この3バンドだと何か特別なものになる
以上、ニュース原稿でした。で。
とにかく全体として、この3バンドでツアーを回ることにとても大事な意義がある、この3バンドだと何か特別なものになる、この3バンドだから意味がある、この3バンドでよかった──というようなことを全バンド全メンバーが感じている、それが終始伝わってくるイベントだった。3バンドともそのようなことを何度もMCで口にしていたが、もし誰も何も言わなくて、ただ順番にライブをやっただけでも、こちらもそれを感じ取ることができたと思う。で、それ、そう思ったからこの3バンドが集まったのではなくて、集まってツアーをやってみたらそうだということがわかった、のではないかという気がする。
とにかくこのツアーをやっていること自体が楽しそう、どのバンドも。LEGOヒロキが「俺ほんまユタニとか、クラスおったら絶対友達なってへんわ」と言ったように、みんなMCで他のバンドをネタにする。2F下手からステージを観ている他のバンドのメンバーたちをいじったりもする。そのいじられたバンドが、2Fから大声で応えたりもする。
というような内輪ノリって、ともすれば外からはオーディエンスに疎外感を与えてしまったりするケースもあるが、この夜はそのようなサムいムードとは逆の効果を生んでいた。なんで3バンドがそんなノリになっているのかが、わかるライブ・パフォーマンスを、それぞれがやっていたからだと思う。
各バンドの共通点
ではその共通点とは何か。細かに見ればいろいろあるだろうが、ざっくり挙げるとふたつ、だと僕は感じた。
ひとつめ。音が過剰で混ぜ方が独特。
ギター2本とベースとドラムと同期(シーケンスとか)と歌の、絡み方・組み立て方・鳴らし方などが、細部にわたるまで「そこまでアイディアぶちこむ?」「で、それを実際に鳴らす?」と言いたくなるほど過剰というか、情報の洪水のような音を出している。ただその中でも、LEGOはいったん「過剰の究極」みたいなところまで行ってから、今はだんだん音を減らしていく段階に入っているフシがある──というように、その過剰さの中でもそれぞれカラーは違ったりする。
そしてふたつめ。3バンドも、ギタリストがどうかしてる。
LEGOヒロキ、phatmansユタニ、ヒトリエシノダ、プレイもキャラも含めて3人ともそう。本来ギターという楽器が担うものではない範囲まで、音色とフレージングの自在さでカバーしていくそのプレイがまずどうかしてるし、キャラクターはもっとどうかしてる。
「顔面戦闘力50万」とヒトリエに言われるほど端正なルックスと、「言わなくていいことから順に言っていく」MCに代表されるネガティブな性格があまりにもアンバランスなLEGOヒロキ(なので彼が忘れらんねえよのサポート・メンバーを始めた時、彼のキャラを知らない人は「なんで?」だが知っている人は「なるほど!」だった、と思う)。自分がアガるあまり、そしてお客をアジテートしたいがあまり、曲の途中ですぐギター置いちゃったりぶら下げていても弾かなくなっちゃったりするphatmansユタニ。「被害者意識」という言葉と「逆ギレ」という言葉を混ぜてこねて人間の形にして服着せてギター持たせたらこうなるのでは、と思わせる……言いすぎか。でもそれくらい強烈なヒトリエシノダ。
そんなそれぞれを堪能させていただきました。そして、よくまあこんな3組が揃ったもんだ、と、観終わってつくづく思いました。