インタビュー/森 朋之
昨年夏には国内外の大型フェスに多数出演。さらにテレビ番組への露出、フリーライブの開催など、メジャーデビュー以降、瞬く間に日本のエンターテインメントを象徴する存在となった水曜日のカンパネラから、メジャー1stフルアルバム『SUPERMAN』が到着。「坂本龍馬」「一休さん」「カメハメハ大王」といった偉人たちをモチーフにした楽曲が並ぶ本作は、エレクトロ、テクノ、ベース・ミュージックなどを融合させたトラック、独創的かつシニカルなユーモアに彩られたリリック、そして、表現力を向上させたコムアイの声が有機的に絡み合う充実作となった。2017年3月8日(水)には、初の日本武道館公演「水曜日のカンパネラ 日本武道館公演〜八角宇宙〜」も決定。アルバムのコンセプト、武道館ライブの展望などについてコムアイにたっぷり語ってもらった。
武道館のことを調べてみたら、すごくおもしろいんですよ。京都タワーと建築家が同じで、ふたつとも1964年のオリンピックの年に建ってるんです。でも、武道館は他の作品と少し気合いが違う。
──まずは3月8日(水)に行われる初の日本武道館ライブについて聞かせてください。つい先日も、武道館を下見されたそうですね。
そうなんです。アジカンのライブだったんですけど、朝、下見しして、夜はライブを観させてもらって。行くたびにやりたいことが浮かんでくるので、失礼ながら座りのライブ中はメモしてるんです。他のアーティストのライブを観ながら自分の演出を考えます。
──コムアイさんにとって武道館はどんなイメージですか?
そうですね…武道館のことを調べてみたら、すごくおもしろいんですよ。設計したのは山田守さんという建築家なんですが、京都タワーの設計も手掛けていて。ふたつとも1964年のオリンピックの年に建ってるんです。
──日本武道館と京都タワー、建築物としてのスタイルはまったく違いますよね。
そうなんです。山田さんの作品をいくつか見てみると、曲面が特徴的で。京都タワーのヌラッとした白い塔のカーブとか。モダニズム建築の方なので、古風な美が感じられる武道館は他の作品と少し気合いが違うと思います。きっと「1964年の東京オリンピックの年に何を建てるべきか」ということを考えて、その結果が武道館だったんじゃないのかなって。その感じはいまの日本とも重なるじゃないですか。たくさんの人が「2020年の東京オリンピックで何ができるか?」って考えているので。
──武道館の成り立ち、そこに込められた意図などを含めて、しっかり掘り下げるのはコムアイさんらしいと思います。
元々の美しさを無視したり、ないがしろにするのが嫌いなんですよ。みんなそうだと思うけど、昔のモノを懐かしんだり、愛おしいと思って、そうやって新しいものを作るアイデアが湧いてくるんだと思います。
──過去のモノにリスペクトがないと、良い作品は生まれないですからね。
そうそう。特に私は生まれ育ったところが、けっこう空っぽな気がしていて。新興住宅地だったから周りに文化もなかったし、幼少期の記憶や体験をモチーフにすることが出来ないんですよ。自分自身の人生を懐かしむより、日本人として、人間として懐かしいと感じることにヒントを得ることが多いと思いますね。
最初はライブ自体にそれほど興味がなくて(笑)。ただ、いろんな人の気持ちが集まる場所はあったほうがよくて。いまのところ、そういう場所はライブしか思いつかないんですよね。
──水曜日のカンパネラは京都の萬福寺、沖縄のガンガラーの谷など、様々な場所でライブをやっていて。通常のライブ会場とは違う場所に興味があるんですか?
最初はライブ自体にそれほど興味がなくて、「ライブをやろう」と言われたから始めたんです(笑)。音楽はやりたいけど、WEBの配信とかでいいんじゃないかなって思ってたので。ただ、いろんな人の気持ちが集まる場所はあったほうがよくて。いまのところ、そういう場所はライブしか思いつかないんですよね。会場に関しては、もちろん好きなライブハウスもたくさんあるんだけど、ちょっと変わったところのほうがやりがいを感じるというか…。もしかしたら、お客さんがいなくてもいいのかもしれないですね、私は。儀式みたいな感じで、自分のなかで納得できたらいいというか。
──アーティストのみなさんに聞くと「こちらの出来、不出来は関係なくて、お客さんが満足できるかどうかがすべて」と言う人も多いですけどね。
それはプロ意識が高いんだと思います。私はまだ自分の満足しかわからないんですよ。もちろん「これはわかりづらいから、こういうふうに変えよう」みたいな思考をしているときにお客さんの目線が入っているのは確かなんですけど。たぶん、自分のなかで「これが納得できるライブです」というものを見せられるようになったら、人の評価のことを考えられるようになるんじゃないかな。「一人前だな」と思えるライブはほとんど出来ていないし、そこに向けて必死でやってる状況なので。
──満足できるライブ、1回もないですか?
1回だけかな(笑)。サーフィンみたいな感じで、波を掴めるときもあるし、掴み切れないときもあって。それを少しずつ覚えてる段階だと思います。あ、でも、沖縄のガンガラーの谷でライブをやったときはすごく楽しかった。鍾乳洞なんですけど、最近、蟹の甲羅の化石がたくさん発掘されたんですよ。古代人が蟹パーティーをやっていたらしいんですけど(笑)、そういう場所でウワーッと盛り上がれたのは良かったなって。パーティー会場になることを運命づけられた場所というか。
──ホントですね!
そういうことが楽しいんですよね。その瞬間に起こっていることだけに興味を持つのはもったいないと思うし、もっと大きなものとつながりたいので。それがライブを見ている人たちにとっての奥行になったら嬉しいですね。