世の中に大きな変化が生むきっかけとなる人物、事柄を“SUPERMAN”と呼んでます。ライブに来てくれたり、アルバムを聴いてくれた人のなかから、将来、スーパーマンみたいな人が現れたら嬉しいですよね。他力本願ですけど(笑)
──そして2月8日にメジャー1stフルアルバム『SUPERMAN』がリリースされます。コムアイさんにとって、アルバムというコンテンツはどんな位置付けなんですか?
どうなんだろう?たとえば洋服の場合、基本的には年に2回とか4回くらい新作を出さなくちゃいけないじゃないですか。
──シーズン毎に新しいラインナップを発表しますからね。
それに比べると音楽は自由に出せるからありがたいですよね。「カメハメハ大王」を冬に出してもいいし(笑)。洋服と音楽って、似てるところが多いなって思うんですよ。新作を作って、展示会やショーで広めていくわけだから。アルバムも洋服の新作と同じで「しばらくはこの雰囲気でやっていきます」という提示みたいなものじゃないかなって。
──水曜日のカンパネラの現在のモードを示す手段というか。
はい。特に今回のアルバムは「こういう内容にしよう」と話しながら進めていったんです。コンセプトとしては「スーパーマンがいない現代」という、けっこう悲観的な前提に立っていて。いまって、私たちが「こうあってほしい」と思い描いていることと、社会や政治の在り方がどんどんズレていると思うんです。必ずどこかのタイミングで世の中に大きな変化が生まれると思うんだけど、そのきっかけとなる人物、事柄を“SUPERMAN”と呼んでるということですね。いまはまだ存在してないけど、次の新しい変化を呼ぶ人物が出てきてくれないかなって期待しながら作ったところもありますね。
──「坂本龍馬」「チンギス・ハン」「チャップリン」など、いろんな時代、いろんな場所で革命を起こした人物がタイトルになってますね。
そう、偉人たちを集めて。文化的に影響が強かった人も入れたかったんです。私たちは音楽業界にいますけど、世の中の変化と遠いとは思いたくないんですよね。音楽はインフラではないから、平和じゃないとやれないし、言ってしまえば余分なものだと思うんです。でも、世の中の変化に何かしらの変化を及ぼす存在でいたいなって。ライブに来てくれたり、アルバムを聴いてくれた人のなかから、将来、スーパーマンみたいな人が現れたら嬉しいですよね。他力本願ですけど(笑)
──「世阿弥」も印象的でした。能を通して、日本の芸事の基礎を作った人物なので。
ホントにそうですよね。世阿弥の言葉をまとめた「風姿花伝」もステージングに関する本だし、すごく勉強になるんです。能がやろうとしていたこともすごく興味深くて。まさに儀式、神事だと思うんですけど、誰にもどうしようもない悲劇に見舞われて亡くなった人——恋に破れた心労で死んだ人だったり、源平の合戦で討たれた人だったりーーを舞台上に呼んで、称えて、弔うっていう。現代においても、ひどい出来事が起きたときは、新しい能の演目が出来てもいいんじゃないかって思いますね。
武道館は法隆寺の夢殿をモデルにしていて、屋根は富士山の裾野、座席の東西南北の色は聖獣から…。宇宙のブラックホールみたいに引き込むような演出とか、センターステージとか、いろいろ考えてるところですね。
──水曜日のカンパネラには、そういう大きな目的のようなものはあるんですか?
何だろうな?これは人に言われたことなんですけど、ライブは“日常のなかの非日常”じゃないかって。同じような日常を繰り返していると、淀みを感じることもあるんと思うんです。ライブに行きたいと思うのは、その淀みを解消するひとつの方法じゃないかなって。あとはもっと大きなものだったり、いろいろな歴史とつながれたらいいなって思います。ただ「表面的なことをしたくない」というヒネくれたところもあるので(笑)。そこをケンモチ(ヒデフミ)さんがトンチを効かせながら表現してくれるっていう。それがカンパネラの構成なんだと思いますね。
──ケンモチさんが手がけた、アルバム「SUPERMAN」のトラックメイクも素晴らしいですよね。先鋭的なエレクトロ、ハウス、テクノをさらに進化させつつ、どこか軽妙なところもあって。
曲を重たくしたら、伝わらないですからね。今回は民族音楽をヒントにしたグルーヴだったり、ちょっとオチャラケた音なども使っていて。4つ打ちじゃないリズムもあるし、ベース・ミュージックっぽいところもありますね。基本的にはケンモチさんにお任せしてたんですよ、今回は。おもしろかったのは、自分ががんばることで、曲がいきなり良く聴こえることが多かったことかな。声のテイクによってハイハットがしっかり聴こえるようになったり、バックトラックの波が変わったり。そういうことは写真でも起こりますよね。前にあるものによって、背景が違って見えたりするので。
──ボーカル表現のおもしろさ、奥深さに気付いたのかもしれないですね。
あ、そうですね。私はもともと“自分の仕事は歌うこと”という意識はなくて、優先順位としては全体のディレクション、ハンドリングのほうが高いんですよ。でも、今回のアルバムは歌うことにウェイトを置いていて。歌うのが楽しくなってきたのかもしれないですね。カンパネラの曲は言葉が続くラップのパートとメロディを歌うパートがハッキリ分かれてるんですけど、だんだん歌うパートが楽しくなってきたというか。
──歌に対する意識が強まったのは、何かきっかけがあったんですか?
カンパネラ以外の場所で歌うことが増えたことも影響してると思います。RISING SUN ROCK FES.で真心ブラザーズと一緒にやらせてもらって(「FRIDAY NIGHT SESSION〜真心ブラザーズの石狩フォーク村 夏祭り〜」。真心ブラザーズがホスト役をつとめ、コムアイ、ハナレグミ、トータス松本、Reiなどがゲストボーカルとして参加)、中島みゆきの「ファイト!」を歌ったり。冨田ラボにも参加させてもらったんですけど、いままで感じたことのないコード感で、それもすごく新鮮だったし。「自分にはこんな芸風もあるんだな」と思えたのも楽しかったし、コラボで受けた刺激も「SUPERMAN」に活かせているかもしれないですね。
──なるほど。最後に、武道館ライブのタイトルは“八角宇宙”。八角は建物のカタチですが、宇宙というワードを入れたのはどうしてですか?
武道館でライブをやることを考えると、迫力で押すのは向いてないと思ったんですね。パワーで押し切ろうとするのではなくて、宇宙のブラックホールみたいに引き込むような演出のほうがいいなって。センターステージでやったほうがいいだろうなとか、いまいろいろと考えてるところですね。
武道館は法隆寺の夢殿——聖徳太子を弔うための八角形の建物——をモデルにしていて、屋根の広がりは富士山の裾野のイメージを落とし込んでるそうなんです。あと、方角にも意味があって。武道館の座席は東西南北に分かれてますけど、たとえば南は赤色で書かれていて。それは南を司る聖獣が朱雀という赤い鳥だからなんです。中国的な思想も取り入れられているし、調べれば調べるほどおもしろくて。それをどうライブに活かせるかは、まだわからないですけど(笑)
■水曜日のカンパネラ『一休さん』
■2017年3月8日(水)開催『八角宇宙』日本武道館単独公演告知映像
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