2017年8月13日(日)
「まねきケチャ2周年記念ライブ ~まねかれナイト~」
取材・文:永堀アツオ
写真:東美樹
8月13日(日)に渋谷TSUTAYA O-EASTで開催された、まねきケチャの2周年記念ライブ「まねかれナイト」は、グループ結成時に掲げた「紅白歌合戦出場」という目標が、現実味を帯びて近づいていることを感じさせてくれるステージとなっていた。
2015年8月のお披露目ライブ以降、単独公演は全てソールドアウトさせてきた彼女たち。1周年となる2016年の夏にはZepp Tokyo、中野サンプラザ、代々木公園野外音楽堂と大箱でのライブを3ヶ月連続で開催し、初出場となった「Tokyo Idol Festival 2016(通称:TIF)」ではメインステージ争奪戦ライブに出場。対戦相手がハイパーなアイドルソングで観客を盛り上げる中で、民謡や演歌の節回しをルーツに持つ藤川千愛の歌唱力の高さを前面に押し出した“エモくて泣ける”バラード「きみわずらい」で勝負し、見事に優勝。多くのアイドルファンに見つかり、同年秋にリリースされた2ndシングル「タイムマシン」は前作「きみわずらい」に続き、2作連続でオリコンデイリーランキング1位を獲得した。その勢いのまま2017年6月に3枚目のシングル「どうでもいいや/ありきたりな言葉で」でメジャーデビューを果たし、今年の夏のTIF2017では、最終日のメインステージで、トリの乃木坂46の前という出番を務めた。1年前には想像もできなかったことだが、48グループや坂道シリーズに続き、アイドルの枠を超えたポピュラリティーを獲得する可能性と期待を感じての起用だったのではないかと思う。
この日は、ライブ前にそれぞれが2周年を迎えた心境を語る映像が流され、藤川は「本当に色々あったなって思いますね。楽しいことと同じくらい辛いこともたくさんあって。アイドルって本当に大変だなって思うことがたくさんあって。投げ出したいと思うこともあったんですけど、私は歌うためにアイドルになったから、歌いたいっていう気持ちで頑張ってきたなって思います」と振り返り、松下玲緒菜が「一番大変だったことはメンバーのまゆたが卒業しちゃったこと。これからどうなっていくんだろうっていう不安でいっぱいだったし、辛くてたくさん泣いた」と、メジャーデビューという大切なタイミングでメンバーが脱退したことにも触れると、スクリーンには藤咲真有香のライブ映像が流された。また、今後について問われたメンバーは、藤川が「アイドルで日本で一番になりたいです。負けたくないです」と意気込み、「ロックフェスに出たい」という中川美優に続き、宮内凛は「いろいろ突っ走ってきた感はあるんですけど、目標はデビュー前から言ってた紅白なので、それに行かない限りは、満足はしません。たとえおばあちゃんになっても絶対に紅白に行きたいっていう気持ちは変わりません」と、足を止めずに歩み続ける決意を語った。
ライブでは、彼女たちの歌の力、歌メロの馬力が印象に残った。最近のアイドルは、爆音のオケに大声で叫ぶように歌うライブが多い。オケのヴォリュームをギリギリまで上げることでパンクやスカコア、ヘヴィメタのライブのような興奮を与えてくれているわけだが、とにかく騒ぎたい、暴れたいという人が増え、刹那的な盛り上がりだけで終わってしまう懸念もある。もちろん、彼女たちのライブにも「冗談じゃないね」や「SPLASH」、「モンスターとケチャ」のように観客の熱いコールと一体となって盛り上がれる楽曲も多いのだが、ラウドでユニークな展開をするアップナンバーでも、音の洪水の中からストレートに歌声が心に届いてくるようなサウンドスケープが構築されている。そこにあるのは、ちゃんと歌を聴かせたいんだという思いだろう。
4人の歌声のバランスもいい。藤川には、純粋に歌の質やスキルだけで聴き手を感動させられる圧倒的な才能を感じるし、松下には王道アイドルのまっすぐさや純粋さ、煌めきや儚さがある。宮内には、聴き手が自身の経験や思い出を重ねられる冷静さがあり、中川の甘いウィスパーヴォイスにはメランコリックでダークなトーンを感じる。ピンクと赤がエモーショナルで声量もあり、青と紫がクールに呟くという対比になっていると言えばわかりやすいかもしれない。この4人が歌い継ぐからこそ、あやふやな心模様がリアルに響くのだ。彼女たちは、<自分らしさとは?>を自問自答する「青息吐息」や<誰が僕を愛するというのか?>と繰り返す「僕が僕を」をはじめ、名曲として歌い継がれて行きそうなスタンダードな響きを湛えた「どうでもいいや」「きみわずらい」など、青春の迷いや葛藤を表現した楽曲が多く、同じフレーズを一人ずつが歌い継ぎながら、感情を高めていく。4人の声色や唱法の違いがそのまま感情の振れ幅になっており、だからこそ、聴き手も歌い手が変わるたびに心を揺さぶられるのだ。
アイドルポップにスカやロックアンセム、ジャズなどの多様なビートを混ぜ込んだ「奇跡」を歌い終えたあと、渋谷の駅前に広告看板を出し、寄せ書きTシャツと花束を贈ったファンに対して感謝の気持ちを述べた4人は、改めて、これまでを振り返り、涙をこらえながら、未来への展望を語った。
藤川 自分にまだまだダメだなって思うところはたくさんあるし、自分に自信は正直全然ないし、メンタルもすごく弱いんですけど、バカにされても、無理だって言われても、22年間、ずっと夢は叶えるっていうことが心の中から消えたことはなくて。このメンバーなら夢は叶うっていうことを確信したので、これからも絶対に、このメンバーで夢を叶えていきたいと思います。私は歌を歌うためにアイドルになったので、これからも皆さんの心に響くような歌をみんなに届けていきたいと思います。
宮内 今、4人になってしまったんですけど、絶対に紅白に行って、その姿をまゆたに見せたいなと思ってるんですよ。まゆたは抜けてしまったとしても、夢は一緒だと思っているし、まゆたはまねきケチャのことを見てます。私たちが絶対に連れて行きます。あとは、新人だと甘えることができないので、天狗にならず、初心を忘れずに頑張っていきたいと思います。
松下 私はずっと5人で2周年を迎えるって思ってて。最初、まゆたが抜けるって聞いた時にすごいしんどくて、辛くて、ずっと泣いてて。今でも思い出すと泣けるくらいしんどかったです。でも、凛ちゃんが言った通り、紅白という夢は5人全員変わらないので、4人でも紅白を目指して頑張っていくので、ついてきてください。
中川 よく2年持ったねって言われます。私もね、やめたいなと思うことは365日あるんですけど、ファンの人と話してると、もう少し続けようかなって思って、2年が経ちました。今年はまゆたがやめたり、レーベルが変わったり、いろんなことがあったんですけど、こうしてライブができることが嬉しいです。来年もこの4人で3周年を迎えられたらいいなと思います。
アンコールでは「告白のススメ」「ありきたりな言葉で」というラブソングを披露し、<好きなんだ><愛してる>というメッセージを満員の観客に伝えるなかで、「まゆた、絶対に紅白行くからね!」と、会場に来てない元メンバーへの思いを大声で叫んだ。この2年間での躍進をみれば、その日はそう遠くない未来にやってくるのではないかと確信している。
セットリスト
- 冗談じゃないね
- SPLASH
- 青息吐息
- 妄想桜
- 僕が僕を
- 妄想日記
- 一刀両断
- 愛言葉
- SEVENTH HEAVEN
- どうでもいいや
- モンスターとケチャ
- タイムマシン
- 奇跡
- きみわずらい
<アンコール>
- 告白のススメ
- ありきたりな言葉で
- 冗談じゃないね(2周年記念Ver.)
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