インタビュー/金子厚武
また明日から<→(ゴー)>が続いていくような、現行の絵を見せられたら
──まずは2017年の活動を振り返っていただきたいと思います。
今は『20→(トゥエンティ・ゴー)』のための準備期間というか、気合いをためてる段階なんですけど、わりと走り続けた一年で、肉体的には今までで一番精力的に動いたのかなって。『最高築』とか、企画性の強いものをみんなで共有する機会が多くなってきて、一本一本に気合いを入れて臨む感じ。ツアーのように、一本一本同じことをやってレベルアップしていくやり方もあるけど、今年は一本入魂で、<次、次>ってやってきた一年だったなって。
──2月に『エドガワQ2017~ERA最構築~』が開催されて、5月にセルフカバーベスト『最高築』がリリースされました。
海賊ってバンドはメンバーがとにかく多いんですけど、一人一人がかけがえのないメンバーで、あの日はみんな揃ってやれたっていうのがでかかったですね。ヘルマン(Hermann H.& The Pacemakers)の岡本洋平が癌になってしまって、それをみんなで待ちながら、共に支え合いながらやってきた一年でもあるというか、『最高築』っていうアルバムも、“キャノンボール”に唯一全員の音が入っていて、それもずっと洋平くんを待ちながらだったので、ドラマチックでもありました。
──メンバーが全員揃った状態で、20周年イヤーのスタートを切れたのは大きかったと。
そうですね。いきなり洋平くんから電話かかってきて、<カズさん、俺癌かもしれない>って言われたときは、<え!>って感じで、考え直さないといけないことも出てくるかなって思いながらやってて……まあ、達成感はあるんですけど、いろんなことがあり過ぎるなって感じもありました。単純に<20周年おめでとう!>ってわけにはいかない。それがらしいっちゃらしいのかなって思いましたけどね。
──『最高築』は一発録りで作られていて、ミュージシャンとしてのタフな姿勢を示した作品でもありましたよね。
今年は佐野元春さんの『THIS!』っていうイベントで共演させていただいて、佐野さんもめちゃめちゃタフな人じゃないですか?タフな師匠なので、僕はもちろん、バンドメンバーにとってもいい影響になったと思います。
──他に2017年で印象に残ってるライブを挙げていただくと、いつが出てきますか?
5月に渋谷のカルチャーカルチャーで『まちなか』(トーク&アコースティックライブ「まちなかオンリー!最高チック!TOKYOTO」)をやらせてもらったんですけど、20年やってて初めてディナーショーみたいな、みんながご飯を食べながら自分の曲を聴くっていう感じのシチュエーションで。それは印象的でしたね。まあ、お客さんの年齢層も、僕と一緒に上がっていく中で、お子さんを連れてきてる方も増えてきて、いつもより伸び伸びしているようにも見えたので、面白かったです。チャリンチャリンって食器の音が聴こえる中、<どう?>って、オレ、何を訊いてるんだろうなって(笑)。
──「美味しいですか?」みたいな(笑)。8月には渋谷のラママで、同じくデビュー20周年の小谷美紗子さんとの2マンもありましたね。
みーちゃんとはもう付き合いが長いので、音楽だけじゃなく、普段でも阿吽の呼吸というか、<みーちゃんがこう来るなら、こっちはこう>みたいな、リレーションの形ができあがってるんです。ただ、一緒にステージに立つ機会はほとんどなくて、100sでも一回歌ってもらったくらいなんですよね。100sのときはホントに制作期間も含めてずっと一緒にいたので、対バンしたことなかったのが意外で、<やっとだね>って感じでした。この前はサニーデイ・サービスの番組に呼んでいただいたり、今まで一緒にやってきた人たちとの関わりが、また増えた一年でもあったなって。サニーデイもホントに、僕のデビューのときからずっと仲良くさせてもらってるので。
──曽我部さんもホントにタフなミュージシャンですよね。
横を見ると、自分のメンタリティが作品に薄まることなく出続けてる人たちとやってきたなって思います。それはもちろん、みーちゃんもそうだし。
──きっと、中村さんもそうでしょうしね。
そうだったら嬉しいですね。まあ、それも佐野元春師匠みたいなボスがいるのが大きいと思います(笑)。自分では<小学生の頃から何も変わってない>っておっしゃってましたけど、<そういえば、俺もそうだな>って(笑)。きっとみんなそうで、そういう人たちの集まりなんですよね。
──そして、そんな小谷さんやサニーデイの出演も決まっている『20→』が来年1月にZepp Tokyoで行われます。
今にフォーカスして、ここに到達できたってところを見せたいなって思ってます。これまでの活動を振り返るような演出をすることもできるとは思うんですけど、今、自分の中でそれはちょっとエンタテインメント過ぎるというか。それよりも、また明日から<→(ゴー)>が続いていくような、現行の絵を見せられたらいいなって。これまでの20年があって、いまこのステージができあがってるっていう。それは『最高築』っていうアルバムを作ったことと同じ理由ですね。
──さらには、SPECIAL OTHERSの出演も決まっていて、これはちょっと意外でした。
もう10年以上も前のことだと思うんですけど、スペアザがまだデビュー1枚目くらいのときに、レビューみたいなのを書かせてもらったことがあって、<いつか何かやりたいね>って話はずっとしてたんです。彼らの音楽はずっと聴いてて、未だに新鮮さを保ってるって、なかなかないと思うんですよ。インスト中心のバンドですけど、核にあるメロディーが強いから、歌わなくてもいい。むしろ、「ここで歌うか!!」っていうところで歌ってますからね(笑)。あれは彼らの発明だなって。
──ホントに独自のスタンスのバンドですよね。一時期は「インストブーム」みたいな感じもあったけど、もはやスペアザでしかないというか。
そうですね。それって諸刃の部分もあると思うんですけど、彼らは自分たちの信念をちゃんとわかってやってると思います。だから、決してオシャレミュージックではなくて、ソウルミュージックなんですよね。初めて“Uncle John”や“IDOL”を聴いて、<こいつらぜってえ消えねえな>って思いましたもん。それくらい普遍性があるんですよね。