Release
初のセルフプロデュースによるアルバム『ITALAN』6月27日(水)発売!
今作は限定盤と通常盤(CDのみ)の仕様になっており、限定盤にはCDと安藤自身が書き下ろした三篇の短編小説「至らぬ人々」がパッケージに。
アルバムに収録される7曲は短編小説のサウンドトラックという考え方にもなっています。
そして、ジャケットも本人描き下ろしのイラストとなっており、安藤裕子のこだわりが詰まった作品となっています。
アルバム『ITALAN』
2018年6月27日(水)Release
発売元・販売元:Mastard Records
【限定盤】LNCM-1253/¥3,241+税 [1CD+小冊子(短編小説)]
【通常盤】LNCM-1254/¥2,315+税 [1CD]
※チェーン別特典あり
≪収録内容≫
■短編集「至らぬ人々」
風雨凄凄/娑婆訶/こどものはなし
[独特な感性で言葉を紡ぐ、安藤裕子、初の書き下ろし小説集-。
夢の中で逢瀬を繰り返す男は、結婚間近な後輩社員だった。彼もわたしのことを想ってくれているのだろうか……。(「風雨凄凄(ふううせいせい)」)/突然登校拒否となった高校生をめぐって、周囲の人間たちの勝手な思いがすれ違い……。(「娑婆訶(そわか)」)/“母さん、もう少しだけ、恋をしててもいいですか?”四歳の娘を持つシングルマザーのわたしはある男性に恋心を抱くが……。(「こどものはなし」)
「至らぬ人々」を主題としたアルバム『ITALAN』と連動した3つの短編は、誰もが感じる“生きづらさ”、“やるせなさ”、そして“至らなさ”のありふれた日常の奥にある人々の生を描き出す]
■アルバム『ITALAN』
至らぬ人々/SVAHA/太古の時計/こどものはなし
風雨凄凄/花柄/さよなら
≪セルフライナーノーツ≫
M1 至らぬ人々
「この曲の中の“わたし”は、本当は“あなた”を一心に思いたいんだけど、熱中できないっていうことをよくわかってる人。何かを渇望することができないし、何にも強い関心を持てない。ロマンスに憧れているんですよね。どこか自分が人間に至ってないと思ってるという意味では、この曲は自分の心の根っこに一番近い気がします。アレンジは、以前、『森のくまさん』でご一緒した松本淳一さん。まず始めにアルバムコンセプトである自分の中の創造の根源、風景をお伝えしました。おとぎの森の深くて暗い森の中を魔女が散歩してるというキーワード。でも「至らぬ人々」は作品全体のテーマ曲で、それとはちょっと違いますね。主人公がミュージカルの舞台で月に腰掛けて歌い上げてるんです。熱心になれない人が熱心にその心象を歌ってるっていう感じです。」
M2 SVAHA(スヴァーハー)
「人と心を通わせることができないおじさん教師を主人公にした短編『薩婆訶』が先にありました。以前、電車の中で<腹たつまいぞ、薩婆訶>って熱心に手帳に書いてるおじさんがいて。よっぽど辛いんだろうな、かわいそうだなって思ったんですよね。そのあとに“薩婆訶”の意味を調べて、このお話に繋がったと言えます。薩婆訶の語源であるスヴァーハーは火の神アグニの妻になりたくて彼の妻に化けてその思いを遂げる。曲の方はそちらの色っぽいお話に基づいています。妖しい響の中女の人が火の前で色っぽく踊ってるようなイメージ。楽曲制作としてはとにかくベースで何かやりたかった。ベースを3本くらい重ねて、後はパーカッションとオルガンが入るくらい。とてもシンプル。コメディタッチの短編が終わった後におしゃれめいた曲がかかると、映像的にもカッコいいかなという思いがありましたね。」
M3 太古の時計
「一番可愛いらしい、明るい曲じゃないかな。歌詞は恋のはじまり。恋心って、倫理観とは離れてる部分があるでしょ。この子は、本当は恋人がいるんだろうと思います。でも、他の誰かと出会ってしまってる。好きになってしまって、この人に触りたいなって思ってる。自分のDNAに呼び覚まされるもので、湧き上がるもの。条件がいいから好きになるとかではなく、『なんだろう?この人のことちょっと好きっぽい』というところを歌ってる曲ですね。太古から人間の奥底にある欲望が湧き上がるというイメージで、アウトロはインディアンのお祭りみたいになってます。この曲は唯一自分の家でトラックを全て仕上げた曲。1人で黙々とギターを重ね、キーボードを弾き、はたまたアコギをラインで繋いでボディをパーカッションにしてみたり。松本さんとかとやった曲がアカデミックに仕上がったから対極な事をやりたかったというのもある。
家で自分の曲をかけていると『この悲しい曲を止めて〜』って言う娘も珍しく気に入って、歌ってくれてます(笑)」
M4 こどものはなし
「黄色いレンガの道をゆく童話『オズの魔法使い』や、映画『サスペリア2』が楽曲のモチーフになってたりします。イントロの童謡はまさに連続殺人が起きる前に流れる曲を作りたくて不穏な音階を模索しました。小説の主人公は心が幼いままで現実社会とうまく馴染めない。おとぎ話から出られないんだと思うんです。曲の主人公もラプンツェルみたいな高い塔の中に閉じ込められていて、狭い窓から外を覗いてはどこかに行けるかもって夢見てるような人物。狭い塔の中に住んでるから相手は誰もいない。全ては妄想なんです。だから、後半は精神的に参ってて、<明日会えたら手を取って歩こうね>と存在しない相手に向かって歌ってる。心がなかなかにやられてしまってるところを行き来してる。サビがあまりにもダークすぎるので、可愛い音を後で足したりもしました。そして私のギターがあまりに下手なのでTomi Yoくんにギターを足してもらってるんだけど、そこで生まれた漂うようなツインピークス=双子山ギターというギターフレーズがあるのです。サビの後半の方ね。私はとにかくその音色が大好きです。」
M5 風雨凄凄
「これが一番歌謡曲感があると思ってます。キーボードで好きな和音を積みながら歌を作っていったから、私の中では一番歌ものっぽい。他の自分編曲の曲達はオケを先に作っちゃってるから歌も楽器の一つに過ぎない感じがあって。でも、この曲は歌メロを結構大事にしました。サウンドには家のものを色々と録音しています。コップの音に深いリバーブとディレイをかけたり、クーピーの蓋をガシャガシャしながら刻みを入れたり、化粧品の蓋を叩いたりしてる。
それがリズムトラック的な扱いな訳ですね。この曲は結構Shigekuni君、TOMI君に色々アイデアを貰ってて、アレンジデモを聴いた2人がこの曲はヒップホップだ!とか言い出してドラムをそれっぽく打ち込んでくれたり、他にもハープとか、ローズに何か混ぜたみたいなエレピのフレーズとか、(私はそれを昔のドラマを思い出して田村と呼んでます。)色々素敵な音を足してくれてる。最初ヘボヘボだったチェロもTOMI君が非常にドラマチックに書き換えてくれてるし。
ShigekuniくんとTomi Yoくんの3人で上等に育てたと言えます。曲は小説よりも情熱がある。主人公のOL、ゆきの夢の逢瀬に近い。色恋になだれ込むような情熱がありますね。」
M6 花柄
「松本(淳一)さんとの共作です。深い森を散歩する魔女というテーマを元に、湖面に映り込む自分の顔を覗き込む魔女という仮タイトルのついたトラックを送ってきてくれました。サビやブリッジ部分のメロディは松本さんが元々付けてくれていたもので、私が後からABメロを付けた感じです。サビは、魔女というよりも、スタジオジブリのような少女性を感じました。この少女性を活かしつつ、全体のダークさとも合わせるために、Aメロは不穏な感じで、タイミングもズラしてる。一応、恋の歌詞にはなってるけど、大人になって汚れちゃった人には到達できない、突き通ったものがある。眩しいがゆえに、恋愛も奔放だったりするかもしれないし、何をするかわからないところがあるというか。さらに、歌詞は短編小説『風雨凄凄』とも繋がっていて。<朝知らす鶏 散り散りに恋人引き離すけど>というのは夢の中での密会を表しています。小説の挿入歌でも良いのかもしれません。」
M7 さよなら
「ピアノの小曲。ぽつん感がすごく悲しくて良い曲だと思うんですけど、うまく説明できないな。1曲目『至らぬ人々』を歌ってるのはミュージカルの舞台に立っている女優さんなんですね。その情景の続きと言えます。幕が降りて、誰もいなくなった舞台に置いてあるセットの月に座っている掃除のおじさんかな……。スポットライトを浴びてない、孤独な存在なんですよね。華やいだものを見送ってるだけの立場で、舞台で歌い上げていた主人公を眩しく見つめているのだと思う。」
≪MOVIE≫
■「至らぬ人々」MV(short ver.)