JET SET BOYS、始動。高橋まこと(Dr/ex:BOØWY)、tatsu(Ba/LÄ-PPISCH)、友森昭一(Gt/ex:AUTO-MOD、REBECCA)、椎名慶治(Vo/ex:SURFACE)という、日本のロック/ポップスの歴史に名を刻む男たちが、それぞれの夢と人生をかけて集まったスーパーバンド。ファースト・アルバム『JET SET BOYS』を6月1日リリース、6月4日の東京・新宿LOFTを皮切りに、7月3日の東京・EX THEATER ROPPONGIまで、初のツアーも決まった。バンドの成り立ち、目指す音、そしてバンドの未来とは?高橋まことと椎名慶治が、その内幕を語りつくす。
インタビュー/宮本英夫
高橋まこと 椎名が宣伝部長なんで。何でも聞いてください。
椎名慶治 いやいやいや!俺ですか?
──では宣伝部長!まずはこの二人の出会いから。
椎名 実はそんなに昔でもなくて、3年ぐらい前かな。まことさんのマネージャーを通して、僕の『I & key EN』のCDを渡したのが最初なんですよ。そのあと、布袋さんがイギリスから日本に帰ってきて、品川ステラボールでライブをやることになった時に……。
高橋 ファンクラブ限定のね。
椎名 そうそう。まことさんがサポートすることになって、僕も見に行かせてもらって、楽屋でご挨拶させていただいたのが初めてです。それがきっかけで、まことさんがやっている東日本大震災の復興イベントに誘ってもらって。逆に“まことさん、僕のも手伝ってくださいよ”っていう感じで、僕の『I & key ENⅡ』に参加してもらった。
──そしてそこから、バンド結成に至るのは……。
椎名 そこからは、とても僕の口では言えないんですよ。なぜそこで、まことさんがバンドをやりたいと思った時に、僕に声をかけてくれたのか。いつから“バンドをやりたい”という芽生えが、まことさんの中にあったんですか?
高橋 そうだねぇ。ずっと何かやりたいとは思ってたんだけど、“高橋まことソロ”みたいなのは、あんまりできないから。単純に、4人の中の一人になりたかったんだよ。自分でギターを弾いて歌ったこともあるけど、バンドが一番しっくりくるんだなという思いがあったんだよな。性に合ってるんだよ。で、それをやるにはどうしようかな?って考えて、“ボーカルは椎名がいいんじゃない?”って。ギターは、震災復興のシングルを作った時にやってもらった友森がいいなと。昔から知ってるんで。その時たまたま、椎名のところで友森が弾いてたのね。
椎名 不思議な縁ですよね。僕はまず間接的に、マネージャーさんから聞いてたんですよ。“まことがもう一度バンドをやりたいと言ってるんですよ”、“あ、そうなんですね。応援しますよ”とか言ってた(笑)。僕がやるとは思ってなかったから。そしたらそのあと、“まことが“椎名はどうだ?”って言ってるんですけど”って。いやいやいや、僕なんか滅相もないですよ!って言ってたんですけど、そのあと直接“バンド組まねえか?”って電話をいただいたんで、これはシャレじゃないぞと。逃げ場ねえぞと。それで“やります!”と言ったんです。
──そこにtatsuさんが加わって、4人のメンバーが揃った。
椎名 3人で何回か打ち合わせをしてた時に、ロックだけじゃなくてファンクでも何でも、ノージャンルでいたいよねという話をして。じゃあベーシストも、どんなジャンルでもできる人がいいねと言った時に、まことさんと友森さんの共通の友人としてtatsuさんの名前が挙がったんですね。僕はお会いしたことなかったんですけど、ぴったりでしたね。レコーディングでtatsuさんのプレーを聴くと、tatsuさんでよかった!と思いますから。
──ちなみにJET SET BOYSというバンド名。誰がつけたんですか。
椎名 これは最初から決まってました。まことさんのマネージャーが言いだして、それを見てみんなが“いいな”と。第一案ですよ。いろんなところに音として飛んでいくという、意味もいいなと思ったんで。しかも、言い方は悪いけど、いい歳のオヤジたちが、ボーイズってつけるところが面白いなと。それにしても、まことさん、60歳にしてまたバンドを組みたいという意欲とか、タフですよねぇ。
高橋 いやぁ、わかんねぇけどさ。震災復興でチャリティとかをずっとやってきて、別にこのままでも普通に音楽はできないことはないんだから、とか思ってたんだけど、何か、もう一回ぐらい行ってもいいかなっていうかさ。“一生ドラム叩くからな”って言ってる以上、モチベーションを上げるためにも、やっぱりバンドのほうがいいんだよ。
椎名 ああ、そういうことですね。なるほど。
高橋 あともう一つはね、ここ数年なんだけど、60に届かずにいなくなっちゃうミュージシャンがけっこう多いんだよ。だから、動ける奴がやらなくてどうするの?っていうのが、俺の中にあったんだよね。たとえば佐久間(正英)さんとか、シーナ&ロケッツのシーナさんとか、俺たちが昔世話になってたディレクターとか、みんな60ぐらいだったから。グサッとくることが多かったんだよ、ここ数年。俺も60超えたんだから、もうひと頑張りしなきゃなって。
椎名 それでも、甘やかす気がまったくないところがこのバンドの面白いところで。エイトビートが代名詞じゃないですか、高橋まことの。なのに、全然エイトビートじゃない曲ばっかり(笑)。作曲のきっかけは友森さんが、“こんな曲作ったんだけど”って持ってきて、そこに僕が♪ラララで歌を乗せる。その時のノリがもうエイトビートじゃないんですよ。エイトビートでもすごく速かったりして、BPM180とか190ぐらい。
高橋 年寄りにはキツいよ(笑)。まあでも、できたからな。
椎名 できてますね。今まで僕が知っている高橋まことをいい意味で壊せるというか、後輩たちがいじってる。それがすごく面白い。これから先、ツアーで全曲叩くわけじゃないですか。1曲でハーハー言ってるのに、つるっと叩かせる(笑)。ここからが勝負ですよね。
──まことさんには、やりたい曲のイメージはあったんですか。それとも、みんなが出してくる曲が良ければそれでいいという感じ?
高橋 俺が叩けりゃいいやって感じ(笑)。でも、そこまでひねくれた曲はないから。
椎名 十分ひねくれてますよ、そうは言っても(笑)。聴きやすく、でもひねくれてる。そんな曲ばっかり。
高橋 レコーディングも、アナログで行こうっていうノリだったな。クリックも、最初のとこだけテンポを聞いて、演奏に入ったらクリックなし。一発録り。面白かったよ。
椎名 僕だけ現代っ子なんですよ(笑)。キャリア18年だから、アナログで録ったことのない世代。やり直しがきく世代なんです。一発でボーカルを録ることはなかなかないんですけど、やっぱり勢いのある曲って、小分けにして録ると勢いがなくなっちゃうんですよ。
高橋 そうなんだよな。
椎名 今日もレコーディングしてるんですけど、とりあえず全部歌って、どうしても直したいところだけを録り直す。そういうやり方は初めてですね。
高橋 楽器も、自分たちが演奏する以外のものは入れない。どこかで潔くしておかないと、どんどんオーバープロデュースになっちゃうんだよ。どうせライブやる時に、それはないんだから。俺は基本的に、そういうバンドでずーっとやってきたからな。BOØWYなんか、キーボードと同期とかボコボコ入ってるくせに、ライブやる時は楽器3人しかいないから。それでもちゃんとできてたというのが、俺の中にあるから。たぶんできるだろって。
椎名 そう言われたら、そうですねって言うしかない(笑)。素晴らしいです。
──ファースト・アルバムは『JET SET BOYS』。どんな作品に仕上がってますか。
椎名 今までまことさんがやってきたプレースタイルだけじゃなくて、“新たな高橋まことを引き出せたらいいよね”というのが、僕ら3人の仕掛けでもあるので。“まことさん、こんなのもやるんだ”というプレーもあるだろうし、それは友森さん、tatsuさんのプレーもしかり。椎名慶治も、ソロだけじゃ絶対聴けなかった新たな椎名慶治に出会えるし、JET SET BOYSだからこそできたサウンドになってます。
高橋 BOØWYとかDe-LAXとかで、やったことのないリズムがあるからね。今までは、“このバンドにこの音は合わないから。こっちだけやってていいよ”というのが多かったんだけど。
椎名 JET SET BOYSにはそれはない。ロック、ラテン、ファンク、何でもやります。だけどちゃんと芯が通っていて、アルバム通してとっ散らかったものになっていない。それは簡単に言うと、高橋まことが叩いてるから。友森昭一とtatsuが弾いてるから。椎名が歌ってるから。そこにほかの音が足されることがなく、4人の音だからこそブレないので、自信持ってます。初めは“大丈夫か?まとまるのか?このバンド?”と思ってたけど、ふたを開けてみたら、このバンド最強じゃね?と今は思ってるんで。
──そしてリリース後には、いよいよファースト・ツアーが始まります。
椎名 まことさん、友森さん、僕の3人は一緒にステージに立ったことはありますけど、tatsuさんも入れて、しかもオリジナルの曲でというのは、まだやったことがない。でもイメージは湧いてます。すごくシンプルになると思う。あとは、高橋まことがどこでネを上げるか。“ちょっと待ってくれ。ここでMC入れてくれ!”って(笑)
高橋 救心、救心(どうき、息切れに効くお薬)!って。
椎名 そういうの、全然ありだと思ってるんで。それぐらい、つらいライブをやりたいです。休憩なしで、勢いで行きたいです。
──ツアーは5か所ですか。
椎名 そうです。東京で始まり東京で終わる。新宿LOFTから始まるのは、スタッフのこだわりですね。自分のバンドで、高橋まことがLOFTに帰ってくるという。あとは、福島ですね。ここはまことさんの出身地ですから、やらないと。
高橋 夢だけど、武道館でもやってみたいよね。
椎名 おお~!
高橋 武道館でやると、3バンドで武道館になるんだよ。BOØWY、De-LAX、JET SET BOYSと。
椎名 でけーな、夢!いいですね!
──いいですか?それ書いちゃっても。
高橋 “やってみたい”だから。いいんじゃない?
椎名 でもそういう気持ちがなかったら、バンドを組む意味がないですからね。でも俺、ソロでも武道館に立ちたいと思ってるんで、俺が先に立ったらすいません(笑)。でも、そうですね。目指しましょう、武道館!
──めちゃめちゃ楽しみにしてます。最後にファンの方へ、メッセージをぜひ。
高橋 まだみんなに音を聴かせてないし、どんなバンドなの?というところをツアーで見てもらって、なおかつ、そこを凌駕するぐらいに頑張らないとな。“おー、すげえ!”って言われてみたいし、言わせないとダメかな。“あー、こんなもんか”じゃダメ。
椎名 僕もそれは一緒ですね。“JET SET BOYSのボーカル、椎名じゃなくてよかったんじゃね?”と言われるのだけはイヤだから。やっぱりまことさんの前にいるのは氷室京介だろ、というのは、そこはどうしてもぬぐえないけど、そこで負ける気はないし、負けたくない。その意欲が大事だと思うんですよ。結局負けたとしても、それはいいんです。でも最初から負けてもいいですと思ってやってるようじゃ、話にならない。なので、“まことさんの前に立つボーカルとして、椎名は似合うね”って、少しでもお客さんに思ってもらえるように。俺も頑張っていきますよ。