黒沢健一 DI:GA掲載アーカイブ ~Banding Together~ 第7回

スペシャル | 2017.03.01 12:00

黒沢健一

ちょっぴりシャイで、いつもあたたかな柔らかい笑顔で、時に少年のように、そして真摯に、たゆまぬ音楽への愛情を言葉にしてくださった黒沢さん。
DI:GAに遺してくださったそんな宝物のような言葉を、取材をして下さったライターさんによる新たな寄稿と共にお届けしています。

-ディスクガレージ DI:GA編集部-

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黒沢健一 DI:GA 205号(2012年11月号) DI:GA 205号 2012年11月号 インタビュー


interview/兼田達矢

記事のなかにある「“楽器も持ってないしお金もないけど、とにかくこの曲を演奏したいんだ”というフィーリング」って、とても重要。特に黒沢健一の音楽においては、“とにかくこの曲を演奏したいんだ”だけじゃなく、“とにかくこういうサウンドを鳴らしたいんだ”とか“とにかくこういうふうに歌いたいんだ”といった「とにかく」こそが、その根本的なエネルギーになっていると思うし、その一途さが音楽全体の純度の高さを担保していると感じる。

ただし、実際には日々の作業のなかで目の前の現実に負けそうになったこともあっただろうと想像する。それは、彼に限ったことではないし、あるいは「仕事とはそういうもの」という言い方もできると思う。それでも、彼はかなり音楽の神様に愛されていたようで、自分の基本みたいなところに立ち返る契機をしばしば与えられていた。例えばこの記事の取材の折には、2007年末に行ったライブについて次のように語っている。

「“LIVE without electricity”というライブを渋谷DUOでやったときに、ギターとピアノだけで自分が書いた曲を2時間ライブで演奏するっていうのがすごく大きな経験になったんです。それは“音楽ってどこから生まれるのか?”みたいな根源的な話にもなるんですが、アコースティックギターとピアノと歌だけで、電気がなくてもここに音楽があるじゃんっていう。そのなかで、楽しめる時間をみんなと共有しようよっていう、そこがベーシックな気持ちとしてあって、その上で毎年演し物は変わるんだけれども、音楽を通して楽しい時間を共有できればいいなということだけですよね」

そのライブで得た感覚が年末恒例となったグローブ座公演につながっているという話なのだが、そのグローブ座公演を続けるなかでも、期せずして「高校生の頃に戻ったような感覚」を得て、また彼のなかの「とにかく」的エネルギーは新鮮さを取り戻すことになったと思われる。
ところで、グローブ座公演が恒例となるのに伴い、毎年11月半ば頃にインタビューし、その際に「新作はまだですか?」とせっつくのも恒例化しつつあったが、その質問はいつも「どうでしょうね」という言葉と穏やかな笑いにいなされて終わった。この取材でも同じような結果だったと記憶しているが、この年のグローブ座公演では翌年にニュー・アルバムをリリースすることが宣言され、そこに収められる予定の楽曲が何曲か披露されたのは周知の通りである。

ライター・兼田達矢

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