、と思いますけどね。だから毎回、「今日も!」って思いながら挑んでいます。