──なるほど。そして、『山人音楽祭』開催直前にはシングル「ダディ・ダーリン」がリリースされます。この曲を聴いて、『山人音楽祭』への意気込みを聞いて、僕はG-FREAK FACTORYってすごく聴き手や音楽ファンのことを信じてるなと思いました。この曲もきっと伝わるはず、何か感じてくれるはずと心から信じて、シングルカットしたんだろうと思いました。
茂木 実はこの曲、前作を制作した時に作った曲で。僕の作詞方法って携帯とかにメモした言葉を大きな画用紙に細かい字で書き出して、言葉を並べ替えて作っていくやり方なんですけど、「ダディ・ダーリン」は他の曲が出来た余りで作ったような曲だったんです。
──え、そうだったんですか?
茂木 その代わり、一切整えていないんです。というか、最初にサラッと書いた歌詞をもっとカッコ良くしようと思って、色々と試したんですけど、結局、最初に書いた歌詞が一番良くて。いまの時代に歌わなきゃいけないとかの使命感も全くなかったし、あまりにサラッと出来た歌詞だったので、本当にこれで良いのかな?と思ったんですけど。繰り返し聞いてるうちに涙が出てきて、その時初めて「これでいいんだ」と思えたんです。「この曲がどう評価されても、売れても売れなくてもいい。俺はこの曲が好きなんだ!」と思えたんです。そういう意味では、この曲を聴いてくれる人のことを信じてますね。
──自分が涙した曲にきっと何かを感じてくれるはずだと。サウンドもシンプルだからこそ伝わるものがあって。聴きながらすごく色々考えさせられたし、想像したし、グッときました。このタイミングでリリースしたことには理由があったんですか?
茂木 これは後付けだし偶然なんですけど、シングルが発表される2日前が、死んだじいちゃんの100歳の誕生日なんです。最初、じいちゃんに手紙を書くつもりで書き始めて、温故知新で過去の人がいまの時代を見たらどう思うだろうか?というのを書いた歌詞だったので。何か意味があるんじゃないかな?とは思いますね。
──なるほど。サビの夕焼け感やノスタルジックな雰囲気には、古き良き時代に戻ることが出来ない、寂しさや無常観も感じました。
茂木 いや戻れますよ、きっと。僕は戻れると信じてます。いつかまた、素っ裸になれる時代が来るんじゃないか?と思ってます。情報化社会で色んなものを簡単に手に入れられる時代になったけど、その分失ったものも多くて。聞きたくないことまで聞こえてくる時代になって、情報さえも信じられなくなっていますが。僕は信じない力よりも、信じる力の方が絶対に強いと思うんです。スマホに支配されて、自分の国や政治さえ信じられない時代に、行きつくところまでほぼほぼ行って。実は何も手に入れていなかったことに気付いた時、もう一度あの頃に戻れると思うんです。だからこそ昔をちゃんと知ってる俺ら世代が、何もなかったけどドラマチックだった時代を伝えなきゃいけないと思うんです。
──その諦めずに信じる姿勢が本当に最高だと思います! そして、この曲も生で届けるべく、『山人音楽祭』開催後の10月からは全国リリースツアーが始まります。
茂木 まだまだ会えていない人がたくさんいるので、何回でもしつこく行かなきゃダメだと思っていて。地方に行って、その土地に住む人たちに触れることが一番やりたいことなので。冷やかしでもいいので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
■「ダディ・ダーリン」OFFICIAL VIDEO