2012.2.17 up
約7年ぶり、一夜限りの再結成!
超満員のリキッドルームの床が揺れるほどの大歓声の中を、岡本洋平と溝田志穂、そしてサポートのTOMOTOMOclub(THE BEACHES)、山下壮(LUNKHEAD)、マシータ(ex.BEAT CRUSADERS)が登場して円陣を組む。1曲目「東京湾」のイントロに乗ってウルフが乱入し、赤ジャージで踊りまくる。「ロックンロール・シティ、トーキョーのみなさん。Hermann H.&The Pacemakersです。帰ってきました。ありがとう!」と岡本が叫ぶ。いきなり凄い。ロックンロールの原点であるダイレクトな肉体的衝動、耳について離れないひねりの効いたキャッチーなリフとリズム、心の琴線に触れるエモーショナルなメロディ、そしてカラッと明るいパーティー感覚。GUESTのストレイテナー、ホリエもMCで「リハを見たけど、一夜限りじゃもったいない」と言っていたが、これだけ長い時を隔てても、ヘルマンのロックンロールはまったくサビついてはいなかった。「こんなバンド、今いないよなぁ」と思わず独り言をつぶやく。ステージでは岡本が「ロックがつまんねーから帰ってきちゃったよ」と吠えている。いいぞ、もっとやれ、なんたって今日は活動休止から約7年ぶりの帰還なのだから。
セットリストは、ひとことで言えばヘルマンの核心を集約したベスト選曲。最初のミニアルバム『HEAVY FITNESS』の1曲目「エアコン・キングダム」から「あまつゆのバラード」まで、ほぼオリジナルメンバー在籍時の代表曲を網羅したメニューに心踊る。4曲目、「Runaway Song」のイントロのスキャットにオーディエンスが反応し、自然発生的に大合唱が湧き上がる。「よく覚えてた。ありがとう」と、照れたように岡本が言った時、笑いながらもちょっぴり泣けた。みんな本当にヘルマンが大好きなんだ。そしてあの頃何度も何度も聴いて体に沁みこんだ曲は、絶対に忘れられるものじゃないんだ。と、感傷にひたるシーンも数々あれど、基本的にはとことんハッピーなロックンロール・パーティータイムがひたすら続く。ウルフのダンスのキレっぷりは少々おとなしくなった気はするが、そのぶんコーラスやMCで声を出しまくり、「オマエ、今までのライブで一番元気だな」と岡本がうれしそうにツッコむ。いつもニコニコ、溝田志穂はハッピーなオーラを振りまきながらややこしいフレーズも軽々と弾きまくる。サポートの3人とも息はぴったりで、さらに「Runaway Song」では岡本の盟友・グローバー義和(SKA SKA CLUB/Jackson vibe)も登場してパーティーを盛り上げる。「言葉の果てに雨が降る」での岡本の気迫溢れる激唱、「あまつゆのバラード」での山下壮の素晴しいソロと溝田志穂の万感の思いの詰まったピアノ、曲間でのウルフの不器用なピック投げ、そして“絶対脱げないスニーカー”のパンチラインが輝く「アクション」での完璧な一体感と、もはやすべての曲が名場面だ。
あっという間にアンコール。「サマーブレーカー」をやった。「無能の行方」をやった。「fruity machine gun」をやった。いよいよ終わりの時は近づいている。岡本がマイクに向かう。 「ヘルマンの音楽を覚えてくれて、愛してくれてありがとう。…ギター、平床政治」 誰も知らなかった予期せぬ事態に、今度は本当にリキッドルーム全体が揺れた。バンド脱退から8年ぶりに同じステージに立った平床と岡本は固い握手をかわし、涙ぐむオーディエンスもいる中で、それでもヘルマンはユーモアを忘れない。 「昨日の夜、説得したんだよ。オレ、偉いだろ?」(岡本) 「みんな喜ぶのは早い。ギター弾けないかもしれないよ?(笑)」(ウルフ) このあたたかくユーモラスな、それでいて心を深く打つ感動を含む空気感、これこそがHermann H.&The Pacemakers!
最後の最後は、岡本と平床が最初に作ったオリジナル曲「One, Two, Three, Four」で締めくくり、夢のようなワン・ナイト・オンリーは終わりを告げる。去り際に「また会う日まで」と岡本は言った。それが現実になるのか夢のままなのか、今は詮索はしないでおこう。素晴しい音楽は色あせない。心に深く刻んだ言葉とメロディは絶対に忘れない。今僕らにできることは、Hermann H.&The Pacemakersが多くの人の心の中でかけがえのない宝物になっていることを再確認した、2月6日のリキッドルームの感動をできるだけ長い間忘れないようにして、あちこちで言いふらして回ることだ。
●Report by 宮本英夫
Hermann H.&The Pacemakers
Vo,G/岡本洋平
WOLF/若井悠樹
Key/溝田志穂
Gt/平床政治(スペシャルゲスト)
サポートメンバー
G/山下壮(LUNKHEAD)
B/ TOMOTOMOclub(THE BEACHES)
Dr/マシータ
ゲスト:グローバー義和
1 東京湾
2 Come On,Ha!!
3 エアコン・キングダム
4 Runaway Song
5 Loser's Parade
6 Beat Mania
7 クラッシュ
8 言葉の果てに雨が降る
9 あまつゆのバラード
10 アクション
11 Rock It Now!
EN -------
1 サマーブレーカー
2 無能の行方
3 fruity machine gun
4 One,Two,Three,Four
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