4月30日、SUPER BEAVER初となる日本武道館ワンマン公演『都会のラクダSP at 日本武道館』が行なわれた。たくさんのファンが列を作るオリジナルグッズ特設テントの横を通り過ぎて、会場の正面に辿り着いた時、何とも言えない感慨が早くも沸き起こった。そこに堂々と掲げられていたのは赤地に白い文字で“SUPER BEAVER”と書かれた大きな看板。“ついにこの日が来た!”ということを改めて実感しながら会場内に入ると、アリーナ席、1階席はもちろん、2階席の隅々までが観客で完全に埋め尽くされていた。この公演のチケットは即日完売。ステージの全体および一部演出が見えにくい注釈付き指定席のチケットが急遽販売され、GYAO!での生中継と配信も決定――という、並々ならぬ期待を集めるものとなっていただけに、開演前からとても熱いムードが漂っていた。
開演時間1分前からカウントダウンを告げる数字がスクリーンに表示され、歓声が高まり続けて迎えた開演。所属レーベル[NOiD]のロゴが描かれたタオルを掲げて現れた柳沢亮太(Gt)に続いて上杉研太(Ba)と藤原“29才”広明(Dr)もステージに立ち、最後に登場した渋谷龍太(Vo)が観客に語りかけた。“レペゼンジャパニーズポップミュージック、フロムトーキョージャパン、なんてものを恥ずかしげもなく掲げてきました。いろいろありましたけど、この日がひとつの答えだと思ってます。どうもありがとね。最後の曲の前のMCみたいになっちゃった(笑)。ライヴハウスから日の丸の下にやって参りました。14年目のインディーズバンドSUPER BEAVER。あなたのお陰で立ててる本日。あなたのお手を拝借!”。そして始まった1曲目「美しい日」。全観客が一斉に打ち鳴らす温かい手拍子に祝福されながら響き渡ったこの曲の時点で、忘れられないライヴとなることを予感させられた。
“やるまでは、連れてきてもらったっていう感覚が強かったの。でも、本番が始まる前にみんなが入ってくる様子をこっそり覗いてたら、連れて来られて良かったなと思うようになりました。日本武道館に意味があるわけじゃなくて、あなたのいる日本武道館に意味がある。俺たち、そういうバンドでございます”――序盤のインターバルで渋谷が語っていたが、まさにその言葉通りのライヴだったと思う。“日本武道館という夢の大舞台!”ではなく“観客のひとりひとりと真っ直ぐ向き合って音楽を奏で続けた先に広がっていた空間”として、いつものように心を込めて楽曲を届けてくれた4人の姿がとても頼もしかった。そして、そんな彼らが抱えている想いは、生のストリングスに彩られながら披露された「人として」の後の渋谷のMCでも感じた。“武道館を1個の通過点にしなきゃいけないねと話してたんですけど、それは少し違くて。武道館は立派なひとつの到達点です。俺たちは通過しながら片手間で人と向き合ってきたつもりはない。いつでもその場所を大切な到達点として足を止めて向き合ってきました。そしたら14年もかかってしまった。悪くないなと思います。ただ、その到達点が終着点ではないというところに俺たちの面白さがあると思ってます”――想いをじっくりと語ったひと時を経て、“メジャーにいた頃、これなんじゃないか?と胸を張ってやってた曲。今日も胸を張ってあなたの前でやれそうなので、やってもいいでしょうか?”と観客に問いかけてから届けられた「シアワセ」。前曲に続いて生ストリングスとともに奏でられたこの曲は、大きな感動を呼んでいた。
「青い春」「東京流星群」「秘密」が一気に披露され、観客の大合唱と熱い手拍子は高まり続けた。“2018年4月30日。とってもとっても特別な日ですけど、とってもとっても普通の日です。毎日繰り返す当たり前のこと、近くに誰かがいてくれること。そんな毎日がとってもとっても特別だと思ってます。その特別な1日が、今日は日本武道館という姿を借りてここにあるんだと思ってます”という渋谷のMCを経て、「ありがとう」と「愛する」が届けられて本編は終了。アンコールを求める歓声が、会場全体に力強く響いた。
6月27日に約2年振りのフルアルバム『歓声前夜』をリリース。さらに7月から10月にかけて初の全国ワンマンツアーが決定という告知がスクリーン上で発表された後、メンバーたちがステージに再登場。4人は各々、想いを語った。“やあ、すごい! すごい! 楽しかった! 今も楽しい! それに尽きます。これからもよろしく!”(柳沢)。“ありがとう! 全然言葉が出てこない。すごい1日です。ほんとにありがとう!”(上杉)。“嬉しいですね。人がいっぱい。どうもありがとう!”(藤原)。“嬉しかったです。俺たち、これからもっともっとやりますんで、楽しみにしていてくださいね”(渋谷)。そして、アンコールの1曲目に披露したのは、新曲「ラヴソング」。グルーヴィーなロックンロールサウンドが、観客の明るい手拍子を誘っていた。
“これからも、あなたたちじゃなくてあなたに歌うバンドでいたいと思います。同じ時代、同じ時を生きられて…”。終盤のMCで感極まって声を詰まらせた渋谷。“今日をゴールにしないために、絶対に泣かないって決めてんだ”――涙をこらえて穏やかな笑顔を浮かべた彼の姿が、とても印象的だった。そして、「それでも世界が目を覚ますのなら」と「素晴らしい世界」を演奏して迎えた終演。ステージ上で深々とお辞儀をした4人を包んだ拍手がさわやかであった。SUPER BEAVERは、このライヴを観た全ての観客にとって一層かけがえのない存在となったに違いない。
セットリスト
01. 美しい日
02. 証明
03. うるさい
04. 正攻法
05. ファンファーレ
06. らしさ
07. 赤を塗って
08. →
09. 361°
10. 歓びの明日に
11. 27
12. 人として
13. シアワセ
14. 青い春
15. 東京流星群
16. 秘密
17. ありがとう
18. 愛する
<ENCORE>
01. ラヴソング
02. それでも世界が目を覚ますのなら
03. 素晴らしい世界