『MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~
第Ⅱ章 06-17 極志球業シ終T
2017年6月21日(火)日本武道館
Report:武市尚子
Photo:西槇太一
2017年6月21日。『MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~ 第Ⅱ章 06-17 極志球業シ終T』と名付けられた2日目のライヴは、前日のアウトロをイントロに置いた「脈拍」から幕を開けた。
「20年間の中で出逢えた全ての人たちと、まだ見ぬ未来のあなたへ。心から、心からの感謝を。ありがとう———」
「脈拍」の始まりの前に届けられた逹瑯からのメッセージは、この2日間を通して彼らが1番伝えたかった言葉であったに違いない。
この曲のラストでSATOちは立ち上がり、オーディエンスを煽った。1日目の張り詰めた空気感とは明らかに異なる空気感がそこにはあった。2曲目に届けられた「塗り潰すなら臙脂」のイントロでは既に手放しでMUCCのサウンドを浴び、自由にその空間を楽しんでいる様子だった。
「いける?」
「KILLEЯ」の頭で逹瑯が挑発とも思える緩い問いかけをオーディエンスに投げると、轟音のような歓声が客席から沸き上がった。この曲のギターソロで出現した巨大なサークルは、過去の武道館の景色を大きく塗り替えたものだった。しかし。初期のMUCCの未来が、こんな景色を生み出すことになっていたとは、正直今でも想像がつかない。
MUCCが大きな変化を遂げたきっかけとなった楽曲といえば、彼らが初めてエレクトロニカ要素を自らの音に取り入れた「ファズ」である。この日のライヴで「ファズ」は、「極彩」の後に届けられたのだが、暗転したステージが明るくなったその瞬間に中央に走り出たミヤが高くジャンプし、そのイントロを奏でた瞬間から曲が始まっていった。曲の軸となる4つ打ちのリズムを奏でるSATOちのドラムとアップライトに持ち替え、リズムに身を委ねながら弦を弾くYUKKE。都会的な印象の楽曲に、これまでの郷愁感溢れる甘酸っぱい恋愛感情でもなく、四畳半一間を思わす「神田川」的な恋愛でもなく、ある意味生々しさを感じるリアルな恋愛を彷彿させるこの歌詞を唄う逹瑯は、確実にボーカリストとしての新たな扉を開いたのではないかと思う。
「躍れ!」
逹瑯の叫びにオーディエンスは歓声を上げる。そこから繋げられた「JOKER」での逹瑯とミヤの官能的な絡みも、全員で男臭いコーラスが加えられる魅せ方も、昔のMUCCからは想像がつかない。06年から17年のMUCCを届けた2日目は、前日に比べ、変化が大きい年代でもある。故に、1日目よりも振り幅が大きかったと言えるだろう。
真っ赤に染上げられたステージの中で真摯に音と歌詞に向き合って届けられた「JAPANESE」。メロディアスながらも疾走感のあるバンドサウンドに引き寄せられる、拳で客席が埋め尽くされた「空と糸」。マーチングドラムに合わせたオーディエンスのクラップと掛け声が加わり、絶頂の景色を生み出す「G.G.」と、目まぐるしいほどに次々と違った表情でオーディエンスを魅了していったMUCCの姿がそこにあった。
そんなこの日の流れの中で特に印象的に映ったのは、YUKKE曲の「秘密」「ピュアブラック」というR&Bやスウィングなどの要素との融合ロックサウンドである。メインコンポーザーであるミヤの楽曲がMUCCの基軸となっている中で、昔はYUKKEもどこかで“MUCCらしい曲”を作ろうと意識していたのだろう。しかし、ここ最近では“YUKKEらしさ”をMUCCの音に持ち込んでいる印象が強い。まさに、「秘密」「ピュアブラック」は、MUCCの新機軸と言っても過言では無いほど、MUCCというバンドの音の中でも、多くのリスナーが求めるサウンドになってきていると思う。
この日も、この2曲で会場の空気感が大きく変化したのが目に見えたほど、音で楽しませるバンドに成長していることを証明していたブロックでもあった。
そして。やはり、このレポートを書く上で記さずにいられないのは、「暁」だろう。この曲も前日の「ジオラマ」同様に武道館とは縁の深い楽曲だ。「暁」は、2011年5月21日、22日に行われた日本武道館でのライヴにおいて、会場限定チャリティーCDとしてリリースされた楽曲である。この楽曲を彼らが作った想いの中には、東日本大震災という背景がある。彼らは、「自分たちにできることは曲を作り演奏し歌を唄うこと」「日本武道館に多くの人が集まってくれるせっかくのタイミングに自分たちにも何かできないか」と考え、震災直後に急遽制作し、武道館公演で1枚500円で販売することを決め、その収益金を義援金として寄付したのである。
「20周年なんです。気がつきゃちょいちょい偉くなってきまして(笑)。だがしかし、目の上のたんこぶ的な先輩たちがいっこうに居なくならず(笑)。20年やってきた中で思うことは、20年という時間をかけて絆みたいなものが出来ているのかなって思ってます。ともすると、先輩たちというは、もっともっとすごい絆で結ばれてんだろうなと。自分たちも20年続けてきてそういうものが、ちょっとずつ生まれてきてるのかなと思います。そして、後輩たちからは、自分たちが先輩たちに思うような、目の上のたんこぶ的な存在に思われてきているのかな?と思います。今日観に来てくれてる後輩諸君もいるでしょう。すみませんね、まだまだ居なくなりませんよ。全力で先輩たちを追いかけてるこの追い足が、後輩バンドに対しては逃げ足になりますんで、全力で追いかけて来てください。よろしく。そして君たち(オーディエンス)も、俺たちが全力で走り続けているから、振り落とされないように、必死でしがみついてってね。よろしく」
実に逹瑯らしい“ありがとう”と“宣戦布告”である。
オーディエンスはそんな逹瑯の言葉にMUCCのファンで在り続けることを誓ったことだろう。また、この2日間のライヴを観て、彼らのファンで在り続けていることを、きっと誇りに思ったことだろう。
そしてこの日。逹瑯が言った20年という歳月が築き上げた絆は、アンコールに届けられた「優しい歌」で、目に見える形となって感じることが出来た。この曲では、オーディエンスがかざす携帯の光で客席が埋め尽くされるという光景がお馴染みになったのだが、最初に客席にそんな光の花が咲いたのは、2009年3月15日にMUCCが2回目の単独武道館公演を行った『球体』の2度目のアンコールの時だった。それは、メンバーからの発案により、オーディエンスが咲かせて魅せた光の花であり、それはMUCCのライヴには珍しい光景として深く心に刻まれた瞬間でもあった。しかし、その時代は携帯がガラパゴス携帯であったことから、発光力が少し乏しかったこともあり、美しいながらも揺らぎのある光の花達だったのだが、発光力が強くなったスマートフォンが主流となった今、「優しい歌」でオーディエンスが客席に咲かせた眩いまでの光の花は、そこに居たオーディエンスそれぞれの強い意思を感じさせる個の力だった。MUCCの音と唄によって自我を解放できたのだろう。MUCCの音と唄によって背中を押されたのであろうオーディエンスが咲かせた前向きさを感じた光の花は、息をのむほど美しい光景だった。
彼らは全ての会場の照明を落とす様にスタッフに呼びかけ、会場を真っ暗にした状態の中で、オーディエンスが掲げてくれた光を噛み締めていたのだった。
彼らにとって、集まってくれたファンたちと共に作った昨日と今日という武道館での時間は、この先、積み重ねられていく歴史の中でも、忘れることの出来ない特別な1ページになったに違いない。
本編終了後には、オールタイムセルフカヴァーアルバム『殺シノ調べⅡ This is NOT Greatest Hits』のリリース(9月13日)、9月9日から始まるホールツアー『MUCC 20TH ANNIVERSARY殺シノ調べ This is NOT Greatest Tour』、MV集のリリース(10月)、豪華アーティストが名を連ねるトリビュートアルバムのリリース(11月リリース)、そして、トリビュートアルバムのリリースを記念して11月30日から行われる、トリビュートアルバム対バンツアー『えん7』と、12月27日に、『えん7 FAINAL』を、ここ、日本武道館にて行うことを発表した。
今回の武道館2daysが20周年の山場かと思いきや、どうやら、まだまだ彼らの全力疾走は止まらないらしい。とことん走り続ける覚悟の20周年という節目を、しかと見届けようではないか。そして。その先の未来にどんなMUCCを魅せてくれるのか、今から心待ちにするとしよう。
6月20日『MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍
~そして伝説へ~ 第Ⅰ章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6』はこちら!
セットリスト
01.脈拍
02.塗り潰すなら臙脂
03.KILLEя
04.極彩
05.ファズ
06.JOKER
07.JAPANESE
08.空と糸
09.G.G.
10.秘密
11.ピュアブラック
12.メディアの銃声
13.流星
14.暁
15.ニルヴァーナ
16.咆哮
17.ENDER ENDER
18.Mr.Liar
19.TONIGHT
20.シャングリラ
ENCORE
01.優しい歌
02.MAD YACK 03.フライト
04.孵化
05.ハイデ
PRESENT
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