MAYDAY 2018 LIFE TOUR in TOKYO
2018年5月20日(日) 日本武道館
スペシャルゲスト:GLAY
それはまるで、人の人生の移ろう様、奥行きを深く描いた壮大な映画でも観終わったかのような感動と充実感だった。とにかくドラマチックでスケール感たっぷり。なのに、Lady GagaやBruno Marsを手掛けたチームが総合演出を担当したステージは魅せどころ、聴きどころ、歌いどころ満載。幹はものすごくコンセプチュアルでありながらも、人々の琴線に触れ感動を与えていくとことんヒューマンなライブに、Maydayが築き上げたエンターテインメントショーの真髄を観た。
これが、アジアのスーパーバンドの実力だ。
まず、なによりも圧倒的だったのは、今回の来日公演が、Maydayが最新オリジナルアルバム『自伝』を掲げて2017年3月から開催している10度目の大規模なワールドツアー<人生有限公司>(原題)の一環だったことだ。本ツアーは“人生は「有限」。しかし、友情や家族愛など、人生を通して描かれる自伝には「無限」の可能性がある”というアルバムのテーマを、ライブの間に挿入する映像を使って1つの“自伝”物語として描いていったコンセプチュアルなライブショーだった。普段は大きなスタジアムで開催しているこのツアーを、武道館サイズで観られるということで当日は日本はもちろん、アジア各国から観客が会場にかけつけ、チケットはソールドアウト。
5月20日、日本武道館。ワールドツアーのなか42カ所目、87公演目となった<MAYDAY 2018 LIFE TOUR>東京公演2日目。Maydayは今年結成21年目を迎える大ベテランバンドだが、ライブに集まるファンは20代が中心でかなり若い。場内が暗転して、ライブはステージを覆う3枚の巨大パネルに映し出されるムービーで開幕。メンバー5人が変身して地球を救うという『アベンジャーズ』さながらの映画のような迫力ある映像から物語はスタート。人間に戻ったMaydayがステージに現われ、新アルバムの『Party Animal / 派對動物』の演奏を始めると、観客は一斉にペンライトをともし、『OAOA』から客席は大合唱を届ける。『出陣の歌 / 入陣曲』ではMONSTER(Gt)とSTONE(Gt)のツインリードが炸裂、パワフルなMING(Dr)の音に支えられながらMASA(Ba)が曲に疾走感を与え、オープニングからライブの幕開けにふさわしいMaydayのロックナンバーで、場内のボルテージをどんどん上げていく。「こんばんは、Maydayです」というASHIN(Vo)の日本語の挨拶から始まった最初のMCでは、「元気?」とMONSTERが日本語で場内に話しかけると、アジア各国から集まったお客さんが日本語で「元気!!」と返答。「武道館は3回目」とMASAがいうと、ワールドツアーのなかでも「ここはみんなと(の距離が)近いね」とSTONE。ASHINに食べ物の話をふられた MINGがラーメンに続いて「ウニが好き」というと、定番のメンバーのMINGいじりがスタート。この日は即興で『笑忘歌』を“ウニ”バージョンの替え歌でMINGに歌わせ、メンバーも会場も大盛り上がり。こうしたMaydayのユーモアたっぷりのMCコーナーは、ファンを喜ばせる時間でもある。
ライブ中盤、『兄弟』に続けてASHINの“1,2,3,4”のカウントからツアーの原題でもある『人生有限会社』を演奏したあと、彼らは地球を救う仕事がなくなったあと、ビルの一室で「人生」という有限会社を設立した映像が流れる。次のセクションで、MASAが弾くピアノから『成功間近 / 成名在望』~『The Yet Unbroken Part of My Heart / 我心中尚未崩壞的地方』をプレイしていった場面は、このツアー最大のキモであり魅せ場となっていた場面。ステージが3ブロックに分かれてせり上がっていくと、下からビジョンが登場。より立体感を帯びて迫ってくる壮大なグラフィックと、プログレのように変拍子を多用して、複雑に変化していく人生の可能性を描いていくバンドサウンド。その上で、ASHINが“人生は有限、だけど各々の可能性は無限なんだ”という希望と同時に、夢や希望を追い続けることの辛さ、孤独感を噛み締めながら歌いっていくと、観客はステージに釘付けになる。そうして、人生は満ち足りた想い出さえあれば心の痛みに耐えられるんだと歌う美しいバラード『満ち足りた想い出 / 知足』が始まると、その想い出を作るように、観客がいっせいにスマホのライトをつけ左右に揺らしだす。武道館の客席を美しい星空に変えた観客たちが、間奏になると『きらきら星』を一丸となって歌唱し、場内は感動的な空気に包まれる。
Maydayはさらにスケール感ある楽曲『少年漂流記 / 少年他的奇幻漂流』と、続けてMVだけでも泣ける『頑固』をMVをバックにパフォーマンスしてさらなる感動へと観客を導いていった。“あの頃の頑固な自分を信ていれば、描いていた夢が叶う可能性はあるんだ”という気持ちで、最後にみんなで“ラララ~”を合唱していると、MVのなかの宇宙服を着た少年が実際の舞台に登場! そんな粋な演出で夢が叶った瞬間を観客たちの目に刻み込み、この濃い内容のブロックを締めくくった。
ステージは再び映像へ。Maydayが地球を守るために、宇宙へと旅立ち、物語がオープニング映像へとつながったところから、ライブは新曲『I will carry you』を合図に、終盤へと向かう。『瞬間少年ジャンプ / 離開地球表面』では、舞台からせり出した花道の先端がSTONEとMONSTERを乗せてせりあがる。そんな演出に興奮しながら、観客たちは全員でジャンプして叫び、武道館に一体感ある熱狂を生み出していく。「3度も武道館でライブができてありがとう」とASHINが感謝の気持ちを伝えたあと、MASAが「次は“どこでもドア”だよ~」とドラえもんの声色を真似た日本語の曲紹介でファンを笑わせ、MONSTERのアコギから『どこでもドア / 任意門』へ。5人が出会ったところからMaydayのヒストリーを5人のボーカルリレーで紡ぎあげるこの歌で、彼らは鳥の巣(中国・北京)、マディソン・スクエア・ガーデン(アメリカ・ニューヨーク)を制覇しても、いままで見た一番美しい景色は「君の隣」と歌いきる。まさに、Maydayそのものを総括するようなナンバーだ。こうして人々の心を温かく包み込んだあと『人生は海のよう / 人生海海』で、みんなで手を左右に振りながら、この歌を笑顔で大合唱して本編は終了。
ツアータイトルの原題に合わせて、ファンが“加班(=残業の意味)”コールをするなか、この日のアンコールはなんといってもサプライズで登場したGLAYが話題をさらった。Maydayのメンバーが大はしゃぎするなか、TAKURO(Gt)が作詞を手がけた『Dancin’ Dancin’』をMayday +GLAYでパフォーマンスすると、場内はこの日最大の盛り上がりと熱狂に包まれた。こうして、今年3月にGLAYが台北アリーナでライブを開催したとき、ゲスト出演したMaydayと交わした約束をきっちり実現したあと、TERU(Vo)の口から「楽しい~! 今度は2バンドでやりましょう」と対バンライブのオファーが飛び出す。それを聞き、ASHINは快く手を差し出して「約束しましょう」とファンの前でしっかりと指切りを交わした。それを横で見ていたTAKUROが「Mayday大好きだ~」と叫ぶと、ASHINも「GLAY大好き~」といってTERUを抱きしめる。そんな感動的な場面のなか、ドラム台にいたMINGがお茶目な顔で「ウニ大好き~」とボケを入れてしまい、MONSTERに「それは失礼だよ」とすぐさま突っ込まれメンバーたちの笑いを誘った。アジアのスーパーバンドといわれながらも、こんなところがMaydayの人間くさくて愛らしい部分。
こうして、1本のライブを通して“人生は有限、だが自伝の可能性は無限だからこそ、あなたはあなたが望むストーリーを描いて”というエールを、この日武道館に集まった観客たちにしっかりと刻み込んだMayday。
彼らのワールドツアーは、この先まだまだ続いていく。
セットリスト
01. Party Animal / 派對動物
02. OAOA
03. 出陣の歌 / 入陣曲
04. スーパーマン / 超人
05. 君は幸せじゃないのに / 你不是真正的快樂
06. 乾杯
07. 兄弟+人生有限会社 / 兄弟+人生有限公司
08. 成功間近 / 成名在望
09. The Yet Unbroken Part of My Heart / 我心中尚未崩壞的地方
10. 満ち足りた想い出 / 知足
11. 少年漂流記 / 少年他的奇幻漂流
12. 頑固
13. I will carry you
14. 瞬間少年ジャンプ / 離開地球表面
15. どこでもドア / 任意門
16. 人生は海のよう / 人生海海
EN1. Dancin' Dancin’ (with GLAY)
EN2. 青春の彼方 / 盛夏光年
EN3. あっという間 / 轉眼
EN4. 馬鹿+僕は僕に嘘をつかない / 憨人+倔強