インタビュー/兼田達矢
「KIRINJIがKIRINJIの真似をしてもしょうがない。今回は“らしくない”ものにしようと思って」(堀込高樹)
──ニュー・アルバム『ネオ』の制作に取りかかるにあたって、どんなことを考えましたか。
堀込高樹(Vo.Gt.) これまでは僕が全部、曲を書いてましたけど、他のメンバーも曲を書ける人がけっこういるんですよね。それに前作『11』は6人の体制をお披露目するという目的があったのと、その6人になったということ自体に新鮮味があったし、それまでのKIRINJIの要素も折り込みつつ新しいものも感じさせるという移り目の時期だったわけですけど、今回はもうこのメンバーになって3年やっているので、グループとしてみんなで曲を持ち寄ってやるスタイルでやってみたいかなと思ったんです。それで全部で20数曲集まったデモテープを聴いていくうちに、“いままでのKIRINJIみたいにしちゃいけないんだな”ということに気づきました。自分の曲で“これは、あのときのKIRINJIみたいな曲だな”とか、あるいは“KIRINJIってこういうグループだよね”ということを意識して書かれたメンバーの曲とかあって、そこで“KIRINJIがKIRINJIの真似をしてもしょうがない”と思ってハッとしたというか、腑に落ちたというか。それで、今回は“らしくない”ものにしようと思って。
──曲を持ち寄るスタイルでやってみたいと思ったのは、メンバーのいろんな音楽的個性が混じることを期待していたんですか。
堀込 元々は、単純にいい曲をいっぱい集めたいというくらいの気持ちで始めました。で、デモを聴いていくと、いわゆるいい曲もあれば、そういうタイプじゃない曲もあるんですけど、そこで“いい曲だから入れる、というわけじゃないんだ”ということを思ったんです。KIRINJIだけどKIRINJIらしくないものだったり、せっかくメンバーに書いてもらうんだから、そのメンバーの個性がはっきり出てる曲もあるほうがいいなって。
──「いい曲」ランキングの上から10曲をピックアップしたわけではない、と?
堀込 いい曲/悪い曲というものさしだけで考えるんじゃなくて、新しいパーソナリティーが加わっているということがちゃんとわかる曲じゃないとダメだなと思ったんです。例えば千ヶ崎くんの曲はひとつのメロディーがループする曲ですけど、それよりもいいメロディーが展開する曲は他にあったんです。でも、今回のアルバムに必要なのはそういうタイプの曲じゃないなと思って。曲選びの際に、いい曲だからいいってわけじゃないというのが身にしみました。で、それはアルバムとしてのバランスを考えた、というよりも、これから見せていくKIRINJIとして、という気持ちが強かったかもしれないですね。1ループの曲をやったことがなかったし、ラップが入ってくる曲もやったことはなかったし、女性ボーカルの曲が10曲のうち4曲含まれていて、それは明らかにこれまでなかったことですよね。そういうふうに、KIRINJIらしいんだけど、いままでになかった感じをちゃんと出したいという気持ちがあって曲を選んでいったと思います。
別の切り口から書いていったほうが、仮に採用されなくても一石を投じるようなことになって面白いかなあと思ってました。(千ヶ崎学)
──「曲も作ってね」というアナウンスを受けて、千ヶ崎さんはどんなことを考えましたか。
千ヶ崎学(Ba.Vo.) 僕はそもそも高樹さんのような曲は書けないし、これまでのKIRINJIの流れのなかでやったら似合うような曲を目指すのは難しいだろうと最初に自分で思っていたので、作り始める時点でいままでにないようなものを出してみようかな、と。別の切り口から書いていったほうが、仮に採用されなくても一石を投じるようなことになって面白いかなあと思ってました。
堀込 楠さんも曲を出してくれたんです。すごく面白い曲で、でも面白すぎてどうしていいかわからなかったっていう(笑)。
楠均(Dr.Per.Vo.) たまたま曲っぽい曲が昔作ってあって、自分で持て余してたんで、高樹くんならなんとかしてくれるんじゃないかなあと思って出したんですけど(笑)。
千ヶ崎 (笑)。でも、みんなどの曲もすごかったですよ。