──アルバムコンセプト的なものは?
桜井 最初の話に戻るんですけど、【13】という漠然としたものがあって。このバンドって、テーマを作っても絶対に無理なので、だから漠然と【暗い感じ】。以上!って感じでしたね。
村井 暗いのをフォルダから持って来たって感じです。でも、青さんが持って来た最初の曲はすごく明るくてビックリしましたけどね。“トイレでGO!”って、めちゃめちゃ明るく言ってましたからね。
桜井 あははは(大爆笑)。あれは違うんですよ。
村井 【暗い感じ】でいくって言ってませんでしたっけ!?みたいな(笑)。
桜井 いや、あれは(笑)、理由があるんですよ。2つ理由があって、1つは、単純に歌詞的、テーマ的に、なんとなく重いものを扱ってみたいなっていうところ。わりとスプラッター映画みたいなものの中で、人を壊すシーンに使われてる音楽って、わりと明るい曲とかハードロックとかが多かったりするでしょ。
──たしかにたしかに!
桜井 ね。見た目はグチャグチャなのに、そことはミスマッチなことをするじゃないですか。それがね、昔っから気になってて。いつかこういうのやってみたいなって思ってたんですよ。そこをイメージして最初に作ったのは、「君が咲く山」(2000年にリリースされたシングル)で、「マグロ」(2002年にリリースされた『第七実験室予告版 〜マグロ〜』収録曲)とかもあるんですけどね。「マグロ」出してから15年ですからね。15年目にして、初心に戻ってみようかなと思って。ちょっとだけサービスみたいな感じです。
──15周年のね。なるほど。でも、たしかに、「トイレでGO!」のミュージックビデオからは、そのすべてが読み取れますよね。ゾッとしましたもん。あの、鍋の中身は確実に………。そう思うと、歌詞と楽曲のアンバランスさに猟奇的なものを感じます。
桜井 あの頃のグシャっとした感じのものを、今の自分で書いたらどうなるのか?っていうところ。でも、実際やってみたら、そんなに成長してなかったなって思いましたけどね(笑)
──いやいや、やはりそこはcali≠gariだなと。やはり一線を画す存在だなと改めて思いましたよ。でも、今、【暗い感じ】を軸にしたアルバムだと聞いて、いろいろと納得出来ました。「色悪」という歌舞伎で用いる、裏に秘めた暗さを示す独特な表現や、「落花枝に帰らず破鏡再び照らさず」という刹那的な暗さを宿すことわざを用いていたりとかも、その【暗い感じ】を思わすものだなと。
桜井 その2曲に関しては、石井さん曲なんで、そのあたりは石井さんに聞いてもらえると。
村井 でもね、きっと秀仁くん的には、曲的に【暗い感じ】って言われてると思ったと思う。俺もそうだったから。そう思ったよね?
石井 そう。今回俺が曲を作ったのがすごく遅かったんですよ。最初、青さんが曲を作ってたときに、“僕は今、どす黒いのしかないから、ポップな曲を作ってくれ”って言われたんですよ。
桜井 言ってないですよ〜。
石井 いや、言ったよね(笑)
桜井 うそ、言ってないよ、そんなこと〜(笑)、言ったっけ?
石井 言った言った(笑)。それで少ししたら、“キャッチーなやつ作ったらキャッチーなのばっかになっちゃった”って言って。
村井 “本末転倒になっちゃった”ってね(笑)。でも、結果いいアルバムが出来たんでいいんですいいんです(笑)
石井 でも、かつてcali≠gariが明るかったことなんて1度もないんで、特別暗くしてやるぜ! みたいには思わなかったですけどね(笑)。でも、今回は最初に【暗い感じ】っていうテーマを言われていたので、いつもより少しは意識したのかなって思いますけどね。
桜井 でも、「色悪」とか、最高じゃないです?シングルにしようって言ったんですけど、断られました。
石井 俺の中で「色悪」は、すごく普通な曲だったんで(笑)
村井 俺的にはすごくいい曲だと思いましたけどね。でも、いい曲だけで終ってないとこがcali≠gariっぽくていいなって思いましたけど。ぐちゃぐちゃに弾いちゃう感じとか。
──いや本当に。個人的に「色悪」のベースフレーズすごく好きでした。含みを感じますよね。
村井 いいでしょ。この曲のベースはね、40過ぎないと弾けないんですよ(笑)。10年前は弾けなかったですからね、こういうベース。そういう意味でも、15周年っぽいアルバムになってるんじゃないかなって思いますよ。40越えるとこういうベース弾けるんだぞっていう。自画自賛じゃなく、長く続けてて良かったなっていう意味でね。
──分かります。「トイレでGO!」のベースは、ある意味若さを感じますもんね。
村井 そうそう(笑)。「トイレでGO!」のベースは20代の頃を思い出して弾きましたからね。勢いで弾くとこうなるんですよ。「色悪」とかは、長く生きてるとこういうことが出来るようになるんだよっていうとこですね。
──等身大ですよね。
村井 等身大って言葉いいですね。そうそう。まさに等身大。
──「トカゲのロミオ」のベースも最高に好きでした。
村井 今日めっちゃ褒めてもらって嬉しいです(笑)
桜井 cali≠gariは全編がベースソロみたいなもんですからね(笑)
──ギターの音色もあのドロドロとした世界観もすごく好きでした。
桜井 いいでしょ。40越えると弾けるギターです、あれも。でも、あのギター自体は13歳でも弾けますけどね(笑)
歌詞についてそれぞれが語る