──「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日系)への出演をはじめ、R-指定氏のフリースタイルラップのハイレベルなスキルがお茶の間にも知れ渡りつつある今、絶好のタイミングで1stミニアルバム『たりないふたり』がリリースされましたね。
R-指定 当初は『フリースタイルダンジョン』の出演を断ろうと思ってたんです。『ULTIMATE MC BATTLE』(日本最高峰のフリースタイルバトル大会)の全国大会で3連覇して、もうバトルは卒業しようと思っていたので。僕が勝てば勝つほどお客さんは僕が負けるところを見たがるから、常に100点を出さないといけなくて。正直それはしんどいなと。でも、いざ『フリースタイルダンジョン』でチャレンジャーを迎え撃つモンスターの1人として出演してみたら、人としてもラッパーとしても成長できている実感もあって。
──その緊張感はCreepy Nutsとしてクオリティの高い作品を生み出すというモードを促してもいるだろうし。
DJ松永 そもそもRはバトルをやるためにラップを始めたわけではないしね。
R-指定 もともと曲を書くことからラップを始めたので、個人的にフリースタイルはできへんやろうなと思ってたんです。サイファー(集団で輪になってフリースタイルラップをすること)で鍛えられた部分もありますけど、自分のなかでは曲を作って、ライブをやっていくうちにフリースタイルも強くなっていったという認識ですね。
──Creepy Nutsの楽曲は2人の根暗な性格が積み上げたルサンチマン(弱者から強者への怨恨,復讐の感情)をエンターテインメントに昇華する痛快さに満ちてます。
R-指定 バトルが強いラッパーとしてのイメージと本来の性格のギャップを埋めようと思って、ソロ作品ではあえてダークな曲を作ったんですね。でも、Creepy Nutsではそのギャップを埋める必要はないのかなと思っていて。ルサンチマンを溜めて武器にすると、こういう音楽性になるということを楽しんでもらいたいです。
DJ松永 Creepy Nutsはどんな曲でも作れると思うんですよね。そのうえで、BPMが遅めの曲が主流の時代にあって、『たりないふたり』では一番テンポが遅い曲でもBPMが110なんですよね。そのテンポの速さはライブを意識した結果で。リード曲の『合法的トビ方ノススメ』は一昨年のフジロックに出演したときにフェスでお客さんをノせるために作った曲なんですよ。
R-指定 去年から今年にかけては特に1MC1DJというヒップホップの基本的なスタイルでいかにヒップホップ以外のリスナーを振り向かせるかということを意識してますね。
──『たりないふたり』のリリースツアーに向けてはどんなイメージを持ってますか?
DJ松永 間違いなく楽しいライブになると思います。いろんな仕掛けも用意する予定ですし、感情を全部出して、最後はひとつのストーリーになるようなライブを見せたいと思ってますね。
R-指定 『たりないふたり』の曲をそのまま披露するというより、音源とライブで曲がどう変化するか、そういう部分も楽しんでもらいたいですね。
インタビュー/三宅正一