ゲストに椎名純平、中川晃教、サンプラザ中野くん、スキマスイッチの常田真太郎を迎えてナオト・インティライミが主催するこのイベントは、タイトルを “ナオトの部屋”と銘打ちこれで3回目の企画だ。
対バンでのイベントではなく、ミュージシャンのライブとしては珍しいスタイルのイベントで、ヴァーチャルなナオトの部屋にゲストを迎えてトークと音楽を楽しむイベントなのだという。
“ん? なんだそりゃ(笑)”…これが見る前の正直な感想。
この日の渋谷O-WEST のステージには機材以上の存在感でソファーやテーブルが置かれ、リビングを模したセットが組まれていた。
客電が落ち、まずはナオトの自己紹介的なVTRが流れる。
その後、暗転したステージに現れた黒い影がソファーにいきなり寝そべる。ライブ開演直後に、ステージ上で出演者が寝るというありえない行為に会場からは笑い声が漏れる中、携帯電話の着信音がステージから流れてきた。
影の持ち主が電話に出るとステージに照明が射し、それがナオトとはっきりわかると笑い声もいっそう大きくなった。
電話はサンプラザ中野くんが遊びに来るという内容だ。
ステージ上では一人コントが展開し、 狙ったところで確実に笑いを取るナオトはなかなか芸達者な男だ。
まずはギターで弾き語りも披露し、予想できないこの後の展開への期待でステージへと自然と引き込んだ。
再び電話がなると今度は椎名純平からだ。「近くに来たから遊びに行く」という電話の直後に椎名が登場する早い展開。ここでは椎名はあくまでナオトの友人であり訪問客なのだ。客席の反応は近所の騒音という扱いなのも面白い。
二人が初対面の時の思い出やナオトが今年の活動テーマにしている“転”について語り合う。
会話の主題が音楽へ流れて、椎名のエレピによる弾き語りデュエットで椎名の曲をでセッションした。曲の思い出なども深く語られ、この日だけの演奏という感じも特別感がある。
椎名が帰ると入れ変わってサングラスにマスクの男が登場。
そのまま鍵盤に向かい演奏しようとする男の正体は中川晃教。以前からナオトとは仲が良いという中川は端正なルックスに反して終始、変なテンポのトークやミュージカルの話、ナオトとの軽妙な掛け合いを見せ、会場の笑いも絶えない。一方で二人で のセッションでは会場をその音楽に集中させ、存分にその音楽性の高さも見せつける。
中川が帰るとダンサブルなトラックが流されナオトがダンスを披露。いきなりダンサーも登場して踊るという唐突な展開に続いてサンプラザ中野くんが登場する。2人の話題は出身の千葉県ローカルな話題から改名の話、旅の話など多岐に渡った。
そしてナオトのギターで“旅人よ”を共演。続いてナオトの“大きなたまねぎの下で”のリクエストにサンプラザ中野くんから“じゃあピアノ弾いてよ”という展開になった。
鍵盤の前でナオトが困っているとスキマスイッチの常田真太郎が登場。
急遽、常田を交えたセッションに突入した。
中野くんは歌い終えると「用事があるから」とさっさと帰っていったのだが終始大きな存在感を示していた中野くん、さすがである。
残された常田とナオトとはサッカーつながりだという。
彼はフロンターレ川崎のユニフォームを着込み、トレードマークのアフロから短髪になっていたりとサプライズを仕込んでいた。
このあとスキマスイッチの曲を常田の鍵盤を伴奏にナオトが歌った。
なかなか息のあったセッションを終え常田がステージを後にすると最後はナオトだけが残り、ギターやピアノで自分の曲を披露し本編が終了。
アンコールはナオトが再び登場し今日の出演者を呼び込む。
本当に用事があった中野くん以外の出演者で“即興ソングをその場で作ろう”ということでその場で作り上げられた即興ソングで終演した。
ピースフルなユルさを最大限に生かす一方で、ダレることの無いように細かい演出も随所にあり、非常にホスピタリティ溢れた濃い3時間だった。
ゲストの持ち曲を中心に組み立てられた構成にナオトが加わって、どういう味を出すのか、どう変わるのかという関心を引き出しつつ、ナオトのトークに、コントに、また、歌だけではなく複数の楽器演奏にと展開していく様は、本人には相当な負担があっただろうが、エンターテイナーとしての幅広さや存在感を存分に楽しめる内容だった。そしてこのシチュエーションをナオトもゲストも観客以上に楽しんでいたように思う。こういった自由な交流から次の何かが生まれるのかもしれない。
そしてただ面白いだけではなく“音楽をもっと身近にして自然に楽しめないか”という提案にも思えて意義深く感じた。
「いつか3daysで俺の生活してる姿を全部見せながらこのイベントをやりたい」と語るナオト、ぜひ実現して欲しい。
そして4月19日、今度はバンドを引き連れて渋谷クラブクアトロを熱くする予定だ。
※ナオトの部屋 「SHIBUYA・INTI RAYMI -4th season-」も決定!!
●REPORT BY 鈴木りゅうた