──オープニング、かっこいいです。短いイントロですけど、おおっ!という気持ちになれる。
すごい歪んだ声で歌ってますから。今まで18年間活動してきて、ずっと応援してくれたファンが聴いたら、“これ、椎名さんのCDだよね?”っていうぐらい、戸惑う曲にしたかったので。なんでこんな曲入れたの?って言われたかった(笑)。わざとです。
──そしてラストに収録されている新曲「ゴゾウ☆ロック」については?
過去にもたくさんいい曲があって、しかもランキングのトップ10に入った曲を抜いてまで、なんでこんな曲入れたの?って言われたくないじゃないですか。“ああ、この曲だったら入れるよね”という曲にしなきゃいけない。だったら5年の集大成的な感謝の曲だろうと。たとえばここでめっちゃ不倫の歌とか、何だこの曲ってなっちゃうじゃないですか。ベストアルバムの最後に。
──そりゃそうです(笑)。
そういう縛りを設けていったら、おのずと感謝するしかなくなっちゃった。書きたいとかじゃなくて、書かざるをえなくなってきた。今までありがとう、これからもよろしくね、という曲になっちゃいましたね。もともと“五臓六腑”というテーマから始まっていて、それは5周年が終わって、このアルバムを出した1週間後に6周年を迎えると。5から6になるということで、“五臓六腑”というタイトルが浮かんだんですけど、めちゃくちゃ硬いんですよ。何画あるの?って。それで、It goes on ROCKという歌詞も使ってたんで、うまく混ぜてカタカナにして、キャッチーな感じにしてみました。そしたら“☆”がほしくなったんで、それも入れて「ゴゾウ☆ロック」。…ほんと適当ですね俺って。自分でしゃべっててそう思いました(笑)。
──こういう自己紹介ソングといいますか。自分を振り返る曲って、節目節目でありますよね。
1枚のアルバムに必ず1曲はありますね。ファースト・アルバムには「RABBIT-MAN」があって、セカンドには「いざ尋常に」という曲があって。3枚目には「MY LIFE IS MY LIFE」という曲が入ってますけど、それもやっぱり自分のことを歌っていて。アルバムの代表曲に必ず自分の思いを入れるのは、癖なんでしょうね。それを避けたくて、『MY LIFE IS MY LIFE』の時には絶対作らないと思ってたんですけど、マネージャーから“アルバムのタイトル曲は作りますよね?”と言われて、うわー言われたかと思って、“あ、作ります”って(笑)。それまで作る気なかったのに。流されやすいんです。長いものには巻かれろ、と。
──「ゴゾウ☆ロック」の歌詞、最高ですよ。“飽き性な上に持論を展開してイイワケばっかりです”とか。ぶっちゃけるにも程があるというか(笑)。
僕は本当にそうですよ。言葉巧みに言い訳して、“じゃあしょうがないよね”と言わせるという。結局逃げてるだけなんですけど、そういう自分がすっごい好きです。という歌詞です(笑)。だから過去の歌詞も散りばめて、「RABBIT-MAN」の“淋しいと死んじゃうヤツ”とか、“セコい計算は早い”は、SURFACEのデビュー曲「それじゃあバイバイ」から。“まだまだ歌い続けよう自分の為に”も、18年前のファースト・アルバムの中の曲の歌詞そのまんまなんですよ(「まだまだ」)。昔から応援してくれてる人は、“あれ?この歌詞知ってる”ってわかるし、初めて聴く人も違和感なく聴ける。どちらも楽しめるシークレット・ワードで、昔から応援してくれてる人ほど深みを感じるという歌詞になってます。
あれはね、本番のレコーディングなんですよ。普通は口パクで撮るんですけど、ガチで歌ってるレコーディングなんです。
──そして同時リリースになるミュージック・ビデオ集『RABBIT“FILMS”MAN』もぜひ紹介を。
ベストCDと映像集が同時にリリースされて、同じ曲が入ってるのはどうかな?と思ったんですけど、映像もベストアルバム的に見れるよな、と。でもそれだけじゃつまらないなと思った時に、副音声やります?と言われて、しゃべったわけです。“あー始まりました。何でしょうねこの衣装、ダサイですね”とか(笑)。7曲ぶんしゃべったんですけど、この映像はこういうふうに撮ったんですよとか、裏話をまったく言わないまま終わっちゃった。じゃあもう一本録りますかって、副音声がふたつ入ってるんですよ。バージョン1とバージョン2。
──そんなの初めて聞きました(笑)。前代未聞じゃないですか。
買って聴いてくれればわかるんですけど、内容はどっちもないです(笑)。すごい中途半端な副音声が2回入ってます。最後に“ありがとうございました”も何もないんですよ。“あ、終わっちゃった”で終わっていく。本当にだらしないんですよ。
──だらしないといえば、「ゴゾウ☆ロック」のミュージック・ビデオ。最後が“つらいなーもう”というボヤキで終わるという(笑)。大笑いしましたけど、何ですかあれは。
あれはね、本番のレコーディングなんですよ。普通は口パクで撮るんですけど、ガチで歌ってるレコーディングなんですよ。だから終わったあとに疲れて“つらいよー”って座ってるところを撮られて、そこを使いやがった(笑)。ふざけやがってと思いましたけど、面白いからいいかと思って残しました。とりあえず資料用でカメラを回してたんですよ。メイクもしてないし、髪の毛ばさばさだし、衣装も適当なTシャツで、ただのおっさんが必死で歌ってる映像なんですよ。でもファンの声としては“椎名さんの生々しいところが見れてすごくかっこいいと思います”って言うんですよ。ファンはありがたいですね。そのまま魔法にかかっててくれと思いますけどね(笑)。