amiinA×TOKYO FM presents 「Arch Delta Tour」
2017年5月7日(日)Shibuya WWW X
共演:GOING UNDER GROUND / BiS
Text:永堀アツオ
Photo:山本史樹
高校2年生のamiと高校1年生のmiyuによるガールズユニット、amiinAが新たな音楽イベント『Arch Delta Tour』を立ち上げた。タイトルを直訳すると「三角形の門」だろうか。3ヶ月連続、3つの異なる会場で行う3マンイベントで、各回別にギリシャ神話をモチーフにしたサブタイルがつけられており、第1回目が3つの頭を持つ犬の怪物である「ケルベロス」、第2回目が運命の3女神の「モイライ」、第3回目が海神ポセイドンが持つ3つ又の鉾である「トライデント」。全てにおいて、“3”という数字にこだわったイベントとなっている。
第1回目となる「アーチ・デルタ・ツアー ケルベロス編」は、5月7日(日)に渋谷WWW Xで開催された。トップバッターを務めたのは、昨年の夏に再始動したパンクアイドル、BiS。2人の新メンバーが加入する直前で5人での登場となったが、激しく熱いパフォーマンスで観客を一瞬で盛り上げた。メンバーひとりひとりがシャウトする「IDOL」やスクワットしながら歌い続ける「パプリカ」など、奇抜さに目を奪われがちだが、ハードでヘヴィーなロックナンバーの奥底にはどこか切なさが漂っており、ラストナンバー「BiSBiS」で垣間見せた爽やかな笑顔と、カオティックな爆音の中から浮かび上がってくる美メロには心を奪われる思いがした。
続いて登場したのは、「アイドルとライブをやるのは初めて」だという、現在は3人組となったGOING UNDER GROUND。ヴォーカル&ギターの松本は、「この空間、下北界隈よりも美しかったです。俺が好きだったパンクやハードコアのライブに行って感じていた空気、匂いが一緒でございました」と感想を述べた上で、「あえて聞きたいことがございます。音楽が好きな奴は手を挙げてくれ。音楽がないと生きていけない奴は手を挙げてくれ」と呼びかけ、1曲目であるシンプルなロックンロールナンバー「LISTEN TO THE STEREO!!」でいきなり、観客全員での大合唱となった。率直に言えば、この日のフロアはほぼ、amiinAとBiSのファンで埋め尽くされており、この曲を初めて聞いたという人も多かったはずだ。それでも、シンガロングを巻き起こしたのは事実であり、感動的ですらあった。アウェイの空間を1曲でホームに変えたバンドの底力と楽曲が持っている歌力の強さを感じた。さらに、「ミラージュ」で踊らせ、「ナカザのロック★」でコール&レスポンスが実現し、代表曲「トワイライト」では自然と大きな拍手が沸き起こった。松本の「オイパンクのライブをやってる気がする。来年、今年を振り返った時に、一番楽しかったのはここでライブをやったことだっていうよ」という言葉は素直な気持ちだろう。
こういったイベントでは、お目当てのアーティストのステージ以外はフロアから出てしまう人もいるのが常だが、『Arch Delta Tour』に集まった観客は、どのアーティストのライブも全力で、笑顔で楽しんでいるのが印象的であった。amiinAのファンは、アイドル好きであるよりも前に、音楽が好きだという人が多いという証でもあるだろう。
トリを務めたamiinAはインストナンバー「Valkyrie」でライブをスタートさせた。クラシックバレエの素養を感じる踊りだけで楽曲の世界観を表現。彼女たちのジャンプには、言葉では説明しづらい可憐さ、軽やかさがあった。深遠なるエコーが広がる「illumina」、爆音の中を勢いよく走り抜ける「Avalon」、声の広がりが言いようのない高揚感を与えてくれる「Legacy」、シンメトリーによるパフォーマンスが展開される「Drop」、踊りながら伸びやかなロングトーンを響かせる「Atlas」、変拍子の中で激しいダンスを見せる「lilla」、鏡の外と中を演じた「monochrome」……。映像や照明の演出も効果的で、重低音が常に体を揺さぶっていた。耳だけではなく、目でも、体でも楽しめる構成となっており、“3”という数字には、二次元ではなく三次元、目と耳と体で、ポストロックやビッグビートを題材にしたコンテンポラリーダンスのショーのような世界観を味わうという意味も込められているのではないかと感じた。
MCでは、miyuが「今日、出演してくださったGOING UNDER GROUNDさん、BiSさん、本当にありがとうございます」とあいさつし、「みんな、GOING UNDER GROUNDさんに褒められてたね!楽しかったって言ってたよ。嬉しいね」と喜びを観客と分かち合い、amiは「3マン、いいね。1時間あって、いっぱい曲をやれるから、本当に気持ちいいです。『Arch Delta Tour』はあと2回あるので、皆さん来てください。待ってます」と呼びかけた。さらに、ペアダンスがスペーシーに広がっていくロックバラッド「Breath」、会場が1つとなって歌い、ジャンプし、拳を突き上げた「Canvas」で記念すべき第1回目のイベントの幕は閉じられた。「三角形の門」とは、新たな音楽に出会う扉でもあるのだろう。音楽が好きだという思いさえあれば、誰でも楽しめる新しいイベントがどんな進化を遂げ、どんな化学反応を起こすのが楽しみである。
なお、6月9日(金)に新宿ReNYで開催される『Arch Delta Tour』の第2回目には、the band apart, sora tob sakana, amiinAが出演することがすでに発表されている。7月17日(月・祝)に新宿BLAZEで開催される第3回目の出演者は後日発表。また、amiinAは6月7日(水)に1stミニアルバム『Valkyrie』、6月21日(水)にアナログ盤「FamilyTree」をリリースすることが決定している。