心屋仁之助、心理カウンセラーの彼が音楽を奏でる理由、永年の夢だった日本武道館での独演会で区切りをつけたいこと、様々を語る。

──実際にライブでもそうなんですか？

実際にライブで歌う時は、ライブ終わった後の焼き肉を考えていたり(笑)。そのほうがうまく聴けるらしいので、あまり心を込めないようにしています(笑)。心を込めると変な情感が入ってきて単に暑苦しくなるので、記号として届けるイメージですね。伝わってくれと思った時は伝わらないけれど、何気なく歌ったほうが伝わったりするんです。歌いながら次に喋ることを考えているので、だいたいの場合、歌に気持ちは込められないです(笑)

──むしろ、上の空だったり？

そう、カウンセリングしてても講演会でも、こちらが思いを込めて言った一言よりも、何となく口に出した一言のほうが響くんです。この人に伝えようと思った時って、脳みそを使って思考してその言葉を出してるんですけど、何も考えない時はどこかから繋がった言葉がポロッと出てくる。思考を入れないほうが届きやすい。だから、本を書く時でも適当に、想いを込めず書くほうが喜ばれますね(笑)。伝わってほしいと思ってプレゼントしたものがそれほど喜ばれなくて、それほどでもないものを喜んでくれたら楽しいですから。楽なほうを選んでいます(笑)

LIVE PHOTO：保田 敬介

 

──とはいえ、ライブも増えてきて、お客さんも盛況で。

ありがたいです。始めた頃はうまく歌おうと思っていましたけど、そういうのはなくなりました。極端に言えば手拍子さえいらない。楽曲を提供する側としたら、ノリノリのほうが楽しんでくれていると思いがちですけど、ゆっくり聴いていたい時もあって。ノリノリの曲でも静かに歌詞を噛みしめたい時もある。その人の言葉を聴ける状態を勝手に作ってほしいですね。僕のライブも手拍子をしない人が多くて、手拍子すると聴こえないからって言うんです。無理に手拍子して一生懸命乗ってもらうのではなくて、自分にとって一番言葉が入る状態を作ってくれたらいいよと。そういうスタンスでライブをやっているので、ずっと椅子に座ったままでもいいんです。

──特にライブならではの演出もなく？

やりすぎると本来の目的を散らしてしまうという気もするし。今回の武道館はギター1本でやるつもりなんです。だから“独演会”。ただ、やるって言ってから“しまった”と思ったんですけど(笑)。僕のギター1本で受け止めてもらうことができるのか(笑)。僕がライブを観に行く時は、人によるんですけど、ギター1本のスタイルが大好きで、その曲を知らなくても頭に入ってくる。でも、全く知らない曲をバンド編成でやられると置いてけぼりになるんですね。今回は全く曲を知らない人にも来てほしくて、その人たちにも曲を届けようと思ったら、ギター1本というスタイルがいいかなと思ったんです。超怖いですけど(笑)

──そもそも、武道館でライブをやりたいというのは、以前から目標だったんですか？

2007年ぐらいから言ってたみたいです。音楽好きの人の甲子園みたいなものじゃないですか。武道館でやりたいなって冗談で言ってたら、実現したんです。目標じゃなくて、遊びの延長みたいな。あんな場所で心理カウンセラーがライブやったら面白くないかって言ってたら、ホントになったので、今焦ってます(笑)

LIVE PHOTO：保田 敬介

 

──あれこれ入れようとしないで、潔く一人なんですね？

あれこれ入れたくなるんですけど、武道館であえて一人という大冒険(笑)。ただ、ライブ1本に絞るのか、お喋りも入るのか、まだ迷っているところです。あと、武道館に向けて、ギター1本では寂しいと思って、今年の6月からピアノを始めたんです。6月から始めたピアノで武道館に立つんですから(笑)。でも、それでいきなりはまずいので、9月、10月に小さなライブハウスでピアノも披露して、実践トレーニングをやっているところです。今はピアノで曲を作ってみたり、いい形になるんじゃないかと勝手に思っています。

──今回の武道館ライブにあたって、意気込み、想いをお願いします。

僕がサラリーマンを辞めて心屋という形でカウンセラーを始めて、個人事業主の届けを出したのが2007年の2月8日。10周年なんです。10年走ってきて人生のスタイルが変わってきたんですよ。今までは音楽のスタイルもギター1本でやることが多くて、人生も一人で生きてきたところがあったんです。人に助けてもらったりお願いするのが苦手だったんで、一人で頑張って生きてきたんですけど、それだと限界があるということがやっと分かった。だから、一人で生きていく人生の最後にしようと思っています。これが新しい人生の始まりですけど、一人で生きてきた人生の終わりにしようと。50数年間、一人で生きてきた集大成を行い、独演会で終わらせて、みんなで生きていく世界に変えていこうというメッセージを込めています。だから、最後のわがままで一人でやらせてね、ということです。この10年間、僕が生きてきた姿を見てもらって、一人で生きてきたお客さんにも、もっと緩めて、人にいろんなことを頼んで生きていこうよと。実際に武道館ライブが実現するまで、いっぱいの人に助けてもらってますから。そういう意味で、一人でやるのはこれで最後にします。これが終わったらどうしようとかも決めてなくて。大きな一区切りです。もしかしたら、それで自分の中で気が済むのかもしれないし、あとは自分の変化を楽しみたいと思います。

──こちらのカフェ「心がCafeになる」は、武道館当日も営業されているそうですけど？

ここは、思った以上に手がかかって大変でした(笑)。10日間分の映像を撮って日替わりで流れるんです。展示品もたくさんありますし。僕のお客さんは心屋のファンだということを知られたくない、照れくさくいという人が多いんです。そういう人たちが心置きなく集まれる場所なんです。そこにグッズも用意したり、他では見られない楽しい遊びだと思ってください。武道館の前日、当日も営業する予定です。武道館と連動した企画なので、全国から来ていただいたお客さんに武道館の前後にも遊んでくれたらなと。終わった翌日から武道館の映像が上映できるようにしていきますから。僕も顔を出そうかな(笑)

 
■心屋仁之助「2016年MONDOU（問答）LIVE Vol.2ライブ映像」が到着！