私にとって音楽は、子供の時から夢としてずっとやってきたことだし、それを手放す考えは全くない。だから、私は辞めない、辞められないんですよ。(UKI)
──じゃあ、バンドの活動休止=メンバー全員が音楽をやめるわけではないんですね。
UKI いろんな友達にも相談したんですけど、みんなと『音楽、辞めないでしょ?』『辞めないよ!』『ああ、よかった!』っていう会話をたくさんしてるんですよ。私にとって音楽というものは、子供の時から夢としてずっとやってきたことだし、それを手放すっていう考えは全くない。だから、私は辞めないんですよ。辞められないんですよ。
MAH どんな形になるかはわからないですけどね。僕は今でも、UKIさんのために曲を書いていて。もうそれはライフワークみたいなもので。活休するのに、これはいつ歌われるんだろうとは思いながらも作ってますから。
──その言葉を聞けただけでちょっとホッとしました。ニューアルバム『Her』はそんなヒリヒリするような話し合いと並行して作られていたんですよね?
MAH そうですね。実際は一昨年くらいからやっていたんですけど、制作途中で活休の話もあって。だから最後って言いたくないけど、活休前ラストっていう気持ちはありましたね。
UKI このアルバムでこの歌詞の内容ってなると、全部全部、活休と結びつきがちなんですけど、そんなわけはなくて。
──例えば、’15年5月にリリースした17枚目のシングル「Climax」の<♪さよなら/また巡り会えることでしょう>も意味深に聴こえてしまいます。
UKI うん(笑)。でも、そんなことはなく。ただ、制作中にいろんなことがあったのは事実で、その時は歌詞をまだ半分くらい書けてなかったんです。これは絶対に最後のアルバムになるぞって思ったけど、いきなりラストの気持ちを書けなくて。それで落ち込んで。〈Color〉っていう曲をプリプロしてる時に、MAHは『この曲はね、UKIがすごい大きなスタジアムで端から端まで駆けていくイメージがすごくあるんだ』って言ってて。その時は『ああ、そうだね。すごく大きな会場で歌ってるイメージあるね。キラキラしてるよねー』って話してたけど、いろんなことがある中で、キラキラしすぎちゃってる曲に対して、全然言葉が出てこなくって。何を私は書いたらいいんだろうって。それで、一回白紙に戻したんです。で、もう一回書いて、もう一回もう一回って書いていって着地したんですけど……。
──UKIさんにしては珍しい歌詞になってますよね。<今のまま歌えそうにない>とか、<どんな色になれば/振り向いてくれるの>と不安を吐露してて。
UKI 珍しいです。よくお気づきで(笑)。私は今まで、<いろんな色になる>ってずっと言ってきて。どんな色にもなれるよって言ってたのに……MAHも好きなんだよね、このフレーズ。
MAH そこでね、泣いちゃうんです、僕。
UKI グッと来ちゃうんだよね、MAHのその気持ちはものすごくわかります。ただ、どんなに気持ちを訴えかけたとしても、情熱が届かないというもどかしさがすごいあった時なので、本当にちょっと思い出すと気持ち悪くなっちゃうくらい作詞の環境が悪かったですね。キラキラした曲に反する気持ちしかないことにすごく悩んだけど、全然うまく走れてないからこうなったなっていう感じですね。
アルバムタイトルの『Her』は女神っていう意味で。それぞれの心の中に神様がいて。神様は、自分の気持ちで、つまり、自分自身でもある。(MAH)
──一方、表題曲「Her」では<あなたの手は離さないから/この世界とまだまだ遊んで>と歌ってますよね。この歌詞も活休が決まった後に書きました?
UKI 本当に一番最後ですね。でも、曲自体はファーストアルバムを作っている頃からあったんですよ。
MAH 面白いのが、ほとんどアレンジや曲の構成は変わってないんです。付け足したり省いたりっていうのはあるけど、ほとんど変わってない。
──もともとはどんなところから生まれた曲だったんですか?
UKI 毎回毎回アルバムの候補の中には入っていた曲なんですけど、最初は、私がお母さんを連想させるような曲を書いてって言って。
MAH だから最初は『MOM』っていうタイトルだったんですよ。UKIさんと、UKIさんのママのやりとりの空気感と、自分の母親、自分の思う親子でメロディを出していって。
UKI でも歌詞が全然書けなくて。なんか表現しきれない感じがあったんだよね。
MAH そうそう。そんな3、4分では表現できないくらい、母親ってもっと偉大なんですよね。だから書けなかったんだと思うんだよね、歌詞を。
UKI 演奏も歌も、すべてにおいて今じゃない感がものすごくあって。
MAH でも、アレンジが変わってないのが面白いよね、ドラムにしても何にしても。
──今、聞くとドラムから始まってベース、ギター、ヴォーカルってひとりずつ入っていって4人の音になるじゃないですか。しかも、タイトル曲だっていうことを考えると、どうしても感傷的にはなっちゃうんですよね。
UKI なりますよね。だって前のギター(MASSY/’99〜02)、前のベース(KING/’99〜11)も、どこかで聴いたら、あっ!って思うんじゃないかってくらい、ずっと眠ってた曲で。
MAH これ『MOM』じゃんって言うよね、絶対(笑)
UKI で、最終的にTAKEちゃんとYOUSUKEがギターとベースを入れてて。私も歌詞をちゃんと書いて。みんなでやってますっていう曲になりましたね。
──「Her」はどんなイメージですか?リスナーとしては、UKIさんを思い浮かべますが。
UKI 私の中では、“お母さん”と“音楽の神様”と“自分”を『Her』としています。もうひとりの自分っていうか。
MAH 結局、お母さんからしか生物って生まれないし、そういう意味でもこのアルバムタイトルの『Her』っていうのは女神っていう意味で。外に何かを求めるんじゃなく、問いただすんでもなく、結局、それぞれの心の中に神様がいて、その神様が『あっちに行ってごらん』とか『これはやめときなさい』って言う、その自分の気持ちっていうのが神様なんじゃないかっていう。神様は、自分の気持ちで、つまり、自分自身でもある。絶対に誰もがもうひとりの自分をそれぞれ持ってると思うんですよ。UKIさんは女子だし、もうひとりのUKIさんっていう意味でHerっていうのでもいいし、いろんな意味がある。
色褪せないファンへの想い、アルバムリリースツアーについて