ジャクソン・ブラウン「グルーブ・マスターズ・スタジオ」 世界の音楽聖地を歩く 第12回

コラム | 2016.07.26 18:00

グルーブ・マスターズ・スタジオの大きな扉の横に、もう一つの小さな扉があって、この中はジャクソン・ブラウンの”ライティング・ルーム”になっている。入り口を入るとヴィンテージ・フェンダーやハワード・ダンブルといった高価なチューブアンプが埃をかぶったままで放置されている。さらに奥に進むと大きなテーブルがあり、その前には珍しいメーカーのギターがずらりと立てかけてある。この部屋では一人で曲の構想を練ったり、歌詞を仕上げたりして、出来上がったら隣のグルーブ・マスターズ・スタジオに飛んで行って作品を仕上げるのだ。

 

1970年代に発表された代表作『プリテンダー』のシングル盤をアレンジした掛け時計、超小型ヴィンテージ・フェンダー・ツィード・アンプ(チャンプの半分のサイズ)など、さすがに1970年代からロサンゼルスをベースに活動してきたミュージシャンだけあって、部屋のあちこちに音楽ファンや楽器ファン垂涎のアイテムが転がっている。

 

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浮き沈みの激しいアメリカの音楽業界で40年を超えるキャリアを積んできたジャクソン・ブラウン。彼には音楽と同様に情熱を傾けてきたライフワークがある。人権問題、環境問題に対して、鋭い視線を向けるメッセンジャー、活動家としての取り組みである。長きにわたる彼のこの活動には、多くの世界的なミュージシャンたちから賛同と協力を得るに至り、ジャクソン・ブラウン自身もコンサートの収益の一部を活動を続けるNPO団体などに提供している。彼は饒舌の危機を語り、寡黙に未来を見つめるのだ。
「必要なものだけあればいいのさ。政治家や企業の連中は無駄な消費ばかり目論んでいる。インターネットや携帯電話が必要不可欠な世の中になってしまったけど、人間の暮らし方を真剣に考え直さなければならない時期がきているよ。自分たちの利益しか考えない一部の富裕層によって世界がコントロールされている。メディアにも問題が山積だ。残念ながら僕もiPhoneの愛用者になってしまったよ(笑)」

 

ジャクソン・ブラウン「イン・グルーブ・マスターズ・スタジオ」

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桑田英彦(Hidehiko Kuwata)

音楽雑誌の編集者を経て渡米。1980 年代をアメリカで過ごす。帰国後は雑誌、エアライン機内誌やカード会員誌などの海外取材を中心にライター・カメラマンとして活動。ミュージシャンや俳優など著名人のインタビューも多数。アメリカ、カナダ、ニュージーランド、イタリア、ハンガリー、ウクライナなど、海外のワイナリーを数多く取材。著書に『ワインで旅する カリフォルニア』『ワインで旅するイタリア』『英国ロックを歩く』『ミシシッピ・ブルース・トレイル』(スペースシャワー・ブックス)、『ハワイアン・ミュージックの歩き方』(ダイヤモンド社)、『アメリカン・ミュージック・トレイル』(シンコーミュージック)等。