the pillowsのフロントマン、山中さわおが、3枚目のソロ・アルバム『破壊的イノベーション』をリリースした。その前に初めてのソロ・シングル「Answer」がリリースされたこと、さらには過去2枚のソロ作はすべて英語詞もしくはインストゥルメンタルだったが今回の新作には初めて日本語詞の曲が収められていることなど、外面的な形の部分ですでにこれまでのソロ作との違いがうかがえるが、山中自身のこの新作に向かう気持ちはこれまでとは明確に違うものだという。
「1stと2ndはピロウズの活動と並行してリリースしたので、ピロウズとは差別化をはかりたいという考えがありました。特に、僕は曲をたくさん書くタイプなので、できた楽曲に対して発表することが追いつかないということがあるんですけど、それはちょっともったいないなという気もしていたので、無作為に作っていった曲の中で、僕が個人的に好きなオルタナティブ寄りの楽曲をソロで発表していく、と。しかもそれはソングライターというよりは、ギタリストの面を楽しみたいということもあるし、バンドのメンバー以外のミュージシャンとのセッションを楽しみたいという気持ちもあったんです。だから、これまでの2枚はピロウズとは明らかに違うベクトルで楽しんでいたと思います。でも、今回はピロウズが活動休止中なので、ピロウズのニュー・アルバムを出すようなテンションで作りました。もちろん、メンバーが違うので、ピロウズでやったのとはゴールは違っているとは思うんですけど。それにしても、僕の曲作りの部分や出来上がる作品に対してのテンションは1st、2ndとはまったく違ったと思います。というか、今回に関してはピロウズとまったく同じものを作るということが目的だったんです」
これまでは明確にバンドとソロを分けていた彼が、言わば正反対の発想でソロ・アルバム作りに向かったその理由は、もちろんピロウズにある。
「ピロウズという集団が音楽を作る上において、ちょっと疲労してきて、ある種の飽和状態のような状況だったので、“これは良くないな”と思って、いったん活動を休止しました。そのピロウズを活性化するのに、いままでやったことのない、既存の有り様を破壊する方法って何だろう?と考えたときに、ソロでピロウズとまったく同じものを作る、しかも禁じ手だったツアーもやるという、僕の中でピロウズとまったく同じ行動をとるということかなって。僕は、ピロウズのメンバーと飲みに行ったりしないし、彼らに『ソロアルバムができたから聴いて』とCDを渡すこともないですけど、それでもいつの日かこのアルバムを聴くと思うんです。そのときに、彼らもいろいろ思うと思うんですよ。“自分ならこうするな”とか“もっといいものができるぞ”とか。僕の曲に対しての反応というか、こういう曲にはこういうプレイをするということについてはやはりものすごく上手な二人ですから。当たり前ですけど(笑)…。で、そこから音楽的情熱に何か火がつくと僕は想像していて、それが次のピロウズにいい影響をもたらすんじゃないかなと思ったんですよね」
つまり、山中の創作活動にあってはやはりピロウズがメインであり、ソロはそのカウンター・パートであるという位置関係はこれまでと変わらないのだが、今回はそのカウンターがかなりの荒療治的な手法になったということなのかもしれない。
もっとも、そうした山中作品のなかでの位置づけ的なこととは別に、個々の楽曲で描かれている内容に注目すると、彼一流のシニカルな文学性を感じさせる歌詞のなかに切実な真情が垣間見えて、やはり興味深い。例えば「All memories」という曲で♪消えた炎が残した煙はどこへ昇って行くのだろう/僕は知りたいんだ♪と歌うとき、彼もまた44歳という現実の年齢を生きる一人の男であることにあらためて思い当たる。
「それは自分のこととしてもあるし、あの曲を書いた時期にはピロウズはもう駄目なのかなということも頭を過っていたし。それに、そういう自分に直接関係したことだけじゃなくて…。僕は歌謡曲って小学校の頃から大嫌いなんですよ。ホントに子供の頃から、一度も好きになったことがないんです。こういう音楽を作る人たちって何だろう?と、10歳くらいからずっと思っていたんですよね。でも、もしかしたらその作者はセンスがないだけで、一生懸命作ったのかなとか。つまり、音楽全体に対する愛情が、年齢のせいか(笑)うっすらとあって、だから嫌いな歌謡曲でさえ、聴かれなくなってしまう音楽があるということが寂しいというか」
ただ、そうした現実を受け止めながら、しかしその現実と安易に折り合うことを潔しとしないからこそ彼は彼であり続けているということは、他でもない彼自身がいちばんよくわかっている。
「僕としては、いろんなものを受け入れる準備はあるんです。でも情熱がないことやサボるということは絶対に許せないというか、理解ができない。仕事で音楽をやるようになったら、ロック・ミュージシャンは終わりだと思うので」
というわけで、彼が最もロック・ミュージシャンらしくある場、ライブ・ツアーへと、彼はまた出かけていくわけだが、今回はピロウズのツアーではない。「不安でいっぱいです」と、山中は率直に語る。
「ピロウズは23年間やってきたバンドなので、ライブに関してはお互いが自分の体のように動いてたんですよね。それが急に、重い鎧を着てやることになったような状況というか。今回のメンバーも、もちろん個々は技術があるんですよ。でも、グルーヴが合うということについては、何が正解という話ではないですが、やはり23年やったバンドと数ヶ月セッションをやっただけのバンドとでは比べようがない。だから、アタマのクアトロとファイナルのO-EASTとでは相当違うと思いますよ。ピロウズでもツアーのアタマと最後では違ってくるんですけど、それよりももっとはっきりと違いが出てくると思います。要は、新人バンドということなんですよ、初めてのツアーなので。だから、一生懸命がんばります、としか言いようがないんですよね(笑)」
それでも、新人のようなひたむきさはむしろ山中には似つかわしいとも言える。その情熱が真っすぐにオーディエンスに差し向けられる、彼のロック・ミュージックの魅力をひと際鮮やかに体感できるライブになるはずだ。
2013年4月7日(日) | 渋谷 CLUB QUATTRO | 17:00 開場 / 18:00 開演 | 立見:4,200円 (税込) | |
---|---|---|---|---|
2013年6月2日(日) | Shibuya O-EAST | 17:00 開場 / 18:00 開演 | 立見:4,200円 (税込) |
受付期間:受付中~ 5/26(日) 23:00 ※規定枚数になり次第終了いたします |
3rd Album「破壊的イノベーション」
(デリシャスレーベル)
●NOW ON SALE
New Single「Answer」
(デリシャスレーベル)
●NOW ON SALE
山中さわおオフィシャルサイト
山中さわおのブランド『RED BAT』通販サイト
山中さわお DISK GARAGE.com アーティストページ
<PR>