弾き語りは、その場で即興的にどんどん変えていけちゃうユルさが好き。
──たしかに(笑)
なんせひとりなんで「ここで止めちゃえ」とか「イントロはこんな感じにしちゃえ」とか、その場で即興的にどんどん変えていけちゃうユルさが好きなんですね。でも一方で、最初にバンド(サウンド)で聴かせてる曲をひとりでやるとなると、アコギ1本でアレンジしなきゃいけないわけで、ただストロークだけ全曲やってても退屈しちゃう。そういう難しさもあるんですよね。以前やった時は曲を決めず、5〜60曲分の歌詞カードと譜面だけ置いてその場の雰囲気でやったり、お客さんのリクエストでやったりしたんですけど、リクエストでやると全然収拾がつかなくなったんであれはもうやめようと(笑)
──ファンの方にしてみたら、ここぞとばかりにマニアックな曲とか言いたくなりますよね(笑)
こっちが忘れてるような曲をリクエストされたりすると、そこは無視するんですけどね(笑)。まぁ、そういうのもアリですけど、それよりは今こっちがやりたいやつをチョイスしてやろうかなとは思ってます。
──弾き語りのライブの場合も、舞台監督というか、演出などを提案する方がいらっしゃるんですか?
いますね。大掛かりなものではないですけど、セットとか照明とかね。以前大阪城ホールでひと晩だけやった時は、大宮エリーが演出したりもしましたよ。
──「斉藤“弾き語り”和義ライブツアー2009>>2010 十二月in大阪城ホール〜月が昇れば弾き語る〜」ですね。
あの時はセットも大掛かりだったし、映像を使ったり、歌う場所も幾つかあったりして段取りを覚えるのが大変でしたけど(笑)。でもあれ以外は、やり過ぎない程度に、なんとなくシチュエーションはこんな感じでとか、照明で季節感が出るようにしてみようとか、それくらいですかね。
──会場が広くなってくると、弾き語りとはいえ、ある程度の演出は必要なんでしょうね。
そうですね。こっちがやることは一緒なんですけど、見せ方としてね。基本的には、何もないところでギター1本でやるぞって気持ちはありますけど、プラスアルファのところで、特にデカいところだとそれなりに見た目の面白さというか視覚的なところもある程度はあった方がいいかなとは思ってます。
──弾き語りと言っても、表現の仕方はいろいろありますね。
もともと最初の「十二月」をやった時は、写真家の佐内(正史)さんにショートムービーなり映画的なものをお願いして、それを流しながら、俺は全曲皆さんからはほぼ見えないところで演奏するみたいなことを考えていたんです。黒子に徹してるんだけど、生ではやってるみたいな。目には映像で、そこに生でサントラを付けるというか、その映像に対して自分の歌を流すって発想でやりたいなって思ってたんです。結局、それって見てる側としてどうなんだろうみたいなところもあり、映像は4曲ぐらいで、基本的には弾き語りでやったんですけど。
──思い切った試みを考えてたんですね。
それこそ中島みゆきさんの「夜会」みたいな。「夜会」はステージの下で演奏してるでしょう?演劇的なことは無理なので、それを映像でやれないもんかみたいな発想だったんです。ま、それだけじゃないですけどね。サントラというか、映像に音を付けるみたいなのは今も好きですけど、当時そういうのがすごくやりたかったんです。
──Candle JUNEさんのキャンドルを取り入れたりして、ステージだけでなく、空間ごと演出してしまうやり方もありましたしね。
以前は3時間ぐらいとか3時間半ぐらいやったりしてたんで、さすがに見てる側も、曲は変われど飽きると思いますからね。自分がお客だったらさすがにそうなる気もするので。その照明なりセットなりを特別見ないとしても、なんとなく視野に入ってて、色が変わったとか感じるだけでもだいぶ見終わった後の感覚は違うはずだと思ってるんです。メインはもちろん歌と演奏なんだけど、それの、あくまでも補助的な要素としてそういう演出みたいなのはある程度必要だよなって。お芝居とか見にいくのも結構好きなんですけど、セットの早替えとか、暗転したと思ったらマジック的にガラッと変わってたとか、お芝居の演出ってすごいじゃないですか。あそこまでじゃなくていいけど、ああいう要素は、特に弾き語りの時はハマる気がするんですよね。
止まらないギター愛、ツアーに向けて