インタビュー/森 朋之
カーネーションが6月30日(土)、日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを開催することが決定。2016年にアルバム『Multimodal Sentiment』、2017年にアルバム『Suburban Baroque』を発表するなど、ここ数年、充実した活動を続けているカーネーション。結成35周年を記念した初の野音公演でも、ポップミュージックの粋を極めたステージを見せてくれるはずだ。バンドの現状と野音ライブについて、Vo.&Gt.直枝政広に聞いた。
—まずは2017年9月にリリースされた最新アルバム『Suburban Baroque』について聞かせてください。カーネーションのポップサイドが押し出された作品だと思いますが、どんなコンセプトで制作されたのでしょうか?
前作『Multimodal Sentiment』は僕らの根っこにあるニューウェイブの要素が強かったんですが、アルバムのツアーが終わって、次作の話をスタッフとしているとき、無意識のうちに「ポップなものを作ろうと思います」という言葉が出てきたんですよね。意図したわけではないのですが、自然とバランスを取って、自分たちの音楽をコントロールできるようになってきたのかなと。難解だったり先鋭的な部分を押し出すだけがチャレンジではなくて、普遍的なポップを目指すのも自分たちにとっては大きなチャレンジなんです。一度に多くの人の心を掴むのはなかなか難しいですし、カーネーションの音楽がわかりづらいところもあるのですが、いつ入ってもらってもいいように、入り口はきちんと用意しているつもりなので。
—1度聴いただけではわからなくても、数年後に「これは素晴らしいポップスだ」とわかることもありますからね。
そういうこともあるかもしれないです、10年後とかね(笑)。それでも色褪せないものを作っているし、それこそがポップスだと思うんですよね。僕はずっとレコードを聴き続けてますが、数十年前の作品が自分にとっては“今(の音楽)”だったりするんですよ。ずっと昔の“都々逸(どどいつ)”にグッときたりね。もちろん新しい作品のなかにも素晴らしいものはあるし、すべてが並列なんです。そういう自分の感覚をみなさんに理解してもらおうとは思っていませんが、レコードを作る以上は隅から隅まで演出して、きちんと提示したいんですよね。そうすることで“みんなも満足、自分も満足”ということになれば最高ですから。『Suburban Baroque』の楽曲も最高潮と言いますか、良いものが出来たと思っているんです。まず、メンバーが2人[直枝、大田譲(Ba)]になったことが大きいんですよね。音楽の作り方が完全に変わって、曲に合うミュージシャンを呼んでレコーディングしているので。スティーリー・ダン的な発想なのですが、それがようやく板についてきたんだと思います。2人でもぜんぜん寂しくないといいますか(笑)、若いミュージシャンたちが喜んで参加してくれて、気持ちのいい現場が出来るんですよ。僕らはまったく支配的ではないですし、デモテープをもとにしてコミュニケーションを取りながら、ミュージシャンのフィーリングも入れてもらって。それがすごく上手くいってるんです。“ようやく”という感じですけどね。気が付けば結成から34年経っていましたから。
—直枝さん、大田さんの2人体制によるカーネーションの制作システムを構築できた、と。
とは言っても、日々、日記のようにものを作るタイプではなくて、ひらめきを待たないと曲ができないというワガママなところがあるんですけどね。「アルバムを出す」と言いながら、全体像が見えないままに進めるしかないし、曲ができるたびに「誰(ミュージシャン)を呼ぶ?」と検討しているので。もう少し計画的にやれたらいいんだけど、もの作りに対するこだわりがどうしてもありますから。まあ、僕は昔から「運勢的には晩成型」と言われてるんですよ(笑)。『Suburban Baroque』の内容も本当にいいんです、自分で言うのもアレですけど。ようやくアルバム作りのツボを押さえられたのかもしれないですね。
—歌詞もさらに深みを増していると感じました。特にアルバムの最後に収録されている「VIVRE」の最後のフレーズ「この運命を受け入れ 今を/今を生きる」は素晴らしいですね。
「VIVRE」という曲は、ハイウェイを人生に例えているんです。走り続けることが人生だし、そこには“何があってもこの道を行くんだ”という覚悟でもあって。シンプルに人生を歌えた気がしますし、この曲を書けたことは、このアルバムの収穫の一つだったと思います。Soggy Cheerios(直枝、鈴木惣一朗によるユニット)では歌詞を先に書いているんですが、それが一つのきっかけとなって、どちらでも(曲先でも詞先でも)いけるようになってきたんです。普段から自動筆記のようにメモを取っていて、それがアイデアのもとになっているんですよね。曲のきっかけを掴みかけたときに、メモから歌詞のテーマを持ってきたり。そういう偶然性も楽しんでます。
—次世代へのメッセージが込められた「Younger Than Today」も印象的でした。
新しい世代の音楽家に対して、すごく頼もしいなと感じていて。彼らに対する気持ちと昔の自分を照らし合わせながら、気持ちがラクになるような歌を作りたかったんですよね。僕らは何度も壁にブチ当たってきたので…。カーネーションは本当にいろんなことがあったバンドだし、今こうやって続いているのが不思議なくらいなんですが、下の世代の人たちに向けて「悩むこともあるだろうけど、大丈夫じゃない?」ということを伝えられたらいいな、と。
—なるほど。『Suburban Baroque』にも岡本啓佑(黒猫チェルシー)、田村玄一(KIRINJI)、徳澤青弦さんなどが参加していて。みなさん、本当に素晴らしいミュージシャンですよね。
そうなんです。音楽的にもすごいし、それぞれが自分なりの流儀を持っていて。日本の音楽は素晴らしいなと思いますね。僕らも負けたりはしないですけど、それぞれのやり方でドンドン突っ走ってほしいです。
—パワーポップ、R&B、テクノなど、様々な音楽ジャンルが自然に共存しているのもこのアルバムの魅力だと思います。
もともとジャンルに捉われた作り方はしていないですからね、昔から。そのときに流行っていたリズムを取り入れたり、いろいろなチャレンジはしてきましたが、今は周りに流されず、シンプルに「その楽曲をどう高めるか?」という意識でやっています。膨大なレコードを聴いてきましたから、記憶の中にあるサウンド、フレーズが出て来ることはありますが、それは仕方がない。まずは自分が気持ち良く聴けるものを作って、それを提供するという感じですね。まあ、放し飼いみたいなものですね(笑)。それがアルバムとしてどういうものになるかは、賭けですよ。そこで上手く構築できれば、良いアルバムになるんだと思います。
—『Suburban Baroque』というタイトルについては?
これはレコーディングの途中に決めたんですが、ジャケットのデザインが先なんです。このデザインが上がってきたときに全体のムードが決まって、タイトルのアイデアも出て来て。そういうことがおもしろいんですよ。「こんなに素晴らしいパッケージになるんだ」というのが自信になるし、「この雰囲気を目指せばいい」と思えるので。それもセッションですよね。
—ジャケットには、都市近郊のゲームセンターの写真がデザインされています。“アーバン”つまり“都市の近郊”は今も直枝さんのインスパイアのもとになっていますか?
そうですね。僕は東京で生まれて、2才から千葉に移ったんです。その後、西東京に行ったりもしたんですが、とにかくずっと移動の連続なんですよ。車窓から見える風景とともに人生を重ねてきたと言いますか。そこには何もないように見えて、じつはどれだけふくよかな生きる意味が含まれているかわからない。そのことに気付かないままでいるのはもったいないし、僕はそこを歌にしていきたいんです。1994年に出した「Edo River」は、まさにそういうアルバムですよね。江戸川を渡っていると、空気、温度がすべて変わる不思議なポイントがあって。それも移動しないとわからないし、そのことを音楽で表現するのは、自分の身の丈に合っているのかなと。
—ライブについても聞かせてください。昨年は11月18日~12月9日まで全国5箇所で「Live Tour 2017“Suburban Baroque”」が行われましたが、制作スタイルの変化はライブにも影響していますか?
ずっとバンドとして活動してきたわけですが、バンドというのは決められた固定のメンバーでギリギリまでがんばるしかない。わかりやすい形ではあるんだけど、本当に大変なんです。いまの状態がバンドと言えるのかはわかりませんが、その代わりカーネーションという看板を背負った2人がいて、音楽を中心としたやり方になっているということです。すごく不思議なんですが、ゲストのミュージシャンと一緒にライブをやっても、借りてきた音ではなく、ちゃんとバンドの音になるんです。カーネーションの楽曲がメンバーをグッと引き寄せて、ひとつの塊として見せることができる。それはいつも「すごいな」と思いますし、これまでに培ってきたものですよね。カッチリ決めるだけではなくて、フリーフォームなところもあるし、ミュージシャン同士の呼吸のなかで生まれるものもたくさんあって。それは参加してくれるミュージシャンやスタッフのおかげだし、ありがたいですね。
—6月30日(土)には日比谷野外大音楽堂で35周年を記念したワンマンライブが行われます。ずばり、どんなライブになりそうですか?
僕らにとっては大きなイベントだし、いいチャレンジになるでしょうね。ただ、チャレンジだけでは終わらせないという気持ちもあって。80年代、90年代のメンバーにも声を掛けているし、いまのライブを支えてくれているミュージシャン、縁のあるゲストにも出てもらおうと思っているので、楽しんでもらえると思います。
—初期から応援しているファンのみなさんにとっても、たまらないライブになりそうですね。
劇的な瞬間もたくさんあるでしょうね。カーネーションって長いだけに色々なことがあったバンドなので、ファンの方は泣いちゃうかも。でもその姿が見えると僕も「どうしよう」って思っちゃうので、タオルで涙を拭かないで、がんばってしっかり観てほしいです。
—期待しています!今も制作は続いているんですか?
うん、やってますよ。ひとつアイデアがあるので、それを形にしたいな…。まだ詳しいことは言えないですけど、今はすごく調子がいいですね。何て言うか、ずっと船が動いてる感じなんです。自然と景色も変わっていくし、そこでいろいろなことを感じながら、曲を作って。そうやって続けていきたいですね、これからも。立ち止まって考えてる暇はないので。
■「Peanut Butter & Jelly」Music Video
PRESENT
『Suburban Baroque』ツアーTシャツ(M・L)を各サイズ2名様に! (※ご希望のサイズをお書きください)
【Twitter応募方法】
①DI:GA onlineの公式Twitterアカウントをフォロー(https://twitter.com/diga_online)
②こちらの企画ツイートをRT(https://twitter.com/diga_online/status/956724544479248385)
③こちらの企画ツイートのリプライから「カーネーションの音楽・ライブの魅力とご希望のサイズ」を送って下さい!
応募〆切は2018年2月12日(月)23:59まで。 当選者にはDMにてご連絡させていただきます。
【メール応募方法】
以下を明記の上、メールにてご応募ください。 応募〆切は2018年2月12日(月)23:59まで。
※「プレゼントに応募する」ボタンを押すとメールが自動生成されます。
※当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。
《宛先》paper-dg@diskgarage.co.jp
《必須記載事項》希望賞品:【カーネーション】ツアーTシャツ(M・L)、郵便番号、住所、氏名、年齢、カーネーションの音楽・ライブの魅力とご希望のサイズ