舞台演出家としての池谷直樹~プロジェクションマッピングはストーリー性を補う手段
──池谷さんは、総合演出も担当されているということですが、今回の公演では「プロジェクションマッピング」を導入されたそうですね。
今回の公演を語る上で、プロジェクションマッピングは凄く大切な要素です。なぜかというと『八犬伝』は、僕らがやっているスタイルで舞台化するのが、とても難しいんですよ。例えば映画だったら、色んな演出が出来ると思います。しかし僕らは身振り手振りだけで、内容が複雑な場面をお客さんに伝えなければいけない。そこにプロジェクションマッピングを取り入れることによって、より分かりやすく出来たらと思いました。
例えば、<伏姫>というキャラクターの体から8つの玉が出てくるというシーンあるんですが、これまで僕らがやってきたスタイルのまま舞台で表現するのは、ちょっと厳しい。だけど映像を使うことによって、より鮮明な形でお客さんに伝わるんじゃないかと思ったんです。ですから「綺麗だから」とか「華やかだから」という理由で使うのではなく、あくまで手段ですね。僕たちの演技だけでは表現しきれないストーリー性をプロジェクションマッピングによって補うという感じでしょうか。
──なるほど。話は変わりますが、稽古を見ていて、和テイストの音楽が非常に印象的でした。音楽面へのこだわりをお聞きしたいです。
あれ、全てオリジナルの楽曲なんですよ。やはり「和」のテイストを出すために、笛や太鼓の音を沢山使っているのがポイントですね。まずストーリーを作って、演目順に並べて、そこに僕が音楽のイメージを付け足す。で、音楽チームが、そのイメージを元に作っていくというやり方でした。
──音楽についても、相当関わられているんですね。
そうなりますね。というのも台詞のない僕らにとって音楽は言葉に代わるものなので。ですから「音楽をこうして欲しい」というイメージを持つことは、とても大切なんです。とは言え、最初から最後まで似たような曲ではお客さんが飽きてしまう。ですから色んなジャンルの音楽を流す予定なんです。基本的には和風ですが、途中アラビア風の音楽が入ってきたりもしますよ。しかも、この音楽というのは、生のバンドが演技に合わせて演奏するんです。これって舞台の世界では、もの凄く贅沢なことなんですよ。生の音楽があって、プロジェクションマッピングがあって、映像もある。この景気の悪い世の中で、景気の良いことをやっているつもりです(笑)
──まさにそのとおりですね!贅沢といえば、今回はディファ有明という非常に大きな舞台での公演となります。何かこれまでと違う試みなどはあるのでしょうか?
そうですね。客席とのコミュニケーションを密にしていこうと思っています。僕が舞台を作る時に常に考えてるのが「お客さんにどれだけ楽しんでもらえるか」ってことなんです。自分たちがやりきって満足するのではなく、やはり舞台を見た方々には元気になって欲しいし、「明日から頑張ろう」という気分になって欲しいんですよね。ですから舞台上だけでなく、客席も巻き込む演技もして行きたいと思っています。もっと言ってしまうと観客参加型のイベントも用意してますので、ご期待下さい!
──池谷さんは犬山道節(いぬやまどうせつ)という、かなり重要な役を担当するわけですが、登場シーンの中から見どころをお聞かせいただけますか?
個人的なところで言うと、やはりモンスターボックスですね。まだお話出来ませんが、ちょっと意外な展開も考えてますよ。是非とも注目して欲しいですね。
浅田舞(あさだまい)、中原由貴(なかはらゆうき)に望むこと
──今回の公演には、元フィギュアスケート選手で現在スポーツキャスターの浅田舞さん、宝塚で男役をやってらっしゃた中原由貴さんが参加されています。総合演出の立場から、お二人にどのような期待をされていますか?
昨年の『ふしぎの国のアリス』にも出てもらった浅田さんには、<玉梓(たまずさ)>という悪役を担当していただきます。去年はお互い手探りということもありましたが、今年はもっと動いてもらうつもりですし、ここでしか見られない「そんなことを浅田舞がするの!?」と思われるようなことをやってもらいたいですね。
──今回初出演となる中原由貴さんに期待することはありますか?
やはり中原さんは、宝塚でずっと男役をやってこられているので、その経験を存分に活かして欲しいです。役どころとしてはストーリーテラーなので、演技力にも期待しています。宝塚で培ってきたものを存分に出してもらえるような形にしたいですね。先ほどの稽古ではオープニングシーンを作っていたのですが、中原さんはとにかくダンスがキレキレで。ゲストなんですけど、センターに立った時に、みんなを引っ張っていけるような動きを持っているんです。お互い切磋琢磨して良い舞台を創り上げることが出来るんじゃないかなと思っていますね。
──最後に読者にメッセージを頂けますでしょうか?
『里見八犬伝』は、これまでに様々な形で、繰り返しリメイクされてきた作品です。その中でも『アメージング八犬伝』は、ひときわ違った、僕たちにしか出来ないものになっています。これほど大きなスケールで、そして新しいスタイルで、やっているところは他にないですから。僕らが日本を代表するエンターテイメント集団になっていく、その過程を是非ともご覧いただきたいです。そして応援していただけると嬉しいです!
『アメージング八犬伝』に向けて、演者として、そして演出家として日々ハードな稽古に臨む池谷直樹。インタビュー後には、2018年公演に向けて動き始めている事、そして関係者も驚く壮大な構想の一端を明かしてくれた。池谷は目を輝かせながら「世界に通用する舞台を作りたい」と語る。その目標が実現するのも、そう遠い日のことでは無さそうだ。
■「アメージング 八犬伝」公演予告動画
第1回 <サムライ・ロック・オーケストラ>主宰者・池谷直樹
第2回 元・宝塚歌劇団月組 中原由貴
第3回 元・フィギュアスケート選手 浅田舞
『アメージング八犬伝』公開稽古に潜入!
元アスリートたちが集結!アクロバットミュージカル『アメージング八犬伝』の公開稽古に潜入