──その、ツアーが始まってすぐに『孤独な夜とシンフォニー』を出して、ツアー終盤の1月にリリースされるのが、4枚目のミニアルバム『ジレンマとカタルシス』。これはもしかして、もともと1枚のアルバムを二つに分けたとか?
ヤスキ いや、4枚目の楽曲は、3枚目の制作の時はほとんどなかったんで。ジャケットの通りなんですけど、2枚のテーマを“夜と昼”にしたかったんですよ。なんで夜と昼にしたか?というと、制作期間が約1年あって、できた曲を並べた時に、「感情性理論」「サカナ」「チャンネル」とか、エモーショナルでダークな雰囲気の、夜が似合うような楽曲が多かったので。“夜っぽいね”という話をしていて、“次は昼の曲を書こうか”というところがきっかけなんですけど。それまでは“出会いと別れ”にしようかとか、対になるものを考えてたんですけど、結果的にこうなりました。対になる言葉を探してたんで、『ジレンマとカタルシス』も対になって、2枚はつながってるんですけど、1枚の中でも完結してるみたいな。
──ああ。なるほど。
ヤスキ でも4枚目は難産でした。作ってはボツ、作ってはボツの繰り返しで。「10」と「スモールワールド」の2曲がもともとあって、そのほかにあと5曲あったんですけど、“これは今じゃない”という話になって、作り直すことに決まったのが1か月半前とか。それで「ジレンマ」と「君の居場所」を作って、どっちかがリード曲になると思って、自信満々で出したんですけど、ならなかったんですよ。
──あらら。
ヤスキ 3人の意見が一致しなくて。で、もう締切まで1か月切ってるんで、僕も焦って、すごい落ちた時期があったんですけど、その時期に「カタルシス」が出てきたんですよね。落ちてる時じゃないと書けなかった感じです。満たされてたら、たぶんこういう言葉使いはできなかっただろうなと思います。
──それがリード曲に。まるで逆転サヨナラホームランのような。
ヤスキ 結果的に、落ちててよかった(笑)。でもレコーディングの日にちが決まってるにも関わらず、曲にOKが出なくて、OKが出てもそこからバンド・アレンジにしなきゃいけないし、すごいプレッシャーでした。僕が作らないと何も始まらないのに、曲が作れなくて、日にちがなくて。本当にぎりぎりでした。
ニケ 追い込まれてる感はハンパなかったですけど、歌詞で見たら、だんだん本音が出てきたというか。今の一番ベストな、思ってることを書けてるんじゃないかなと思うんで、逆に良かったのかな?と。5曲入れ替わったんですけど、そっちのほうが良かったですね。
ヤスキ あのまま行くと、ちょっとスペイシーなタイトルになってたやろな。星や宇宙にまつわるような曲が多かったんで。今のユビキタスを映すものにはならなかったかもしれない。
──「カタルシス」はほんと、いい曲。“時間制限のある命で旅をする”という歌詞を聞くと、ユビキタスがずっと歌ってきたテーマが、全部ここにある気さえします。
ヤスキ シンプルなんですけど、重さがありますね。でもこの曲は…僕は曲を書いたあと、誰が書いたかわかんなくなるんで。1~2か月たつと、読み返して“こういうことを思ってたんかな”とは思うんですけど、この歌詞を今書けるか?と言われると、まったく自信ないです。なので、歌詞に対して何か言ってもらっても、“そうなんですね”って、他人事みたいになっちゃうんですよね。広がんないですよね、僕と歌詞の話をしても(笑)。
──そこ心配しなくていいです。こっちで勝手に読み解きます(笑)。
ヤスキ ただ「カタルシス」は、ずっと悩み続けてた、具の部分がいっぱい出てますね。“悩むのもそろそろ飽きてきた頃”とか、感想文みたいな。
ニケ 歌詞が人間くさい。今までよりも。
ヤスキ スタイリッシュな歌詞が書けたと思ってたのにな。めっちゃドロドロしてる。
──確か、以前にインタビューさせてもらった時、あまり意味を限定しない、どっちにも取れる言葉をあえて選ぶことが多いと言ってましたよね。
ヤスキ はい。今回もそういう感じですけど、よりシンプルを意識しましたね。この曲だけもうライブでやってるんですけど、今やっと明確に、自分がしたいからライブをしてるということをわかるようになったのが、「カタルシス」なんですよ。…このアルバムって、人の人生みたいな感覚、ないですか?
──あります。ジレンマとカタルシスの繰り返しじゃないですか。人生は。
ヤスキ でもみんな、音楽もそうですけど、何かを信じてあきらめずに生きているわけで。僕らは音楽をする側として、100%全面的に音楽を信じてくださいというライブをしたいというところに、自分らを落とし込んでいて。それを今は全力でやってる感じですね。
──ヒロキさん。アルバムの手ごたえは。
ヒロキ 今までにない感じの曲が、けっこう多いと思います。メンバー個人個人にも、いろんな挑戦があって。
ヤスキ しかも、セカンドの頃とは違う挑戦だよね。ファーストに近いと思うんですよ、この『ジレンマとカタルシス』は。衝動とか、素直な部分が出ている作品だなと思ってます。セカンドを出した頃は、ポップに表現しようとしたんですね。それとはまた違う挑戦で、エッジ感を損なわず、かつ寄り添えるような言葉とか、そういう面でのチャレンジができたんじゃないかなと思います。ちょっと、かっこよくなった感じ。ね?
ニケ いいアルバムだと思います。自信作です。
──1月は大阪、2月は名古屋、そして3月12日には東京・渋谷WWWでツアーファイナル。東名阪ワンマン・シリーズでは、何を見せてくれるのか。
ヤスキ 今の僕らのコンセプトとして、音楽の力を信じて、みんなと一緒に楽しめたらいいなと思ってます。この間スタジオで、ワンマンどうする?っていう話になって、過去曲を1曲ずつやっていったんですけど…ほとんどできなかった(笑)。
──あら。なぜ?
ヒロキ その当時やってたことじゃないことを、やってしまったりするので。全然違うものになっちゃう。
ヤスキ それはそれで、いいアレンジなんですけど。当時の感覚が抜けきらなくて、これは違うと思ったり。
ヒロキ もっと自由になれば、もっと良くなるんじゃないかな。
ヤスキ そうやっていく中で、やっぱりファーストっていいなという話になったので、そういうものもやっていきたいし。ユビキタスを結成した時からの流れを、うまく表現できたらいいなと思ってます。ワンマンでは、その経過を見せたいです。ライブですけど、2時間の劇というか、自分らの思いをちゃんとかみしめてやりたいと思います。気がつくと、結成から4年なんで。
──4年間の集大成がこのライブに。
ヤスキ あっという間でした。今まで生きてきた中で一番速かったです。でも、まだまだできることがあるなと思うんですよ。全然時間が足りないし、もっと貪欲でいたいなと思います。
■「カタルシス」Music Video