2016年4月30日(土) Zepp DiverCity(TOKYO)
Report:兵庫慎司
Photo:PETA
空想委員会、2月10日リリースのニューアルバム『ダウトの行進』の東名阪リリースツアーのファイナル。『ダウトの行進』から8曲、そして4月27日にリリースしたばかりのニューシングルの2曲(「ビジョン」と「二重螺旋構造」)を含む、全22曲をプレイ。
頭から「波動砲ガールフレンド」「ワーカーズアンセム」「切illing Me Softly」と3連発し、「言葉はいらん、と。演奏でひっぱりますんで」(三浦隆一/vo,g)という短いMCをはさんで「物見遊山」「フロントマン」「カオス力学」、またMCをはさんで「桜色の暗転幕」「私が雪を待つ理由」「容れ物と中身」──と、『ダウトの行進』の曲たちと過去のライブ・アンセムたちを絶妙に混ぜながら進んでいくステージングに、オーディエンスは腕を振り上げ、ありったけのシンガロングで応える。
このバンドが愛されている、というのももちろんあるが、何かそれ以上にこのバンドの曲そのものが愛されている、という、音楽に対して熱い感情が渦巻く空間になっている、早くも前半で。
「容れ物と中身」のあとのMCで、「八方塞がり美人」のMVに出演していた(他にもtofubeatsとかフレデリックとかドラマチックアラスカとかいろいろ出ている)モデル、アリスムカイデがウエディングドレス姿で登場。フロアに背を向けてブーケトスし、両腕を広げて迎え入れようとする三浦にでかいバックスウィングからの平手打ちをべチーン!と食らわせる(要はMVのラストシーンの再現)。フロア大喝采、そしてバンドは「八方塞がり美人」をスタート。三浦、間奏などで数度「頬が痛え!」とシャウト、フロア、さらに大ウケ。
そこから「雨の伝導率」と「不在証明」をじっくりと聴かせ、「ビジョン」「悪天ロックフェスティバル」でアゲにかかり、MCでさらにフロアをあおったあと「初披露の新曲をやります!」と「二重螺旋構造」へ。四つ打ちのダンサブルな「千里眼」でフロアがハンドクラップで包まれ、続く「春恋、覚醒」で初めて三浦が「お台場―!」とシャウトし(ギター・佐々木直也もベース・岡田典之も、とうにそう叫んでいたのでした)、佐々木がギターを置いてハンドマイクでフロアをあおり、三浦の「僕の頭のなかの空想ディスコへようこそ!」というひとことからイントロへ突入した「空想ディスコ」で、さらに踊らせる。
本編ラストは「ミュージック」。どうしようもない自分の心をなんとかしてくれる唯一のものである音楽への思いを歌ったこの曲の後半で、フロアは「♪ラーラーラーラー」と、大きなシンガロングに包まれた。
居残り(アンコール)で佐々木、岡田、サポートドラマーのテディ(所属事務所の社長でもある。というか、社長がサポートドラマーもやっている、という方が近いか)の3人が出てきて、ツアーの思い出などをそれぞれしゃべっているのに、三浦だけ全然出てこない。
と思ったら、フロア中央よりちょっと前の下手のドア前あたりに、アコースティックギターを持って登場。既に発表になっている9月22日(木・祝)日比谷野音ワンマンの告知を改めてした上で、「その野音で歌いたい曲をやります」と、「単独飛行少年史」を歌い始める。
『ダウトの行進』のキャンペーンで各地のCDショップをアコースティックミニライブで回っている時期(今年3月)にインタビューしたら、この弾き語りが楽しい、ライブも楽しいけどひとりでスタジオに入って練習するのも楽しい、と言っていたので、ここでもやることにしたのかもしれないが、なんとマイクなしの生声、ギターも生音。ひと声も聴きもらすまいと、ファンみんなじっと耳を傾け、歌が終わると大拍手がわく。そして「エンペラータイム」「劇的夏革命」とたたみかけ、終了。
メンバーふたりがフロアをあおったりアツいことを言ったりしても、笑うばかりでちゃんと語ろうとしなかった三浦だが(それが三浦なのでしょうがないが)、後半では「本当にね、音楽やってなかったら僕ら、クズです」「こうやって音楽を聴いてもらって、ライブに来てもらえて、初めて僕のいる意味がある。ありがとうございます。感謝しかないです。歌うしかないので、歌で返していきます。いっぱい返すから」と、オーディエンスに本気の感謝の言葉を捧げていた。
本当に楽しくて、あっという間で、ちょっとだけグダグダなとこもあって(岡田のMC)、そして本当に幸せで本当にせつない、空想委員会だから作り出すことのできる、空想委員会にしか作り出すことのできない時間だった。
6月から7月にかけて、福岡・東京・仙台・名古屋・大阪を2デイズずつ回るライブハウス・ツアー、そして9月22日(木・祝)には先ほども書いた初の日比谷野音ワンマン。ひき続き追いたい。