テキスト/宮本英夫
写真/堀清香
梁 邦彦とDEPAPEPE。片や、80年代半ばからの浜田省吾のツアーバンドを始め、数多くのライブやレコーディング経験を持ち、96年のソロ・デビュー後は映画音楽や大規模イベントの音楽監督、現在は2018年平昌オリンピック開閉幕式音楽監督を務めるなど、日本と韓国を中心に、グローバルに活躍する音楽家。片や、2002年の結成以降、インスト音楽の枠を超えるポップな音楽性で幅広いファンの支持を受け、最新アルバム『COLORS』をリリースしたばかりのアコースティック・ギター・デュオ。世代も音楽性も異なる両者ががっちりタッグを組むスペシャル・ライブが、この夏日本と韓国で開催されることが決まった。実は3人はこの日が初対面で、はにかみながらのトーク・セッション。果たしてこの日のテーマである“ライブのサブタイトルを決める”というミッションは達成されるのか?
梁 邦彦 DEPAPEPEの音楽はすごくたくさん聴いてるんですよ。移動中にちょうどいいんですよね、気持ちよくて。メロディが一発で飛び込んで来る感じがあって、それも1曲だけじゃなくて、全部がそうでしょう。この間出た『COLORS』を聴かせていただいても、よくこれだけ曲の輪郭をちゃんと作れるなって。
徳岡慶也 お恥ずかしい。曲作りって、どういうふうにやられてるんですか?いろんなパターンがありますよね。
梁 たとえば映画音楽とか、オーダーがあるものと、ソロの場合は違いますね。ソロの場合は、自分が今何を考えていて、何をしたくて、どんなところに向かっているのか、そういうことを考えながらじっくり作る感じ。僕の場合ソロアルバムはそれ程締切りきつくないので、時間使って作り込んで行く。それがたまって、じゃあアルバムを出してコンサートをやりましょうという感じ。逆に映像音楽とか、でかいイベントの音楽は“こうしてほしい”という明確なコンセプトと締切があるから、それにどう立ち向かうか。締切りまでの間に、互いのやりとりの中でどうやって着地するか。たとえばデモを作ってくれと言われて、100%精魂込めて作って、それがNGだと言われたら困っちゃうでしょう。
徳岡 そうですよね。こっちはいいと思って出したものが、全然響かなかったりとか。
梁 そうそう。かなりへこむよね。
徳岡 崩れ落ちそうになります(笑)
梁 だから曲を出す時には、自分から言わないようにしてるの。「これはいい曲です」とは言わずに、できるだけ抑えて。
徳岡 「こんなんあるけど」みたいな。
梁 そうそう(笑)。言いたいんだけど言わずに、反応が良ければ続けようみたいな。もちろんそこに持って行って出すぐらいだから、自分ではいいと思ってるわけじゃない?そこが向こうに響きそうだ思ったら話を進めるし、響かない場合は早くあきらめる(笑)。でもそれは映像音楽の依頼とかの話で、DEPAPEPEはアーティストとして、たとえば『COLORS』というタイトルを決めて、このアルバムはこういうものにしようという、明確なイメージがあるんだよね。
徳岡 そうですね。僕らもデビューして12年たって、ある程度僕らの思うようにやらせてもらえるようになってきたんですけど。そうなったらなったで、何がダメかをあまり言ってもらえなくなって、逆に不安になったりとか。自分だけしかいいと思ってないかな?みたいな。
梁 僕がうらやましいのは、二人いるからそういう話ができたりするでしょう?曲のモチーフを持ち寄ったりとか。曲はセッションしながら?
三浦拓也 メロディはほとんど徳岡さんが作ります。で、僕がいいと言ってるのに「いや、違う」とか言い出すこともあって、よくわかんないんですよ。じゃあ何で聴かせたんやって(笑)
梁 でもその気持ち、わかる(笑)
徳岡 すぐに「いい」と言われると、それはそれで不安になる。
三浦 めんどくさいなっていつも思います(笑)
梁 それはね、絶対みんなそうだと思うよ。自分では決められないよね。
三浦 僕は徳岡さんが作るメロディが好きなので、「頑張れ!」って言いながら背中を押してる感じです。
梁 美しいユニットだねえ。音楽の一部としてパートナーがいるというのはいいよね。
──両者の音楽的な共通点で言うと、どのあたりになるんでしょうね。
三浦 僕の話をさせてもらうと、今アコースティック・ギターを弾いてるんですけど、エレキ・ギターから始めたので、ハードロック、ヘヴィメタルから入ってます。一番最初に弾いたのはディープ・パープルとかです。父親がエレキ・ギターの先生で、その影響で。
梁 お父さん、いくつ?
三浦 えっと、55です。
梁 聞くんじゃなかった(笑)。(小声で)僕は57です。じゃあやっぱりディープ・パープルだよね。
三浦 ハードロック一筋だったんですけど、神戸のチキンジョージというライブハウスのバイトの先輩として、徳岡さんと出会うんですね。チキンジョージはジャズの人もフュージョンの人も来て、いろんな音楽をライブハウスで聴けるようになって、その中でJ&Bという、スタジオ・ミュージシャンの組んだバンドがよく神戸にライブに来ていたんですね。そのJ&Bのフロントの二人が、JとBという名前でアコースティック・ギターに持ち替えたんです。それがすごいファンキーに聴こえて、ロック以外は認めん!という感じだったのが、アコースティックもいいなと思って、DEPAPEPEもアコースティック・ギターでやってるという感じです。
梁 今、すごく伝わって来たんだけど、MCうまいでしょう。
三浦 いやいや!ありがとうございます。
徳岡 僕もだいたい一緒なんですけど、最初はX JAPANが好きで、DEPAPEPEをやり始めてからアコースティック・ギターに持ち替えたので。今でもエレキものが二人とも大好きです。
梁 そうだろうなと勝手に思ってた。ピックでのメロディの弾き方が、エレキっぽい感じがある気がしていて、それがポップさにつながっているのかなと。
徳岡 本当のアコースティックの人の、どれだけ倍音を指で鳴らすかとか、そういうんじゃなくて、メロディをストレートにポップに伝えたいと思ったので。ピックでなるべく伸ばすように弾くのは、エレキの発想やと思います。
梁 グルーヴにも、ロックがルーツの心地よさをすごく感じる。移動してる間、聴いていて心地いいのはそのグルーヴ感&スピード感を感じるからかも。
徳岡 うれしいです。梁さんはどんな音楽を聴かれてきたんですか。
梁 僕はディープ・パープルがリアルタイムだから(笑)。ギターを弾いたんだけど、ほかの人よりヘタクソで、全然ついていけなくて。あの頃ロックだったら、ギター弾くか、歌うか、もしくはドラムか、じゃない?僕は幼い頃からピアノ習っていたけど、キーボードは目立たなくて、うしろの方で地味にいるだけみたいな、ひねくれた気持ちでいたんですけどね。大枠としてはロックが大好きだけど、基本は雑食で、メタルでもクラシックでも、自分の想像を超えたものにバン!と出会ってショックを受けると、そこにのめりこんじゃう。たとえばボサノヴァでも、ジョビンのいい曲に出会うと、パッとそっちに行っちゃう感じ。そういう意味で僕はすごい雑食です。でも骨格になるものとしては、やっぱりロックが一番好きかな。誰が一番好き?って聞かれると、僕は「レディオヘッド」って言っちゃう。
三浦 ああ~。
梁 あともう一つ、シガー・ロスがすごく好きなんですよ。特にヨンシーのソロが大好きで、シガー・ロスとは違いトーンが明るくて、あの感じが僕に近いかもしれない。ソリッドなリフで攻めていくんじゃなく、空間で押していく感じが好きですね。