──なるほど。では2017年はRADIO FISHとしてはどんな攻めに出た年だったんでしょうか。
いやそれが、僕は1月に第二子が生まれるというので、紅白から妻の実家がある白銀で静寂に包まれた岩手に行ったんですけど。もうそこでの温度差が凄すぎて(笑)。精神的に参ってましたね。バランスが取れなくて苦しかったです。1〜2月あたりは疲弊してましたね。
そうだね。
紅白まで出ると、その余波の厳しさも感じてました。「あそこまでいくともう“音楽”だから」って、お笑い番組とか断られちゃうことがあるんですよ。
──「お前らお笑いじゃなくて音楽だろ?」ということですか?
ええ。お笑いからの反感というんですかね。
──ああー。なるほど。
僕らは「どっちなの?」というところで「歌ネタです」、「音楽です」っていう曖昧なところでやってきたんですけど。お笑いからは「音楽だろ?」というので逆風が強くなり、音楽は音楽でね。次の新曲を出せばすぐに音楽番組に出られる訳でもないというのを改めて思い知らされ。
──ああ〜。4月に新曲「進化論」を出したときのことですね?
ええ。ハイブリッドであるが故に、隙間産業で奇襲攻撃をかけた分「何度も奇襲されても困るんだけど」と、両方の業界から逆風を感じた上半期ではありました。演芸界も音楽業界もたぶん、僕たちに荒らされたという気がしたんだと思うんですよね。なので、いまは演芸界にも音楽業界にも貢献していきたいという姿勢をちゃんと出そうと思いまして。
──ほお!
今回の全国ツアーは、いろんな人との繋がりを大事にしようと思ってます。
──それはどういうことですか?
コラボ曲をたくさん出そうと思ってるんですよ。「RADIO FISH、こんな人とやるんだ!」というのを1曲1曲これからニュースとして発表していきます。その曲は「歌としていいよね」というのと「パフォーマンスとして面白いよね」という感覚。その2つを両立したものにしたいというのを僕はまだ諦めていなくて。必ずしも「変な歌だからネタなんだ」「いい歌だから笑えないんだ」ということではないと思うんですよ。「いい歌だな。でもパフォーマンス見たら笑っちゃうんだけど」って。そういうバランスのものを模索していきたいと思ってます。諦めずに。
──いいですね。今後もハイブリッドならではのスタンスを楽曲でもちゃんと狙って、探っていこうと。
ええ。それをやることで、演芸界と音楽業界、両方の“正門”を叩いてドアを開けられたらいいなといまは思ってます。
──あれだけのヒットを作っちゃうと、やはり次は難しいものですか?
そうですね。でもそこは「次どんな曲を作るかとか、あんまり考えすぎないほうがいいよ」と嫁にいわれて、たしかに僕はプロの音楽プロデューサーじゃないんだし、好きな曲を作ればいいんだっていう風になりました。いけてるかいけてないか、売れるか売れないかはさておき、「自分はこういうのが好きだな」「こういうのを作りたいな」というのが作れる人と一緒に作る。それが大事かなといまは思ってます。「PERFECT HUMAN」作るときは、もう破れかぶれで。「もういいよ、なにが売れるかなんて分かんないから」って自己礼賛の曲を作ったんですよ。
相方をめちゃくちゃ褒め称えるというあの歌も、元をたどれば、“武勇伝”というネタと変わんないんですよ。あのネタも「あっちゃんかっこいいー」って、相方を大絶賛してるだけ。あれ自体もリズムに乗せて相方を褒めてたんですよ。“武勇伝”は字数があって。あれは、445にのせてやってたんですけど。その武勇伝をトラックにのせて、かっこよくちょっと長めにやってみたら「PERFECT HUMAN」のラップみたいなものになったんです。
だけどそれが当たると、どうしてもそこに引っ張られるんですよ。だから、そのあとも自己礼賛の曲をいっぱい作ったんですけど、そういうことでもないんですよ。だんだん自分もNAKATA礼賛曲から離れたくなっちゃって(笑)。1回離れてもいいかなと思ってます。
──おぉー!!
それは、“武勇伝”作った後も、全部ネタが武勇伝になっていったんですけど。そこからものすごい離れて、回り道して初めて見つかるものもあったりしたので。全然違うところを散歩してみるのも大事かなと思ってるんです。
──さっきおっしゃってたコラボ曲というのは、つまりその当時やってたお散歩的な発想なんですね?
ええ。それで、表現することは続けようと。ただ、続けるためにはお金も必要で。音楽はランニングコストがかかりますから。芸人はそれがないですからね。でも、僕らの強みは“兼業アーティスト”というところで。音楽を作っても、マイナスにならなければ続けていけるんです。なぜなら、僕らは各々それ以外で食っていけてるんで。だから、ものすごい粘り強く次の当たりを探せるんですよ。どんな一流アーティストでも、1つの波が来た後、次の波が来るまでは7~8年かかってますから。そうやって、いまは自分を励ましてます(微笑)
──でも、オリラジとしては10年間で3回も波が来てますからね。最初が“武勇伝”で。
その後がチャラ男とインテリ。
──そして「PERFECT HUMAN」ですから。かなり短いスパンで波が来てるんですよ。
そうですね。でも、だからといってそのスパンを短くできるかっていうとそうではなくて。同じやり方が毎回通じる訳じゃないですし。これまで見つけた3つもそれぞれまったく違う方法論で見つけてきてるので。この先RADIO FISHがどう変化していくのかは、やってみないと分からないです。新しい曲も作ってますけど、いま毎日ユーチューバーとしても活動してるんですよ。
──見ました!あれはなんなんですか?
みんなにそういわれるんですよ(笑)。でも、僕としては信じてるものがあって。こっちだ、と。こっちをみんなで探しに行こうと。アーティストはあんなのやらないじゃないですか?お笑い芸人も毎日更新であんなに積極的にユーチューバーと絡んでYouTube頑張ってる人なんていないですから。しかも、なに一つお金になってないですからね。あれは。YouTubeもそうですけど、RADIO FISHはどんどん大きなプロジェクトになっていってますけど、お金にはならない(きっぱり)。お金にはならないけど、夢はあるんですよ!「PERFECT HUMAN」がバーンとヒットしたことで、その後仕事が増えた人が多くて。それは、RADIO FISHが経済的なことを度外視して作ってきたからというのがあるんです。だから、その感覚だけは絶対に忘れちゃいけないなと思ってて。目先のお金だけを見ちゃうと可能性が狭まるので。どうしても途中でお金が欲しくなるんですよ。全然お金にならないと(笑)
──やってる方も対価がないと「この動画、お金にならないのになんで毎日やんなきゃいけないんですか?」って思っちゃいますもんね。
そういうときは「いや。だけど、これはいまお金になるんじゃなくて将来の投資だ」と。そのためにずっとやり続けるんです。