──赤字になった原因とか理由って、いま振り返るとどの辺にあると思いますか?
麻生 誤解を恐れずにいうとブッキングです。
──それは、その年のお客さんのニーズと微妙にマッチしていなかったとか?
麻生 どんなに素晴らしいアーティストに出演いただいていても、そのキャパシティに見合うアーティストが出演しないと上手くいかない。もちろんそれだけではダメで、アーティストがやりたかった組み合わせ、お客さんが観てみたかった組み合わせ、それらの想像を越える組み合わせがとても大切で、その全てが交わってブッキングって決まるんです。そこに加えて、フェスのコンセプトやカラー、フェスへの熱量、場所の要素、天候の要素などがあります。でもそれらは集客というところで言うと二の次なんです。もちろん主催者はそれぞれの想いやコンセプトを何よりも大切にしていると思います。それがないとフェスの魅力なんてないですしね。
──それでも毎年続けていく醍醐味というか、フェスを“続ける理由”って何なんでしょうか?
麻生 色々ありますが、一番はそこに”想像を超える感動”があるからですね。頭の中が真っ白になるくらいの感動。それを体験したからこそ、また更新したいって想いがあるんです。そして、しんどい時もたくさんあるけれど、そんな中での色んな人の笑顔や「ありがとう」って言う言葉が次へと繋げてくれます。そういう”感動の交差”する空間を作れるって本当にかけがえがない。僕の仕事はイベンターとかプロデューサーとか言われるんですけど、そういう職業を越えて、生きるっていうことにダイレクトに関わってる気がします。
あともうひとつは、『SYNCHRONICITY』ってかなりストイックに続けてるんで、評価されるべき素晴らしい音楽、今本当に聴いてほしい音楽をきちんと意識して届けたいっていう想いがあります。最近は若くて面白い音楽が多いから、彼らをきちんとピックアップしてシーン全体を盛り上げていかなきゃって思う。音楽は時代とともにありますからね。
──では、毎年のアーティストのチョイスに基準っていうのはあるんでしょうか? 開催毎のテーマとか。
麻生 開催毎の明確な基準ってないんです。ただやはり海外の人にすげえって思ってもらえる日本のアーティストを紹介したい。あとは時代性を意識しつつ、ジャンルも世代もクロスオーバーできるように考えてます。そのとき聴いてほしい音楽もすごくあって、もう11年続けてるので、そういうのって直感というか”肌感覚”になってますね。
──今のうちに聴いておいて欲しい、みたいな?
麻生 そうですね。タイミングって本当に大切で、機会を失うといいものも伝わらなかったりしますから。今回は『After Hours』っていうのが出発点でした。それもタイミングだと思うので、それとともに、いまの若手の音楽をしっかりバックアップしたいなって思ってます。それが『SYNCHRONICITY』の役目の一つでもあると思う。
──『After Hours』チームと若手を比べると、ジャンル的にはバラバラに見えますが、全体的には違和感を感じない。それは『SYNCHRONICITY』自体に個性というか、イメージが出来上がり始めてるのかなと思いました。
麻生 そんなイメージが出来上がっていれば嬉しいですね。時代とともに個性やイメージって変化させてきてるんです。音楽性で言うと、最初は今よりダンスミュージックの要素が強かった。でも途中からもっと表現そのものにフォーカスしていったんです。色んな振れ幅がありながらも、一貫してるっていうのが大切だと思ってます。
O-nestも『New Action!』っていう他のチームに入ってもらったので、意外性のあるメンツになったと思います。突っ込んだ話をすると、最初は『SYNCHRONICITY ’16』を4会場でやろうって1年くらい前から決まってたんです。そんな中でenvy、MONO、downyから「新しいフェスを立ち上げたい」っていう相談があって進めてたんですけど、今年は単独開催のスケジュールが合わなかった。そこでキックオフも兼ねてコラボレーションしませんか?って提案して、それが実現したんですよね。『After Hours』にとってのプロモーションにもなるし良かったと思ってます。envy、MONO、downyという素晴らしいアーティストと熱いミーティングを重ねてきたので、本当楽しいです。
都市型フェスの優位性とは?