2016年4月28日(木) 中野サンプラザホール
Report:フジジュン
Photo:スージー
今年1月、実に3年9ヶ月ぶりとなる、オリジナル・アルバム『不良品』をリリースした氣志團。2014年リリース、月9ドラマの主題歌でもある「喧嘩上等」の大ヒット以降、「Don’t Feel,Think!!」、「幸せにしかしねーから」、そして、『仮面ライダーゴースト』の主題歌でもある「我ら思う、故に我ら在り」と、立て続けにリリースされた強力シングルもパッケージされた全18曲入りの本作は、オリコン・アルバムチャートで5位にランクイン!メイジャー・デビュー15周年イヤーを迎え、“氣志團現象、再び”とばかりに世の注目を集める彼らが、手応え十分のアルバムを提げて開催中の全国34カ所35公演を回る全国ツアー「氣志團メイジャー・デビュー15周年記念興行 ツッパリHigh School Musical『氣志團學園II ~拳の中のロックンロール~』」。本ツアーの東京公演が4月28日(木)、29日(金・祝)に中野サンプラザホールにて行われた。
「One Night Carnival」に続く、氣志團の代表曲となった「喧嘩上等」で心を掴み、「氣志團がやって来たオラ!オラ!オラ!」~「ツッパリHigh School Musical(登場編)」で幕を開けるアルバム『不良品』を聴くと分かるのだが、まるで一枚を通してひとつの物語を紡いでいるような、めくるめくGIGの世界をそのまま閉じ込めたような作品となった最新アルバム。ツアー中なので具体的な内容は書けないが、“ツッパリHigh School Musical”と冠した今ツアーは、そんなアルバム『不良品』の新曲たちを中心としたセットリストと、名誉生徒である氣志團が在籍する“氣志團學園”で巻き起こる物語が絶妙に絡みあう、“ロックンロール・ミュージカル”テイストのGIG。
“氣志團學園”とは10年前に開催され、今もファンの間で語り草となっている氣志團の全国ツアー『氣志團學園 ~愛羅武勇からはじめよう~』の舞台となった、移動型定時制ロックンロールハイスクール。綾小路 翔も「当時出来ることの全てを注ぎ込んだ」と語る伝説のツアーの続編ということで、タイトルだけで期待に胸弾ませていたKISSES(氣志團ファン)も多かったであろう今ツアー。いざ始まったツアーはその期待を十分に上回る内容になっており、サービス精神旺盛かつ、エンターテインメント性の高い氣志團のGIGは以前より定評が高かったが、その独創性と完成度の高さはツアー毎に増すばかり。歌や演奏はもちろん、演出や脚本、舞台音楽と全てに磨きがかかり、ロックバンドのライヴの枠を優に超えた唯一無二のステージを形成している。
そして今回、ステージのクオリティをこれまで以上に高めているのは、やはり『不良品』の新曲たちの存在。ひとつの物語を紡いでいるように聴こえたアルバム楽曲は生の歌や演奏、氣志團學園という設定、そして個性豊かな登場人物たちによって命が吹き込まれるようにキラキラと輝き、深い意味合いとメッセージ性をもって観る者の耳や心に響いてくるのだ。「ツッパリHigh School Musical(登場編)」でステージに惹きこまれ、あの頃の甘酸っぱい気持ちがよみがえる「16歳」にキュンキュン来て、60’sテイストの「アビイ・ロード」で懐かしい雰囲気に浸り、「我ら思う、故に我らあり」で熱く拳握る。さらにそれぞれの強烈な個性が存分に発揮されたメンバーのソロコーナーでは、大いに笑い、興奮し、涙まで誘い、綾小路の弾き語りから始まる「不良品」はたっぷり気持ちを込めた感傷的な歌詞と歌声がグッと胸に迫って感動を生み、GIGでも大きな魅せ場のひとつとなっている。
さらに特筆すべきは、現在の氣志團のバンドとしての状態の良さ。休学中の白鳥雪之丞に代わり、叶 亜樹良がサポートドラマーとして参加して約5年。GIGやアルバム制作を経て、現メンバーでの結束や絆はより強固なものとなり、ツアーが進むごとに演奏の凄まじさが増しているのが分かる。さらに鉄壁の演奏に支えられた綾小路のヴォーカル、早乙女 光のステージパフォーマンスもより強烈に光を放ち、新曲はもちろん「鉄のハート」、「愛 羅 武 勇」といったGIG定番曲も、「こんなにカッコいい曲だっけ!?」と驚かされるほど輝いて聴こえてくる。今ツアーに訪れる人は演出面はもちろん、結成20周年を目前に、氣志團史上最高のカッコ良さを見せている歌と演奏、ステージングにも注目して欲しい。
僕もすでに今ツアーは5本のGIGを見ているが、見どころ満載で何度見ても新鮮な気持ちで楽しめる氣志團の今ツアー。その日、その場所でしか観ることの出来ない特別な演出もファンには嬉しい限り。4月28日(木)の中野公演で行われたのが、前代未聞の「綾小路 翔 Birthday 予告サプライズ」(笑)。4月26日に誕生日を迎えた綾小路に、何かしらのサプライズを行うことを予告していたこの日。アンコールで登場した氣志團の演奏を中断させた星屑輝矢が、「一度始まったら、この映像は止めることが出来ない!」と綾小路に強制鑑賞させたのは、氣志團メンバーが綾小路の実家で両親に親孝行(皿洗い、玄関掃除など)をするVTR(笑)。「実家はやめろよ!」と本気で嫌がる綾小路をさらに襲った悪夢は、VTR内で綾小路の父がVTRで漏らした「ステージからの風景を見てみたい」の発言を拾って、学ラン姿でステージに登場したお父様。本気でイヤがる綾小路をよそに、氣志團の演奏で「One Night Carnival」を大熱唱!途中、ステージに上げられた綾小路との共演という微笑ましいシーンに拍手と歓声が上がる中、ダメ押しをしたのは「あれ持って来て!」の声に登場した綾小路の母。カートで運んで来た、手作りハンバーグとお赤飯をお母様に「あ~ん」して食べさせてもらい、大照れする綾小路に会場中から大爆笑が起き、予告サプライズは大成功!動揺しながらGIGを続行する綾小路を観客は温かい笑顔で見守っていた。
また翌日のMCでは7月16日(土)神奈川・ハーモニーホール座間で行われる、ツアーの追加公演が発表された。後半戦に差し掛かり、楽しい學園生活に終わりが見えて来てしまったこのツアー。二度三度と氣志團學園に入学している熱心なKISSESだけでなく、まだ氣志團のGIGを見たことのない人もぜひ入學して、この楽しすぎる學園生活を体感して欲しい。