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清水依与吏(Vo&G) |
back numberの『スーパーツアー2011』、12月17日Shibuya O-EASTでのステージ。最新アルバム『スーパースター』が多くのリスナーに支持されて、好調という勢いはこの日の会場内に漂う期待感や熱気からもはっきりと実感できた。バンドが登場した瞬間から熱烈な歓声の嵐。清水依与吏(Vo&G)、小島和也(B&Cho)、栗原寿(Dr)という3人に加えて、サポートでギターとキーボードが入るという5人でのステージだったのだが、彼らは1曲目の「こぼれ落ちて」からテンションの高い演奏を展開していた。back numberは“センチメンタル・ロックバンド”と称されていて、メロウな要素とハードでアグレッシヴな要素とを兼ね備えているのだが、序盤はロックバンドとしての側面が際立っていた。荒削りではあるのだが、そのゴツゴツした感触も魅力的だ。「半透明人間」、「海岸通り」、「リッツパーティー」などの躍動感あふれるナンバーでは観客が飛び跳ね、ハンドクラップで参加。ボーカルの清水だけでなく、小島も栗原も歌いながら、プレイしている。どんなに勢いのある曲でも核にあるのは歌心だ。5人編成になって、歌の世界観はより立体的になっているという印象を受けた。
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栗原寿(Dr) |
“ひとりひとりがCDを手に取ってくれて、会いたいぞと思ってくれたからこそ、ライヴができるので、ありがたいです。いい1日にしましょう”という清水のMCに続いては、「stay with me」「西藤公園」など、じっくりと聴かせる曲が続く。清水の柔らかな歌声が染みてくる。清水がアコギを持っての「チェックのワンピース」ではバンドの表現力の豊かさを堪能した。穏やかなグルーヴを備えたナンバーなのだが、キレもある。清水の深みのある歌声からは独特の叙情がにじんでいた。「花束」、「幸せ」、「思い出せなくなるその日まで」などのナンバーでは会場内の観客がひたすら聴き惚れるといった感じ。“いい曲”がライヴをやる上での武器であるとするならば、彼らはすでにたくさんの素晴らしい武器を手に入れているということだろう。
“最初からひとりひとりの顔にやられて。肩肘張って、勝負してやるぞと思っていたのが、バカらしくなっちゃうくらい、みんなが受け入れてくれて”と、戸惑いも不安も舞い上がりもすべてさらけ出すような清水の率直なMCも印象的だった。時には前言を撤回したり、口ごもったりしながらも、彼は何度も感謝の言葉を述べていた。例えば、それはこんな言葉。
「言いたいことはひとつで、スーパーありがとうということです」
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小島和也(B&Cho) |
本編最後に演奏されたのは最新アルバム『スーパースター』のタイトル曲とも言うべき「スーパースターになったら」だった。清水も小島もステージの前に出て、観客をあおりながらの熱演。観客も一緒に歌っていて、会場内には熱くて温かな一体感が漂っていた。本編が終わった瞬間からは熱烈なアンコールの声と拍手。
色々な思いがこみあげ過ぎたのか、清水の歌の歌詞が飛ぶ場面が何度かあった。が、この日のステージに限って言うならば、その不完全さもライヴの醍醐味のひとつとなっていた。アンコールの「はなびら」では詰まってしまった歌の続きを観客が歌うという感動的な場面も出現した。バンドと観客とが一緒に作るステージ。「スーパースターになったら」は男らしい人間へと成長して“君”を迎えに行くんだという主人公の切実な思いが描かれた歌とも解釈できるのだが、この“僕”と“君”との関係はメンバーと観客との関係にも当てはまりそうだ。つまりback numberの成長のストーリーをバンドと観客が共有しているということ。とするならば、この物語はまだ始まったばかりだろう。
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●Report by 長谷川誠
●Photo by Yusuke Satou
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M1. こぼれ落ちて
M2. 半透明人間
M3. 海岸通り
M4. リッツパーティー
M5. stay with me
M6. 西藤公園
M7. チェックのワンピース
M8. はじまりはじまり
M9. 花束
M10. 電車の窓から
M11. 幸せ
M12. 思い出せなくなるその日まで
M13. あやしいひかり
M14. スーパースターになったら
--ENCORE--
EN1. はなびら
EN2. そのドレスちょっと待った