──元々、いろいろと哲学的に考えることが好きな5人が集まったバンドなんですか?
いやいや。むしろ“バカ”が5人集まったバンドですから。
全員:(一同笑)
──えっ!そうなんですか?
ええ。なのに、周りの皆さんが勝手に僕らのことを哲学的だとかいってるだけなんですよ(微笑)。小難しいことはしてるとは思うんですけど、別に意識してやろうと思ってやってる訳じゃなくて。自然とそうなってるんですよ。
だから僕は歌詞のことも、聞かれたら話したりすることはありますけど。あるとしてもそれぐらいです。
──例えば儿さんの方から、今回のテーマに向き合うためには「これを読むといいよ」と本をオススメしたりは?
オススメがあるとしたら「このビール上手いから絶対飲んでみろよ」というのはよくあるんですよ。
──本じゃなくてビール(笑)。
ビールはオススメするね(微笑)。
「趣味合うから絶対好きだよ」っていうのがこれまで3~4回はありましたから。
だから、メンバーが歌詞についてどう思ってるのかとか、どんな考えを持っているのかとかは俺はよく分かんないですから。
そこは各々の個性に任せてて。
それでいいと思うんです。例えば、僕はKOЯNというバンドがすごい好きなんですけど。KOЯNは暗くて重た~い音楽にのせて、ボーカルが幼少期に受けた辛い虐待のことを歌ってたりするバンドなんです。でも、他のメンバーは、あんなに歌詞の世界観に似合った暗くて重たい音楽を奏でながらも「アイツの歌詞とか知らねぇよ」っていうんです。それでもあの空気感が作れるんだから、知らなくてもいいじゃないですか?それと同じで、ウチも歌詞についてめちゃくちゃ興味があるメンバーもいれば別にそこまで興味を示さないメンバーもいる。それが当たり前だと思うんです。ただ、それでライブの空気感が崩れるようであれば、それは問題だと思うんですけど。いまはそれはないんでね。
僕は後者で、儿が書いた歌詞まったく知らないんです。聞き取れるところは分かるんですけども、だいたい何いってるか分からないし。シャウトが多いんで。それで、先日「PERSONA」がカラオケに入ったというので、カラオケに行きまして。そこで初めて歌詞を知りましたから。
自分の曲なのに(微笑)。
誠っちゃんは逆なんですよね。歌詞を理解した上でギターを作るんですけど。俺はその中間です。気にするときもあれば全然気にしないときもある。
僕は一応曲のテーマだけは気にします。「これ、どんな曲なん?」って分からないときは聞くし。明らかにタイトルとか、プリプロやって分かれば聞かないけど。そこまで深くは求めないけど、ある程度テーマは意識してやりますね。
──それぞれスタンスが違うんですね。
それでもまとまるから、これがウチらのやり方なのかなと思います。
──儿さんがこのバンドを始めるにあたって描いていたビジョンのなかには、哲学するバンドという方向性は最初から組み込まれていたんですか?
それはこのバンドがどうとかではなくて、前のバンドも含めそこはまったくブレてないです。それが、僕が歌う理由なんで。だから、たぶんこの先もそこは変わらないし。それがなくなったら歌わないし。僕はさっきのKOЯNの話じゃないですけど、そういう自分の波長に合う音楽を聴いて救われた部分があった。だから、それがないと音楽はやってないです。そういうところまではメンバーにも話しますけど、そこに乗っかってくるかこないかはメンバーそれぞれですから。もしそれで、奏でる世界観が違ってたら…。最初は正直それもありました。ライブ映像とか見てて、空気感がなんか違うなと思ったら“ここはもうちょっとこうしたほうがいいんじゃない?”っていうこともありました。でも、いまはみんなそれが自然とできてますね。
──そういう芯のところでのバンド力が高まったからこそ、ライブではRENAさんが歌って、みんなで楽しく騒いで盛り上がるようなパフォーマンスもありになった。
いや。あれは結構昔にやってて。
結成して1年経ったぐらいかな?
でもしばらくやってなかったんですよ。いまのバンドの空気感に合わないなと思って。
当時、バンドが伸び悩んでて。たくさんの人に届けたくて音楽やってるのにいい状況にならないから、人に届けるためにももうちょっと分かりやすい音楽をしたほうがいいんじゃないかって。そこで、悪い言い方をすると、バンドがどうしたらいいんだろうと悩んだ挙句、大事な芯がブレかけて悪い方向に進んじゃったときがあって。とりあえずライブのノリを変えてみようかということで、僕がボーカルをとって分かりやすく盛り上げてみようってやり始めたのがあれだったんですよ。でも、やってみたら「これって俺らのやり方じゃないよね」って話になって。
それで、封印してたんです。
それで、僕らのパブリックイメージって、構築された難しい音楽をやってるバンドという感じだと思うんですが。やっぱりそっちで攻めていこうよって。それで、やっとそっちのイメージが定着していって。
バンドの空気感もよくなって。1周回って、逆にいまあれをやったらチャラチャラしてるようには見えないだろうし。いい感じにできるんじゃないかっていうので、かなり久しぶりに封印を解きました。
それで、久々にやったらめっちゃ楽しくなっちゃって「これいいかもな」って(笑)。ワンマンライブや特別な公演でたま~にやるのも、それはそれで一つの在り方かなとは思いました。これも含めてTHE BLACK SWANだって、いまならいえるんじゃないかな。
──なるほど。そうして、バンドとしては昨年リリースした「PERSONA」に続くシングル「RAGE」を3月8日にリリース。こちらはどんな作品になるんでしょうか。
まず僕の中で、「PERSONA」はアルバム『OUSIA』の延長線上にあるものだったんですよ。でも、自作の「RAGE」は、自分の中ではもっとシンプルになものになるんです。だから「PERSONA」までの流れがここから変わってくいくのかな、と。バンドってコアな方向に深くいったら、またシンプルな方に戻っていくというのを繰り返しながら螺旋階段を上るように成長していくんだと思うんです。自分たちがとことん構築して作り上げていくものは『OUSIA』〜「PERSONA」である程度一つの形を迎えた。次の「RAGE」からはもう少しシンプルな形を目指す流れになると思います。
──つまり「RAGE」からバンドとしてのネクストステージがスタートする訳ですね。
そうですね。音楽的にも8弦ギターを使いますから、サウンド的にも変わってくるし。
──ギタリスト2人とも8弦ギターに?
ええ。
そこで、今回僕たちが追求したいのは、振り切ったヘヴィネスなんです。それで、次のタイトルにもなっている「RAGE」、人間の怒り。それを重量感あるサウンドで表現できたらと思ってます。他のバンドにできないヘヴィネスが生まれると思うんですよ。聞いたことないんでね。8弦ギターが2本もいるバンドなんて。へヴィメタルバンドでもなかなかやらないようなトライで、人間の怒りをサウンドで体現してみたいと思って8弦ギター2本導入に踏み切りました。
僕らもそれがどんな音になるのか、まだ制作中なんで分からないんですよ。
未知の世界ですから。ギターがベースのレギュラーチューニングと同じ域まできてる訳ですからね。よく、いろんな人に聞かれるんですよ。「そうなるとベースは何を弾くの?」、「どうするの?」って。でも、8弦ギターを使おうっていいだしたのは僕なんですよ。ツインギターで8弦持ったらおもろいやん!って(微笑)。
普通ベーシストが嫌がることなのに、これはベーシスト自ら提案してきたことなので。「君がいうなら僕らはやるよ」と。
それぐらい、誰もやってなくてインパクトあることがやりたかったんですよね。