──ギターの音色もいつもとはちょっと違った印象だよね。レトロな音色だよね。フレーズはベンチャーズ的な空気感だし。
うん。普段はあんまり使わない音色ですね。敢えて古さを感じさせてるような。歪んでない感じ。
seekさんが原曲を上げてきたとき、どういう方向性にしようかメンバーでいろいろと話し合ったんですよ。そんな中で、僕的には最初からレトロな印象があったんで、それをどういう風にMix Speaker’s,Inc.っぽくやっていこうかって話をしていきましたね。結果、Mix Speaker’s,Inc.っぽくもなったし、いままでにないような1曲にもなったし。いいところに着地出来たんじゃないかな?って思いますね。すごく不思議な空気感が出せたんじゃないかな?って思います。
──そうだね。ベースはアップライト?
アップライトを使ってるとこもありますね。頭の部分とベースソロの部分はアップライトですね。後はエレキです。
──全体のサウンドの中に馴染ませてあるよね、ベース音は。
うん。そうですね。
──ちょっと表題曲っぽくないというかね。カップリング的な、隠れた名曲っぽい印象。ドラムもちょっとマニアックだよね。
そうですね。ちょっと棘を入れた感じというか。シングルっぽくない曲だから、自分の中ですごく難しかったというか。でも、逆にストレートに叩くと、純粋にすごくいい曲になってしまうんで、そこで止めておきたくなかったんです。
──敢えて毒を?
そう。純粋にいい曲にするか、マニアックな曲にするか、どっちに振るかはドラム次第だったというか。なので、この曲に関しては、珍しく何パターンかドラムを考えて、持って行ったんです。その結果、劇的に癖の強いヴァージョンになりましたね。
それによって、新たなバンド感が生み出せたと思うんですけど、Sさんっぽさがより前面に押出せた感じになりましたね。レコーディングしてたとき、“ドラム、何してんねやろ?”って、あまりの複雑さに頭の中、ハテナ?でしたからね(笑)。
1小節ごとに違うくらいのマニアックなことしてますからね。
──だからこそ、この不思議な空気感が生み出せてるんだね。
そうですね。とことんやりきりましたね。
──歌詞も曲の雰囲気に当てていった感じ?
そうっすね。暗いトーンの感じをイメージしたというか。タイトルが最初から“最後の晩餐”で決まっていたような感じだったんで、そこに合せて書いていったんですよね。
──歌い方で意識したところはあった?
そうですね。この曲は、特に曲の雰囲気に合せていった感じで歌いましたね。自分的には、今まで歌ってきた曲とは違う引き出しを開けた感覚でした。力強く張るよりも、流れるように曲に乗る感じで歌いましたからね。
──MIKIは?
俺は、この曲に関しては敢えて角が立たない歌い方をしたかな。刺々しくなくね。
カップリングの「JUNKY BAD HEELS」は、またまったく印象が違うライヴ感重視の1曲なんで、その対比も面白いと思いますね
──「JUNKY BAD HEELS」はAYA曲だね。
ライヴでずっと使える曲にしたいなと思って、「最後の晩餐」のイメージはまったく意識せず、大きなテーマで作ったんですよ。
──Mix Speaker’s,Inc.ならではの、JUNKなノリというかね。
そう。1つの武器的なとこかなと。Mix Speaker’s,Inc.の得意技的なとこでもあるなと思いますね。
この曲自体は、夏のライヴからやってきてたんで、ライヴを想定した盛り上りが、ライヴでそのまま以上の形で返ってきてた感じでしたね。「最後の晩餐」との対比がすごくあるので、バンドの振り幅を感じてもらえるシングルになったんじゃないかなと思います。
ドラムとしても、対比を付けましたね。こっちの曲はストレートに叩きましたね。
──ストレートとはいえど、やっぱり難解なS節は出てるよね。
ですね(笑)。こっちのドラムは、僕の中でハードロックなイメージなんです。
──なるほどね。ボーカルの印象としては、MIKIとNIKAの色がハッキリと別れているよね。MIKIはよりキャラクター度の強いシニカルな歌い方だし、NIKAはいつもよりも低めな声で歌ってるし。
そうなんですよ。ちょっと意識的に作った声で歌ってますね、この曲は。これも、いままでの引き出しにはなかった歌い方なんです。MIKIくんも、すごくキャラクター作ってる感じの歌い方なので、そことの対比を、いつも以上に考えました。
自分的にはそこまで意識した訳じゃなかったけど、「最後の晩餐」と比べて言うのであれば、こっちは刺々しい歌い方で歌ったかな。
──seekもこの曲では歌ってるよね。
久々に歌わせて頂きました(笑)。ダミ声で(笑)。Bメロ歌わせてもらってるんですけど、どう歌っても吉幾三さんにしかならへんっていう……。
(爆笑)
レコーディングのときに、みんなでそんな話になって(笑)。歌いまわしなのかなって思いましたね。
──この曲の作詞もMIKIだよね。
そう。この曲の歌詞は、わざと口悪く書いた感じ。わざと雑に書いたっていうかね。敢えて汚い言葉使いを意識して書いたっていうか。
──MIKIがちょっと乱暴な言葉で歌うのは、キャラクター的にも、ボーカルスタイルとしてもすごくハマるんだけど、“絶叫をくれ”って、NIKAが歌っているから、すごく違和感があって(笑)。
そうなんですよ!そういう言葉を歌うことは、いままでなかったですからね。
──MIKI的には、そこをNIKAに歌わせたのは、狙いだったの?
いや、最近AYAくんが曲持ってくるときって、なんとなくのラフの歌詞をAYAくんが書いて、仮歌を入れてくることが多くて。”絶叫をくれ”っていう部分は、AYAくんが持ってきたワードをそのまま使ったとこでもあったんだよね。
俺として、そこを歌うのはMIKIくんのイメージだったんやけど、音に対してハマりのいい言葉の語感を優先したって感じやったんやと思う。