物語と物語の間に漫才みたいな物が入ったり、「こんなに何でもやって良いんだ」っていう楽しみ方やケレン味みたいな物はあると思います。
──今作のキャッチに「バカバカしくて、切なくて笑って泣ける物語」とありますが、現在主宰している、“タクフェス”のモットーが「楽しめる、グッとくる、盛り上がれる!」だったりして。宅間さんのやりたいことは全くブレていないですよね。
作品によってのカラーはありますけど、タクフェスではいつもお祭り騒ぎのようなことをやってるんで。人生賛歌のようなこの作品も、年の瀬にお祭り騒ぎをするのにもピッタリですね。この作品は僕の原点というよりは、ちょっと特殊な作品なので。オムニバスでたくさんの人が出るってところで色んなやり方があるし、出る役者の演じる何かによって誰が一番印象に残ったとか、3チームあるとチームごとに目立つ人が違ったりして。やってて面白いですし、役者の個性もしっかり感じられる舞台だと思います。普段のドラマツルギーみたいなところで勝負している作品と違って、物語と物語の間に漫才みたいな物が入ったり、何でもアリの舞台でもあるので。お客さんにしてみたら、「こんなに何でもやって良いんだ」っていう楽しみ方やケレン味みたいな物はあると思うし。4本とも作品のカラーも全然違うし、構成の面白さもあると思います。
──バカバカしさや面白さは、作品を作る上でいつもこだわっているところなんですか?
関東の人間なので、吉本を見て育ってというのもないんですけど、いまは吉本新喜劇の辻本茂雄さんと舞台「つじたく」をやるようになったり。やっぱり、お客さんを面白がらせてなんぼみたいなところはずっとありますね。なんでもそうですけど、お客さんが来てくれなかったら、次はないですから。20年続けてこられたのは見に来てくれるお客さんがいるからで、そこにはすごく感謝してますし。安くないチケットを買っていただいたお客さんに、それに見合う満足度を得られているのか?というところは常に考えています。
──今回、チケット代に関しては割とお求めやすい価格ですよね。
芝居というと堅苦しいとか、難しいというイメージがあるみたいで。敷居が高く感じたり、アレルギーのある人も多いんですけど。僕はなるべく色んな人たちに見てもらいたいと思っているので。初めて芝居を見る人も来やすいと思います。あと、芝居は出演する人がお客さんを呼ぶようなところがあるので、今回出演する27人の出演者にも色んな人を呼んでもらって、色んな人に見ていただきたいですね。そしてまた来年、全てのキャストが入れ変わったら、また新しい層の人に見てもらって。この作品が、芝居を見たことがない人の敷居を下げていくキッカケにもなれば良いなと思ってます。若い役者を見て「名前も知らないけど、こんなに凄いんだ!」とか、「無名だけど、良いじゃないか」と思ってもらう機会になったら良いですね。
──若い役者さんもお客さんに何かを残したいという気持ちがあるでしょうし、若い役者さんたちの気合いがぶつかり合うエネルギッシュな現場になりそうですね。
そこは一概に言えない所なんですけどね(笑)。オーディションの時の役者の熱に感化されて、稽古が始まるじゃないですか? そしたら、その時のモチベーションのまま稽古に来ると思いきや、そうでもなかったりして(苦笑)。こっちは本番まで一ヶ月半、熱量の高いまま突っ走っているんですけど、エンジンの掛かり方がまちまちみたいなんです。
──27人もいたら、一人くらいサボってても分からなそうですしね。
ま、それは分かりますけどね。
──うわっ、怖い!(笑) 「WHAT A WONDERFUL LIFE!」というところで、この年になったから分かる、人生の素晴らしさってありますか?
人生の素晴らしさとはちょっと違いますけど、役者とかクリエイターって、不幸なくらいの方がいいんだなというのは思いますね。全てに満足している幸せな人が作るものと、苦しみや悲しみを知ってる人が作るものだと、背負ってるものが違うんですよね。人間、そんな順調に人生を歩んでいる人はいなくて。痛みや悲しみを知る者同士だからこそ、共有出来る部分ってあるじゃないですか。みんな幸せになりたいんですよ、本当は。でもクリエイターとか表現者ってどこか欠けている部分があってこそ、それが個性や味になるような気はしますね。あと、僕の場合だと、子供が生まれる前と後で価値観がすごく変わりました。「子供のためなら命を捨てられる」という言葉も理屈では分かってたんですけど、それが理屈じゃないってところも重々分かったし、自分も自信を持って言えるようになりました。また15年したら、また考え方も変わるかも知れないですけど。自分の人生観とか価値観を決めるってところで、子供の存在は大きいですね。
──年を取った時、決して順調ではなかった人生をひっくるめて、「人生は素晴らしい!」と言えたら最高ですよね。今年一年を楽しく過ごせた人も、辛いことがあった人も、年末に「WHAT A WONDERFUL LIFE!」を見て「良い1年だった!」と思ってもらいたいですね。
素敵なキャッチフレーズですね(笑)。良い映画や舞台を見ると非常に幸せな気持ちになれるし、誰かに伝えたくなるじゃないですか?そう思ってもらえる作品を作っていきたいなと思っているので。年の瀬の忙しい時ですけど、ぜひ足を運んで頂きたいです。
■宅間孝行「WHAT A WONDERFUL LIFE!(再演)」に向けてコメント動画到着!