──ライブではChageさんが弾き語りで歌っていましたが、実際に観客の前で歌ってみて、感じたことはありましたか?
ファン・ミーティングでこの曲を歌った時に客席の空気が一変していくのを感じたんですよ。そうか、この曲はみんなに届いていく曲として大きく育っていくんだろうなってことは肌で感じました。レコーディングするにあたって、サウンドを厚くしていったんですが、アレンジをやってくれた等くん(渡辺等)も素晴らしくて、原型を変えずに、見事に広がりのあるアレンジをしてくれました。
──渡辺さんにイメージのヒントとして伝えたことはありますか?
僕が言ったのは一つだけですね。「ビートルズの『ロング・アンド・ワインディング・ロード』に通じるものを感じるんだよね」ってこと。そしたら、等くんなりのやり方でストリングスを入れてくれた。最初に僕がアコギ1本で歌っていたので、あえてアコギを1本も使わずに、ブズーキという弦楽器で入れてくれたり。
──温かな音色のイングリッシュホルンも効果的です。
イングリッシュホルン、なかなか持ってこないですよね。さすが、アレンジの大魔術師(笑)。僕のソロの弾き語りの「たった一度の人生ならば」と等くんがアレンジしてくれた「たった一度の人生ならば」という二つのバージョンがあるおもしろさもある。
──ミュージック・ビデオで、Chageさんがアカペラで歌う場面も見事でした。川のせせらぎや草を踏みしめる音も音楽と一体となって、溶けあっていて、素晴らしいです。
監督からいきなりロケの現場で「ここでアカペラで歌ってください」というオーダーがあったんですが、できあがってみて、びっくりしました。こういうことだったんだなって。ミュージック・ビデオもジャケット写真もそうですけど、みなさん、僕がこうなればいいなあと思っていた同じ方向に向かって、制作に関わってくれた。この楽曲に携わったすべての人の思いが凝縮されてリスナーに届けることができたので、作り手として冥利に尽きる楽曲になりました。
──どんなことをポイントにして、レコーディングにのぞみましたか?
真空管マイクにこだわらせてもらいました。真空管マイクってとてもデリケートな機材なので、すぐに機嫌が悪くなって、真空管の調子が悪くなったり、ノイズが入ったりするんですよ。でも音が温かくなるので、この曲に絶対合っているだろうなと思って、使うことに決めました。機嫌の変わりやすさすらもいとおしくなってきて、そのマイクに語りかけるように歌っていました(笑)