──1stはロールするロックという方向性を打ち出して制作された作品でしたが、2ndは目指したものはありますか?
特になかったですね。1枚目の時はまだ形がない状態からの制作なので、基準がないと収拾がつかなくなってしまうので、方向性をわかりやすく示す意識もあったんですが、今回は何をやってもこのメンツで音を出したら、ROLL-B DINOSAURの音楽になるんじゃないかなって感じだった。「Neverending Dream」を作った時も最初はこの曲をこのバンドでやっていいのかな? 大丈夫かなって思ったんですが、やっていくうちに、何をやってもOKなんだなと思うようになりました。
──1曲目の「Neverending Dream」が始まった瞬間に、ROLL-B DINOSAURが新たな領域を切り拓いていることが伝わってきました。陰影があって、ミクスチャーの要素も備えた最新のリアルなロックだなと感じました。
そう言っていただけると、うれしいですけど、最初はこんな頭の良さそうな曲をやっていいのかなって迷ったんですよ(笑)。なんせ1stで、さんざん、バカだ、アホだ、クズだって、やってますから(笑)。
──それだけ振り幅が広いってことですね。
なにしろ2ndアルバムで最初に録った曲は「アナスタシア」ですからね。
──アコースティックで温かなサウンドが染みてくる、美しくもせつない名曲ですよね。
「アナスタシア」はまずライブでやったんですよ。こういう曲もありなのかなって演奏してみたら、全然ありじゃんってことになって、そこから一気に広がりました。ユカイ君って、ロック・ボーカリストとしての尖った部分の良さだけじゃなくて、まっとうなシンガーとしての良さも兼ね備えているわけで、その部分をああいう曲できちんと出せると、バンドの振り幅の広さを出すのが楽になりますからね。
──「アナスタシア」、ユカイさんの作詞・作曲ですが、これは?
最初、織田さんに聴かせたんですよ。「こんなの、あるんだよ」って。
ユカイくん、5〜6曲は持ってきたのかな。「アナスタシア」はもともとの形で結構出来てたんだよね。
アコギ1本でやったやつをね。織田さんは、自分ひとりで作ろうと思えば、できちゃうんだけど、バンドやりたいんだろうなと改めて思ったね。「こんなのどう?」って。曲の部品をこのバンドに投げると、より高性能なおもちゃになって返ってくるんですよ。いろいろな整備士が集まって、形にしていって、ほっとけば、できあがってくるので、楽だし、うれしいよね(笑)。
──それぞれ2ndアルバムのレコーディングで印象に残った曲を1曲ずつあげていただけますか?
さっきも話に出ましたけど、僕は「Neverending Dream」ですね。演奏はかなり大変なんだけど、すごく燃えるし、演奏していて、後半にいくにしたがって、感動してしまうんですよ。同じことやれっていわれると、逆に難しいぐらい、いろんな細かいことをやっていて、ドラマーとしてやりがいのある曲です。いろんなものを引きだしてもらえたので、ライブも楽しみですね。
俺はちょっと恐怖心もあるけどね。俺がイントロでとちったらどうしようかとか、立って弾かなきゃダメなのかとか(笑)。
──ユカイさんは1曲あげていただくとすると?
曲? 何やったかな。
──ユカイさん作詞作曲の「カサノバの恋のてほどき」はどうですか? 聴いてて、あまりにみなさんが楽しそうにコーラスしているので、こっちまで顔がほころんでしまった曲です。
コーラスしながら、笑っちゃいましたよ(笑)。
これも部品を放り投げた曲。最初はただのロックンロールの曲だったのが、70年代風のキャッチ―で魅力的なロックになって返ってきた。歌詞のでたらめさは織田さんが書いた「ガンガン」の影響だろうね。まずは新曲をライブでやろうと言いながら織田さんが失踪する事件があって、歌詞がなかなか上がらなかったんですよ。俺は歌詞もメロディも覚えるのに時間がかかるので、まいったなと思ってたんだけど、ライブ前日にあがってきて、歌ってみたら、あっと驚く新展開で、歌詞で曲のイメージがドンドンと広がった。
──どうイメージが変わったんですか?
織田さんの曲って、織田さんが仮歌を歌っているから、かっこいいんだけどイメージが湧かなかった。ところがガンガンという歌詞が付いて、イメージがガラッと変わった。いいじゃん、これはいけるじゃんって。多分、みんな、あれからそんな気持ちになったんじゃないかな。で、「ガンガン」をライブでやったら、評判も良かった。こういうバカな歌って、ROLL-B DINOSAURにぴったしだなって、「ガンガン」のおかげで思いっ切りバカになって書いて、「カサノバの恋の手ほどき」ができあがった。だから「ガンガン」の影響大です。
いやいや、バカさでは「カサノバの恋の手ほどき」がだいぶ上を行ってるよ(笑)。俺なんか、つい論理的な整合性を求めるあたり、まだまだちっちゃいなって思ったもん(笑)。
──ASAKIさんが作曲した「MY BABY BLUE」はハードさとポップさとが見事に共存しているかっこいい曲です。これは?
2ndアルバムを作るにあたって最初に作った曲なんだけど、「メロディーの付け方が甘い」って織田さんに怒られて。
怒ってないよ。勝手に直しただけ(笑)。
ユカイさんに「ASAKI、ロックだな」って言われて、うれしかったですね。
こういう曲は織田さんでも俺でも作れないからね。
この曲、不思議な魅力があるんですよ。音楽的に言うと、ありえない構造になっているんだけど、やってみると、成立している。なんだ、これ?って(笑)。
歌詞がまたうまくはまってるんだよね。織田さんが「ASAKIの曲は歌詞をつけやすい」って言ってたけど。
ASAKIの曲って、イメージとして、確固としたテーマがある感じがあるからね。
それは多分お酒の力ですね(笑)。
──コーラスも効果的です。
コーラス録りでボコーダーを入れています。新兵器として新しいエフェクターを買ってきたので、ギターでやろうとしたら、和音が足りないということになり、俺はコーラスだけに専念して、織田さんがギター弾くという二人羽織みたいなパターンでやることになって、実際にやってみたんですが、だったら鍵盤でいいんじゃないかってことになった。で、鍵盤でやり出したんですが、レイテンシー(遅延)が出るので、打ち込みがいいんじゃないかって、さんざん試行錯誤しながらの制作になって、なかなかおもしろかったですね。この曲だけじゃなく、全曲そうなんですけど、ギターの音作りもすごい贅沢にやらせていただきました。織田さんも僕もエフェクターを何十個も並べて、ああでもない、こうでもないって朝までずっとやったり。今の時代にここまでスタジオで贅沢に音作りできることはあまりないので、ありがたや、ありがたやって、終わってほしくないレコーディングでした(笑)。
──JOEさんはレコーディングで印象的だった曲は?
「石ころの唄」ですね。曲から歌詞から全部が好きで、染みこんできました。
意外だね。逆にJOEの世代ぐらいだと、こういう曲調って、なじみがないから新鮮なのかもしれないね。実はこの曲はかなり昔に作った曲なんですよ。俺が18か9の時に作った曲。
俺が生まれる前ですよね。
全然前だ(笑)。
最初、織田さんが「こんな曲を昔作ってたんだよね」って言って、自信なさげに弾いてたんですけど、「めっちゃ、かっこいいじゃないですか。これ、やりましょうか」って。
次のページへ
織田哲郎が選ぶ1曲は?
(最終ページにプレゼント情報あり)
織田哲郎が選ぶ1曲は?
(最終ページにプレゼント情報あり)