──そんな時に、Base Ball Bearからツアーのサポートの話が来て。
最初は乗り気じゃなかったんです。(脱退した)湯浅とは仲が良かったので、彼がやめて僕がギター弾くっていうのはピンと来なかったから。それに僕はボーカリストだし、フロントマンだし、バンドの看板背負ってた人間だから、サポートって観点も自分の中で違うと思ってたんです。でも、ものすごく引きで見ると断る理由がなかったんですよ。フラットに見て、「ギター弾きたい」と思ったんですよね。正直。人前でギター弾きたいなって。
──やってみて何を感じました?
バンドっていいなあって思いました。メンバー抜けて大変なんだけど、それを乗り越えようとしてるところもすごく羨ましかったし。でも、僕(にとってのバンド)はドーパン以外にあり得ないですからね。今組むとなるとメンバーは気の合う仲間みたいになっちゃうと思うけど、バンドってそうじゃないじゃないですか。気の合う仲間で組んでないから面白いし、上手くいかないし、傷が付くし、脱退とか解散とかになる。きっとみんな運命的なところで組んでるんですよ。僕も解散する時はしんどかったけど、ドーパン以外だと僕はソロ。たとえこの先新しいバンドを組んだところで、きっと僕はずっとソロアーティストなんだなっていうことも、同時に思い知ったんですよね。
──じゃあ今度こそ、気持ち切り替えて2ndアルバムに向かって行くわけですね!?
んー、いやぁ、まだ葛藤はありました。だって昔みたいに、中目黒の青葉台スタジオを1ヶ月押さえてとかじゃない状況なのは知ってるんで(笑)。でもBase Ball Bearのサポートやってみて、ツアーやりたいなとか、音源作りたいなとか、そういう気持ちが出てきたのも事実。プラス、別で書いてるコラムが結構好評だったりして、日本語で表現することが楽しくなってたんです。今までは曲の段階で9割くらい情熱を注いでるから歌詞ってあまり考えてこなかったけど、その1割だったところから創作意欲に火が付いたんですよね。日本語ってあまり好きじゃなかったし、照れもあって向かい合ってこなかったけど、そこを乗り越える作業は楽しかったですよ。言葉は予算かからないし(笑)
──確かに(笑)
だから言葉という意味では、取り返したものがすごくあったんだと思います。昔の自分というか、そこと繋げながら接着しながら、何か取り返せたのかもしれないなって。1stの時の日本語は照れと狙いがあったけど、今回は全くないですからね。こういう言葉はダサいと思われたら嫌だなとか、そういうのも全然なかった。
──アルバムタイトル「And I‘m a Rock Star」も直球ですしね。これ、曲が先にあったんですか?
いや、アルバムのタイトルが先でした。「スティング/サンバ」って仮タイトルの曲がひとつあって、最後の最後に、こういうことを歌いたいなって思ったんですよ。レコーディング直前でしたけど、アルバムのモチベーションになってる気持ちなんで。
──そのまんまの言葉で気持ちが表されてると思いますが、どうしてここまで歌えたんだと思います?
解散から5年経ってて、その間に事務所に戻ったりドーパンの曲やったりして、いろいろ言われたけど「うるせえ」って思えたからですかね(笑)。Base Ball Bearとやって、もうバンドマンじゃないんだなというのもわかったし、そういう機会をもらえたこととかも含めて、これまでの時間があったから歌えたんだと思います。だってこのタイトルだって、デビューの時に付けたらケンカ売ってんのかって話じゃないですか(笑)
──それも面白いですけど(笑)
1stがあって、ツアーとかいろいろ失敗した自分がいて…って、全部がここに繋がってるんです。僕らみたいな仕事って、その繋がりを知ってもらえるというか、フルカワユタカ物語を見てもらえるところも醍醐味だと思ってて。そういうアルバムだと思うし、アルバムタイトルでもあるなって思います。
──いわゆるドーパン的なアプローチの曲も、しっかり歌が真ん中にある曲も、同じように胸を張ってますよね。言葉の役割も大きいと思いますが、いわゆるライブハウスだけにとどまらないポップさもあるアルバムだと思います。
やっぱり歌詞なんですよね。こうやって自然に作ったことと、ちゃんと作り手として歌詞を書いたことと、それが届かないわけないはずなので。これまで、音楽家だから音楽を一生懸命作ってそれが届きゃいいと思ってたけど、ものづくりの一環として歌詞というのも当然ある。そこもちゃんとやった分だけポップに感じるのかなっていうのは、自分でも聴いてて思います。
──今回は、提供楽曲のセルフカバーを含む全10曲が収められてますが。
セルフカバーは、前作からの記録集という意味もあるので入れたいなと思いました。「真夜中のアイソレーション」とかはもっとアレンジとか作り込んでもよかったんでしょうけど、こういうぶっきらぼうな曲を歌詞で持っていくっていう作業は初めてやりましたね。”やり過ぎない”どころか”やらなさ過ぎ”もいいかなって(笑)。逆に「lime light」みたいにやり過ぎちゃったものも、ストンとポップな感じに落とせたかなって思います。歌詞も含めてね。
──この作品を携えて行われるツアーも楽しみですね。
ライブ、すごく楽しみ。早くやりたいんですよ。フルカワユタカの音源2枚目ですから、その2枚をどう今回のショウに持っていくか。そして、この1年半くらいはドーパンの楽曲を中心にやりましたから、そのあたりがどう繋がっていくのかっていうのが、たぶんアルバムタイトルと、アルバム制作のモチベーションとの答えにもなるんで。音源を作ってからツアーやるのは久々なので、ちゃんと出来たらいいなあって思う。あとは時期的に、大雪とかにならないことを祈ってます(笑)