2011.9.30 up
ハナレグミのライブには親密な空気が漂っている。開演前の会場は、まるで同窓会のようなムードで、あちこちで「久しぶり」というあいさつを交わす声が聞こえた。代々木第二体育館に集まった3000人のお客さん、全員が永積 崇の友達か親戚のように見える。それは、彼の温かい人柄のおかげでもあるし、観客に360°囲まれるという特異なステージのせいかもしれない。会場の真ん中に設置された舞台の上には、「OASIS 360」という文字をかたどったオブジェが置かれており、本人曰く「町内会の秋祭りみたい」に飾られた電飾のおかげで、どこか野外ライブのような趣と、距離の近さを感じさせるステージとなっていた。
ライブの前半は、まさに“町内会の秋祭り”のように賑やかでアットホームな雰囲気で進んだ。「オアシス」から「あいまいにあまい愛のまにまに」まで、お客さんは総立ちで、それぞれが自由に歌い、踊り、くるくると回る、ハッピーなバイブレーションにあふれた空間を作っていた。 バンドメンバーが、ステージの後方に設けられたサロンスペースに移動すると、弾き語りコーナーに突入。観客たちは席に座り、静かに耳を傾けていたが、「Spark」の演奏中に、突然、ドーンという強い縦揺れを感じた。会場はざわめきをみせたが、永積はそのまま演奏を続け、再びバンドセットに戻って歌われた「光と影」の歌い出しで、会場内の空気を一気に引き戻した。<♪だれでもない/どこにもないぜ/僕だけの光と影/闇の向こうの光を見に行こう>というフレーズの揺るぎのない力強さは、この日、同じ会場に集まった観客の全員の心に残っているだろう。続いて、「音タイム」のイントロのフレーズが流れた瞬間に観客は大きな声をあげて、会場中はまた総立ちとなり、「オハナレゲエ」まで大合唱と大歓声が途切れることはなかった。最後にニューアルバムでもラストを飾っている「ちきしょー」を全力で歌い上げ、本編は終了した。
DI:GAのインタビューで「“我を忘れる”というよりも“我を知る”ことに気づいてほしい。ひとりの世界を作りたい」と語っていたように、アンコールは、タフなグルーヴで一体となったお客さんを、ひとりひとりの個人に切り離していく過程であったように思う。「あいのわ」の歌詞を<忘れないでいて>ではなく、<忘れないでいよう>と、直接ひとりひとりに呼びかけるように歌い、ダブルアンコールでの弾き語りによる「あいのこども」では、<かなしい ひかりの うた>で終わるところを、<かなしい ぼくらの うた>と2回続けて歌った。永積 崇の歌声に“癒される”という人は多い。確かに、疲れた心と身体を優しく解きほぐしてくれることに異論はないが、彼の生の歌声には、似たような他人の悲しみに同調し、共感し合うだけではなく、自分自身の悲しみと真正面から向き合うことが必要なんだというメッセージが込められているような気がした。
Report by 永堀アツオ
>>>DI:GA10月号にてハナレグミのインタビューを掲載!
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1.オアシス
2.Crazy Love
3.大安
4.レター
5.あいまいにあまい愛のまにまに
6.PEOPLE GET READY
7.きみはぼくのともだち
8.マドベーゼ
9.ヒライテル
10.Spark
11.光と影
12.音タイム
13.・・・がしかしの女
14.明日天気になれ
15.オハナレゲエ
16.ちきしょー
【アンコール】
17.愛にメロディ
18.あいのわ
【アンコール2】
19.あいのこども