いわゆる“第三期”で、the pillowsは楽曲もライブ動員も飛躍的に人気が高まっていく。そして結成10周年の1999年に山中さわおは自主レーベル「DELICIOUS LABEL」を主宰し、「DELICIOUS BUMP SHOW!!」を開催し始める。2000年にはアニメ「FLCL(フリクリ)」の挿入歌としてthe pillowsの楽曲が効果的に使用され、人気は海を越えて広がっていく。そして15周年となる2004年にはトリビュート・アルバム『シンクロナイズド・ロッカーズ』が制作された。参加したアーティストは、Mr.Children、ELLEGARDEN、ストレイテナー、BUMP OF CHICKEN、JIRO(GLAY、アーティスト名義はYUTA.TOSHI.CHIHO and JIRO’S SESSION)など超豪華な顔ぶれで、日本のロック・シーンにおけるthe pillowsへのリスペクトの想いが形となった。そして2005年には「DELICIOUS LABEL」が生まれたきっかけでもある盟友バンド、noodlesと共に「DELICIOUS BUMP TOUR IN USA」と題したアメリカ・ツアーを大成功させた。まさに自分たちのやり方を貫いて、BUSTERSやミュージシャンたちから絶大な支持を集めていく。
【第3回】
1999年~「DELICIOUS BUMP SHOW!!」
2006年「new big bang tour~THIS IS HYBRID INNOCENT~Mr.Children & the pillows」
「だから本当にthe pillowsはこういうバンドなんだっていうことを理解して、でも好きになってもらいたい、そのバランスはあったかな」
──ライブを振り返る今回の企画の中でぜひともおききしてみたいのが、さわおさんが主宰者として1999年に「DELICIOUS LABEL」を設立し、イベント「DELICIOUS BUMP SHOW!!」を企画されたことについてです。主宰としてなぜこのレーベルを作ったのか、そして今年20周年を迎え、レーベルに所属するバンドでツアーを回ることも実現しましたが、そのあたりの想いをきかせてください。
山中さわお(vo,g)カッコいいバンドはもちろん当時も居たんだけど、絶対的に今より数が少ないと思うんですよ。今って日本にカッコいいバンド、めちゃめちゃ居るけど、当時はたぶん5〜6バンドしか思い浮かばないくらいで、そのバンドの立ち位置もあるし、一緒にいつもイベントをやれるかっていうとそういう訳でもないし。かと言ってthe pillowsは音楽業界ですごく独自の道を歩いてきたバンドなので、ワンマンでは人気があるのにフェスには呼ばれない、呼ばれてもフェスでは人気がないという(苦笑)。ワンマンにしか来ない客というか、“浅く広く”みたいな人を掴んでなかったというか、“the pillowsしか聴かない”濃密な奴だけが集まってたので(笑)。でも毎回ワンマンという訳にもいかないので、イベントを自分で作るしかなかったというのがまずひとつあります。
そしてとにかくthe pillowsというバンドが認知されていくのに、関わるレコード会社のプロモーターがどうやって売ったらいいかわからないから、the pillowsにはthe pillowsの道があるんだっていうのをわかってもらうのに、相当時間がかかったんですよ。そのときのポップカルチャーで売れているバンドの二番煎じを押してくるのだけど、どうしても僕はうまくできるタイプではなかった、キャラクター的にも音楽的にも。なので、とにかく独自でやるしかない。自分が好きなバンドがまだ日本で認知されてなくても絶対カッコいいなと思うバンドと身を寄せ合って、少しずつテリトリーを広げていくという作戦しかない、と。大きなジャンプ台に乗ってビヨーンって飛びたかったけど無理だなと思ったので、確実に音楽を濃密に好きな人たちをちょっとずつ増やして音楽業界の中のテリトリーを広げて、いつしかthe pillowsというバンドの認知度とかやり方がおかしくないんだと理解してもらうしかないと思ってやっていたのだと思います。で、実際にそうなったと思う。
──「DELICIOUS LABEL」には、今やジャンル的な分類でもない個性的なバンドたちが集まって、7月12日にCLUB CITTA’でツアー・ファイナルを迎えましたけど、ツアーを組めているということは、ちょっとずつ増やしていく方法がひとつの成功としての手応えを感じているということですか。
山中さわおそうだね、“成功or失敗”というよりは“楽しんでる”かな。僕はすごく他人に興味があるタイプで、自分は音楽を作っているけれども、未だに音楽ファンで音楽リスナーなので、自分よりも10コ下でも20コ下でも、好きになる、ファンになるバンドが存在するんです。そのバンドが例えばすごい良いバンドなのに、CDの音が良くなかったら、良い音で聴きたいんですよ。noodlesとの出会いもそうだったんだけど、一緒にスタジオでレコーディングをしてみたいなとか。そうすると自分の好きなCDが世界に1枚増えていく訳じゃないですか。それが好きなんですよね。その感じがレーベルになったということだし、昔だと「4AD」(イギリスのインディ・レーベル)とか「V2レコード」とか、“ここのレーベルっていつもどのバンドも面白いな”っていうのがあったので、そういう信頼のレーベルみたいのを作りたい。ポップカルチャーの人間がオレたちをどう言ってるか知ったこっちゃない。とにかくオレたちと同じ匂いのするオルタナティブな人間が発する音楽を好きというところに凝縮して、そのファンは間違いなく全バンド好きっていうのをやりたかったっていうことかな。
──そういう意味では今のメンバーたちってジャンルが近い訳でもないけど、レーベルを信じて聴いてみると満足できるバンドが揃ってますよね。
山中さわおそうだね。好きになるとしたら全バンド好きになるんじゃないかな、ちゃんと知ったら。
──当時、音楽性だけではなく、さわおさんのキャラクター、人間性というかスター性がどんどん浸透していった時期だと思うんですけど、それを象徴することとして2006年にMr.Childrenの提案で対バン・ツアーを行いました。同期でもあり元・同じ事務所でもあるミスチルが、動員力という意味では世間からすると非常に大きなバンドではありつつ…。
山中さわお(笑)。めちゃめちゃデカいよ。そんな気を遣った言い方しなくて大丈夫ですよ(笑)。だって大スターじゃないか。
──いわゆるスタンディングのライブに関しては、the pillowsと一緒に回りたいんだということを櫻井(和寿)さんがおっしゃっていたことをインタビューで読んで、それがある意味さわおさんが“なりたい自分になってみせる!”と意識していた時期と重なるような気がするんです。Mr.Childrenから、“全国のZeppを回るスタンディングの環境だったらthe pillowsとやりたい”というご指名を受けたときの気持ちと、そのツアーをやってみて実際どうだったかを伺いたいです。
山中さわお最初言われたときは、“あの人たち頭おかしいのかな?”と思ったけどね(笑)。だって全国ドーム2days、4daysとか、誰もチケットが手に入らないくらい人気のある人たちが、なんでオレたちとZeppツアーやる?って。なんのメリットもないことをやるってすごいなというか。あそこまで売れちゃうとほんとに仏のような人になるのかな(笑)。もうビジネスなんか関係ないんだもんね。やりたいことをやるんだもんね。逆に売れてない方が不純で売れてる方が純粋なんじゃねえかって思うくらい自由だなって思ったよ。びっくりした。でもまぁ友達だったからさ。当時もっと今よりも遊んでたから、“友達だけどスター、そして変わってるなぁ”っていうふうに思って。でもやっぱり“やってやるぞ!”とは思った。
そこでオレが思ったのは、もちろんミスチル・ファン、the pillowsを知らないミスチルだけを観に来た人たちに“面白い”と思わせたいし、“好きになってもらいたい”っていうのは当たり前にありました。だけど、“寄せてはダメ”っていうのがあって。じゃあthe pillowsの中のポップなところだけを切り取って、ポップなキャラクターを演じたとて、次のツアーに1回来てくれても“違うじゃん”ということになって、意味がないから。だから本当に“the pillowsというバンドはこういうバンドなんだ”ということを理解してもらって、でも“好きになってもらいたい”っていう、そのバランスは考えた。だからひねくれてわざとハードな曲を集めたりもしないし、とにかく通常営業というか。MCも結構嫌われる覚悟のあることを割と多めに言ったと思う。とにかく“本当のオレでも好きになってもらわないとダメだ”と思ったので、逆に普段よりもちょっと毒は増したかも知れないな。櫻井って“ここぞ”というときは毒のあることも発言してるし、無難じゃない過激な行動も取ったりするんだけど、人間から出るフレーバーがすごい爽やかなので、ちょっとズルいじゃないか、あいつは(笑)。あの笑顔に許されてしまうでしょ。それを好きなファンに、オレがニヤニヤしながら悪いこと言ってもさ(笑)。だけどそれでも好きになってもらいたいと思ったので、めちゃめちゃ気合いは入ってたし、なんかわかんないけどその話をもらった夜は落ち着かなくて、近所をジョギングとか行ったからな(笑)。
[第4回予告]バンドの歴史が積み重ねられるにつれて湧いてきた“音楽的欲求”。コンセプトライブ・シリーズを語る!
[第4回]インタビューを9月中旬公開予定!
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