1stアルバム『Blue Jam』をリリースしたデビュー日である9月21日に渋谷公会堂で20th Anniversary Live「Glorious Kitchen」を開催したBONNIE PINK。アンコールでは「この20年間、人よりもいろんなことを経験させてもらえたかなと思いますが、私にも未体験なことがあって。いままでやれてなかったことが1つできました。……どう言えばいいかな?結婚しました!」と、今年の4月に結婚したことを発表し、ファンから大きな祝福を受けた。翌日のニュースは結婚発表が大きく取り上げられたが、この日、会場に足を運んだ人たちは、その前の「いろんな経験」の方に思いを馳せた方が多かったのではないかと思う。
20年前、京都の大学生だった彼女は、就職を蹴って上京し、インディーズ活動もないままアルバムでデビューを果たし、翌年にはスウェーデンに出向いてトーレ・ヨハンソンとセッションを行い、4枚目のシングル「Heaven's Kitchen」で大ブレイク。日本の音楽シーンにスウェディッシュポップブームを巻き起こすほどの着実な人気を得たにもかかわらず、ニューヨークへと移住。チャレンジ精神の強い彼女は、一時はトーレからも離れ、ロス、トロント、ロンドン、マルメ、東京……と様々な土地を旅しながら、世界的なプロデューサーとのコラボレーションを次々と実現していった。そして、デビュー10年目にはトーレの弟子筋であるバーニング・チキンのプロデュースで「A Perfect Sky」を大ヒットさせ、紅白歌合戦へも出場。15周年の際には、彼女の楽曲を題材にしたショートムービーも制作される一方で、近年はスタジオ制作からライブでのパフォーマンスに軸足を移し、3ピースからオーケストラ編成まで、様々なスタイルでのライブ活動を精力的に行い、新たなファン層を拡大してきた。
改めて、記念日のセットリストを振り返ってみると、メドレーも含む23曲中17曲がトーレ、もしくはバーチキによるスウェーデン勢による楽曲で構成されていた。ここには、昨年のツアーで、長らく封印していた1stアルバムの収録曲をすでに取り上げられていたことに加え、「なるべくみんなが覚えてくれてる曲を選んだ」という思いがこめれられているよう。とはいえ、お客さんが総立ちで出迎えたオープニングナンバー「So Wonderful」はバーチキのプロデュースながら、ニューヨークと東京を行き来していた時代の甘い思いが描かれており、1曲単位で、様々な時代や場所を想起させられた。また、歌詞からはそのように当時を思い出したりもするが、直近の12枚目のアルバム『Chasing Hope』の収録曲で、この日のバンドの名前の由来となっている2曲目「Bad Bad Boy」から「Gimme A Beat」までの冒頭の3曲のサウンドは、シティポップ〜ブギーファンク〜ブラックロックといった今日的なアレンジや音色に仕上げられていた(もともとR&B的なコーラスを多用したシンセポップもお得意だったので、時代が追いついたとも言えるのですが)。
晴れやかで伸びのある歌声を響かせた4曲目の「カイト」から、当時、初の全編英語歌詞として話題を集めたアップナンバー11曲目「Forget Me Not」までは、トーレとの歴史を振り返るブロック。<渋谷でDance with me>と歌詞を変えて歌ったヒット曲「Tonight,the Night」、“3年間、赤毛で過ごしていた赤毛時代の曲をまとめた”という紹介のあとに歌ったメドレー、7枚目のシングルで歌謡曲風の情念が渦巻くロックバラード「金魚」と、2010年代から1990年代へと時代を遡っていく。激しいドラミングで幕を開けた「Heaven's Kitchen」では観客がみな手を高々と掲げ、暗い歌詞に反してサウンドは明るくポップな「Forget Me Not」では、サビに合わせて全員がジャンプを繰り返した。ここで「中学生の頃からずっと聞いていて、メジャーデビュー前は、勝手にボニーさんの曲をリミックスしたり、マッシュアップしたりして動画サイトにあげていた」というtofubeatsが登場し、DJタイムに突入。ボニーとバンドメンバーがステージを降りたあと、おなじみの曲をどんどん繋いで会場を盛り上げ、この日は歌わなかった名曲「Last Kiss」(JUJUもカバー!)を経て、「衣替え」のイントロが鳴った瞬間に、衣替えしたボニーが再登壇。90年生まれの若きトラックメイカーとの生コラボが実現し、続く「Thinking of You」では1曲のみ、DJとバンドが融合。ファンクナンバー「You Got Me Good」ではステージ上に電飾プレートが吊るされ、大合唱となった「A Perfect Sky」ではスウェーデンカラーである黄色と水色の巨大風船が会場を舞った。ファンに向けて直接心に届けるように歌ったカントリーポップ「Anything For You」、「最後の曲は私を産んでくれた父と母に捧げたいと思います」と語ったエッジーなロックナンバー「Surprise!」で本編は終了。フェミニンで明るいポップソングも歌うし、歌謡曲やブラックミュージックの素養もあるが、本質的にはやはり、ロックのダイナミズムを体現するシンガーなのだと再確認させられるライブとなっていた。
また、彼女は「お客さんを見ながら、一緒に年を重ねて、一緒の時代を共有してるって、すごくいいなって思いました。これからも一緒に年を重ねていくんだから、もうおしまいだとか、疲れたとか、自分が腐ってしまったらそこで終わりになっちゃうけど、みんなで高め合えていけば、まだいける、まだまだこの先もつづていく。そんな気分になりました。まだ終わってる場合じゃない。BONNIE PINKはこれからも続いていくので、この先、10年、20年と応援してもらえたら嬉しいと思います」と語り、大きな拍手を浴びた。そして、アンコールでは、「苦しいとき、辛いときに、まだまだ大逆転のときはくるさと信じていれば、きっと強く楽しくやっていける」という人生観を込めた新曲「Spin Big」を初披露した。オルガンをフィーチャーした力強いロックンロールナンバーで新たな一歩を指し示した。
リスクを恐れずに変化を求め続けた彼女の道のり。それは、きっと20年前の彼女自身も想像してなかったはずだ。落ち込んだときもあったし、ハッピーなときもあった。だけど、いつだって“いま”が最高だなと感じる。そんな刹那な想いと歴史の重みがちゃんと手を結んでるからこそ、笑顔で言える「Spin Big」。その言葉は、彼女の未来を映してキラキラと光輝いている。いまはまず、「来年にはアルバムを出す」という約束を信じ、4年ぶりとなりそうなニューアルバムの到着を待ちたい。
SET LIST
※赤文字以外はスウェーデンのプロデューサーとの作品です。
INFORMATION
2015年12月18日(金) | Zepp Tokyo | 18:15 開場 / 19:00 開演 | 指定席 ¥6,000(税込) |
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2015年12月19日(土) | Zepp Tokyo | 16:45 開場 / 17:30 開演 | 指定席 ¥6,000(税込) |
GET TICKET先行抽選受付 抽選エントリー期間:受付中〜10月8日(木)23:00 |
■3年ぶりの新曲「Spin Big」好評配信中!
http://www.bonniepink.jp/news/?id=448
■20周年記念、本人書き下ろしLINEスタンプ「BONNIE PIG」が登場!
http://www.bonniepink.jp/news/?id=450
DISK GARAGE.com BONNIE PINK アーティストページ
BONNIE PINK オフィシャルサイト
BONNIE PINK(2015.9月 Live Report)