最小限度でできることはないかと模索してでき上がったのが、このスタイルだったんです(花房)
──そもそもenraは、パフォーマーのジャンルが、ダンス、バレエ、新体操、中国武術、ジャグリングというふうにバラバラですよね。
花房 enraを結成する時に、twitterとかでパフォーマーを募集したんですけど、まったくそこは意図してなくて。最初は、オーディションを受けに来るのはストリート・ダンサーばっかりだろうなと思ってたんですよ。
ですけど、ほんとにいろんなジャンルの人が応募して来てくれて。それで「あ、この人と一緒に作品を作ってみたいな」って思った人が今のメンバーなんです。
直感で「この人」って選んだら、たまたまバラバラになっちゃったっていう感じなんですよね。なのでジャンルで選んだわけではなく、すごい人たちとやってみたいな、っていう感じでしたんですよ。
──そもそも花房さんは、CMを作っていた映像作家なんですよね。
花房 映像作家っていうよりは、デザイナーですよね。テレビ番組だったりとか、ゲームムービーだったりとか、CMだったりとか、企業の新製品を紹介する映像だったりとか。完全にCGデザイナーです。
職業的に映像を作っていたんですが、それだけだとおもしろくないので、絵を描いたりとか、個人で作品を作ったりとかは昔からやっていたんです。その中で、VJをやっている時期もあって。VJって、事前に緻密に映像を作っていくというよりかは、その時の雰囲気だったりとか、DJの音に合わせて現場でどんどん映像を切り替えていく方法で。
みんなVJっていうとコンピューターだけを使ってやるんですけど、アナログ映像も作ったりとか。enraでもやってるんですけど、たとえば下から光を照らして、上にカメラを設置して、音に合わせて手を動かして光の形を変えるとか。フラスコの中に紙切れをいっぱい入れて、それに空気をシューッて当てると激しく回る、音に合わせてそれをやってプロジェクターに映したりとか。
そうやって、お客さんがいてライブで何かをしていくのがおもしろいなあ、それをもっと発展できないかな、と思ってる時に、enraの前に組んだダンサーと出会って、ふたりで始めたんですね。
それで、最小限度でできることはないかと模索してでき上がったのが、このスタイルだったんです。音楽とプロジェクターと壁さえあればできるっていう。それでやっていたんですけど、ひとりだけだと表現が固まってしまうんですよね。その人のパーソナリティに合ったものしか作れないので。複数人いて男女混合だと、表現の幅が無限にあるなと思って、改めてenraを作ったんです。
でも、最初の1年ぐらいは本当に仕事がまったくなくて。しかも、作品を作っていくこと自体が、最初はすごい大変で。どういうふうに組み立てていけばいいのか、っていう──。
──作品を作る前に、作品を作る方法から作っていかないといけなかった。
花房 そうなんです。ジャンルも違うし、パフォーマー同士の作り方も違うし、それ自体を僕も把握していないし。複数の人をステージでどう動かせばいいのかもわからないし。最初のうちは作品を作るのも、すごい時間がかかってしまって。で、できたものも、「うーん…」っていうようなもので。
最初はほんとに仕事なかったですね。でも2作品目を作った時に、なんとなく方向性が見えてきて。ひとつ目の作品は、「お客さんこういうの好きだろうな」みたいなところで作っちゃったんですよ。でも、そいうのってやっぱり評価されないんです。それはよくない、本当に自分たちが作りたいものを作ろう、っていうのが2作目だったんですね。
で、「これはいいかも」と思って、Youtubeで公開したところ、海外から問い合わせがあって。そこから徐々に、海外の方で名前が広がって行ったんです。で、女性ふたりの『pleiades』って作品が、アメリカ版のハフィントンポストで取り上げられて、一気に広がりました。
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