DI:GAに遺してくださったそんな宝物のような言葉を、取材をして下さったライターさんによる新たな寄稿と共にお届けしています。
最終回となる今回は、2013年6月号、ALBUM「Banding Together in Dreams」とそのツアーについて語ったインタビュー。大名曲「Rock’n Roll Band」の制作秘話、この曲を作って気づいたご自身の変化など、興味深いエピソードが並びます。
奇しくもオリジナルではラストアルバムとなってしまった本作ですが、この最新作が、最高傑作との呼び声も高い名盤です。その魂が刻まれた音楽を、大切に聴き継がせて頂きたいと思います。
【黒沢健一DI:GA掲載アーカイブ~Banding Together~】、ご愛読ありがとうございました。
-ディスクガレージ DI:GA編集部-
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interview/兼田達矢
この記事の最後に紹介されている「LIVE TOUR 2013 “Banding Together”」のファイナルを赤坂BLITZで見た。
ご覧になった方はご承知の通り、そのステージはアルバム『Banding Together in Dreams』からの曲だけでなく、事前にwebで募ったリクエストにも応える形で黒沢のレパートリーのなかからかなりマニアックな選曲のナンバーもピックアップされていて、彼の音楽のその時点での最新版とコアな部分が並列に演奏されることであらためての彼の音楽の個性を確認できる内容だった。
その個性とは、ひと言で言えば、やはりポップということになるのだろうが、そのベースにはつねに過剰なほどのパッションが溢れていて、だからそのポップの形はかなり入り組んだものになったりもする。ところが、アルバム『Banding Together in Dreams』の白眉とも言うべき1曲で、そのライブでもアンコールで披露された「Rock’n Roll Band」という曲は、記事にもある通り「普段しゃべってるような感じの曲」で、気負いのないそのシンプルな魅力が彼の次なるポップの有り様を暗示しているように感じた。そして、4年ぶりのバンド編成でのツアーのファイナルだから、“バンドで盛り上がろうぜ!”みたいな感じのステージを予想していたが、実際にはそうした盛り上がりはもちろん感じさせつつも、ここの楽曲の魅力をしっかりと押し出すような演奏だったことがとても印象的だった。
この年の暮れにグローブ座で行われたライブ“Live 2013 ~Rock’n Roll Band without Electricity~”は、そのツアーの番外編というか発展形のようなステージで、いわゆるアンプラグド・スタイルによる演奏が楽曲の骨格をオリジナル・バージョン以上にわかりやすく表現していて、だからそれぞれの楽曲の魅力がいっそうクリアに感じられたのがとても印象に残った。
いまはもう想像するしかないわけだが、黒沢健一の次の作品では、あるいは黒沢健一の次のツアーでは、音楽はよりシンプルに、だからこそ穏やかに、その魅力を感じさせてくれるものになったのではないか。彼が、いろんな音楽を聴きながらそうしていたように、僕は彼の音楽を聴きながら、彼の次なるポップの有り様のなかではその曲がどんなふうに展開されるのか僕なりの想像をふくらませたい。彼の音楽を繰り返し聴くこと、そこからイメージをさらに広げることを通して、変わらず彼の存在をこれからもずっと感じ続けたいと思っている。ライター・兼田達矢